※現地開催のみで、オンライン(ライブ配信、オンデマンド配信)開催はございません。
10:05 ~ 10:25 | 「上顎前歯部に歯肉退縮を認める患者に対し根面被覆術および 補綴治療により審美回復を行った1症例」 【菅田 真吾/医療法人誠仁会 菅田歯科医院】 |
10:25 ~ 10:45 | 「FGF-2と骨移植材の併用療法を行った 広汎型慢性歯周炎 (StageⅢ GradeC)の一症例」 【成田 大輔/なりた歯科・矯正歯科】 |
10:50 ~ 11:10 | 「FGF-2製剤を用いて歯周組織再生療法を行なった 広汎型侵襲性歯周炎患者(Stage Ⅲ Grade C)の一症例」 【今井 一貴/大阪歯科大学 歯学部 歯周病学講座】 |
11:10 ~ 11:30 | 「病的歯牙移動と二次性咬合性外傷の改善を図り 歯周組織再生療法の予知性を高めた一症例」 【伊山 舜吉/大阪大学大学院 歯学研究科 口腔治療学講座, 医療法人博愛敬会 あい大人こども歯科クリニック】 |
10:05 ~ 10:25 | 「喫煙習慣のある重度慢性歯周炎患者の1症例」 【前池 綾乃/としな歯科医院】 |
10:25 ~ 10:45 | 「歯科衛生士の使命を再認識した一症例」 【榊原 麻維/山中歯科医院】 |
10:50 ~ 11:10 | 「口腔衛生の向上にICTを活用した効果の検討」 【神田恵実/大手前短期大学 歯科衛生学科】 |
11:10 ~ 11:30 | 「メインテナンスにおける再アプローチの重要性」 【冨田 菜摘/医療法人裕和会 タキノ歯科医院】 |
12:30 ~ 12:50 | 「全身疾患を有する患者に対して求められる歯科衛生士の視点」 【太田めぐみ/医療法人おくだ歯科医院歯周病・インプラントセンター】 |
12:50 ~ 13:15 | 「歯周病と周産期合併症」 【岩本 敏昌/岩本デンタルクリニック】 |
13:15 ~ 13:40 | 「歯周病と関節リウマチ、歯周病と慢性腎臓病」 【辻 翔太/歯周病治療専門クリニックSPIDO】 |
14:05 ~ 15:25 | 「治療計画における歯周病新分類のクリニックでの応用」 【築山 鉄平/つきやま歯科医院 専門医療クリニック 天神】 |
10:05 ~ 10:25 | 「全顎的な歯肉増殖を伴う重度歯周炎に罹患した 青年期患者に対し歯周治療を行った一症例」 【山下優子/DUO デンタルクリニック】 |
10:25 ~ 10:45 | 「骨外科処置の重要性を考えさせられた一症例」 【宮谷史太郎/医療法人 のぶとう歯科医院】 |
10:45 ~ 11:05 | 「病態に応じた垂直性骨欠損へのアプローチ」 【中村弘幸/医療法人宮前歯科クリニック/医療法人成和歯科診療所千里ペリオインプラントセンター】 |
11:10 ~ 12:10 | 「咬合再構成におけるデジタルの活用法 -歯周治療での活用、優位性-」 【谷尾和正/医療法人 タニオ歯科クリニック】 |
2005年 太成学院大学歯科衛生専門学校 卒業
2008年 梅田オランジェ歯科・矯正歯科 勤務
2020年 DUOデンタルクリニック 勤務
所属
日本歯周病学会 認定歯科衛生士
日本臨床歯周病学会 歯科認定衛生士
歯肉増殖は、病原因子によって遺伝性歯肉線維腫症と薬物性歯肉増殖症に分類される。遺伝性歯肉線維腫症は遺伝的に特発性に発現するものであり、発症は乳幼児期であることから、本症例では薬物性歯肉増殖症を疑った。しかしながら、原因である薬物の服用は確認できなかったため、全顎的な歯肉増殖を伴う重度歯周炎に対し通常の歯周治療の流れにのっとり、徹底的なセルフケアの向上を主とした歯周基本治療を行った。また、歯周-歯内病変が存在する部位に対し、適切な手順で、歯内治療ならびに歯周治療を行った。その結果、非外科的歯周治療で歯肉増殖が改善され、良好な治療結果が得られたため、ここに症例報告させていただき、諸先生方のご意見、ご指導を賜りたい。
経歴
2011年 日本歯科大学新潟生命歯学部 卒業
2012年 京都府立医科大学附属病院 歯科口腔外科にて卒後研修修了
京都府立医科大学 医学研究科 歯科口腔科学 入学
2016年 京都府立医科大学 医学研究科 歯科口腔科学 医学博士号取得の上卒業
押谷歯科医院 入職
2019年 押谷歯科医院 退職
医療法人 のぶとう歯科医院 入職 (現在に至る)
所属
日本顎咬合学会 認定医
日本歯周病学会 認定医
日本臨床歯周病学会 会員
日本口腔インプラント学会 会員
JIADS CLUB 会員
歯周外科治療は、術式を大きく分けると組織付着療法、切除療法、歯周組織再生療法、歯周形成手術がある。いずれの術式も対象となる歯を含めた歯周組織の保存や再生を目的とする治療である。そしてさらに言えば、対象となる歯のみならず、患者の口腔を永続的に機能させることを目的とした治療の一つでもある。それらの歯周外科治療は各々術式が異なるものの、術式の選択にあたっては、骨欠損状態が重要な判断基準の一つとなることは言うまでもない。また、その骨欠損状態に対して骨整形術、骨切除術と言った、歯槽骨の病的な骨形態を改善する骨外科処置が必要となる場面が多々ある。骨外科処置は、歯槽骨に裏打ちされる歯肉の形態改善を促し、治療後の口腔内のメインテナンスをしやすい環境をつくる一助となる。
今回、その歯周外科治療における重要な診断基準の一つでもある骨欠損状態に留意し、骨外科処置を行うことで、術後良好な結果を得た一症例を示すとともに、歯周外科治療にスポットを当てた過去の文献をいくつか紐解き、その中でも骨外科処置に着目し、皆様と今一度骨外科処置の重要性を考えたい。
2012年 岡山大学歯学部 卒業
2013年 大阪府堺市 飯田歯科 勤務
2015年 大阪府寝屋川市 医療法人宮前歯科クリニック 勤務
2021年 大阪府豊中市 医療法人成和歯科診療所千里ペリオインプラントセンター 勤務
<所属>
日本臨床歯周病学会 認定医
日本歯科審美学会
日本顎咬合学会
近年、8020運動が認知され、天然歯保存の重要性も周知されつつある。患者がいつまでも自分の歯で噛むことができるよう天然歯の保存に努めることは、歯科医師としての責務である。
しかしながら、現在の我が国において、成人の歯の喪失原因として歯周病によるものが最も多く、その治療を必要とする患者は後を絶たない。とりわけ、垂直性骨欠損を有する歯は水平性骨吸収を有する歯に比べ、10年後に喪失する確率が有意に高いことが1991年にPapapanouらにより報告されている。天然歯を保存するためには、垂直性骨欠損をできるだけ早期に改善することが望ましい。
垂直性骨欠損の発生要因及び状態は様々であり、それぞれの病態に応じた対応が必要である。特に、歯周外科処置を必要とする場合、外科の術式やマテリアルの選択に関して、術前の診査及び診断をもとに十分に検討することが重要である。
今回、病態の異なる垂直性骨欠損を有する3人の患者に対し、術前の診査及び診断をもとに各々に応じた歯周外科処置を適応したことで、良好な結果を得たので報告したい。
2002 朝日大学歯科部卒業
2002〜2008 医療法人健志会 ミナミ歯科クリニック勤務
2008 医療法人 タニオ歯科クリニック開業
[所属]
日本顎咬合学会/指導医 常任理事
日本臨床歯科学会/大阪支部常任理事
歯科医療においてデジタル技術の進化は目覚ましく、歯科医師をはじめとする歯科医療従事者は従来よりも満足度の高い治療結果を患者に与えることができるようになってきた.ただ,従来の治療法を凌駕するためには,IOS(Intra Oral Scanner)の仕組みや操作,CAD/CAMのシステムや技工物の製作工程などについて,正確に理解することが必要であり,それらと従来のアナログ治療法を融合させ,実際の臨床にどのように反映させていくかが鍵となってくる.
歯周治療においても術前の診断、治療においてデジタル技術の活用は有意義なものと考える.
重度歯周炎においては多数歯欠損を認めることもあり,咬合再構成を行わなくてはならないことも多く,そのように広範囲にわたる治療におけるデジタル機器の活用には乗り越えなければならない課題が多い.そのため,従来の知識と手技を組み合わせながら試行錯誤し,日々診療を行っている.また,このようなデジタル機器の活用においては,歯科技工士と綿密なディスカッションを重ね,連携していくことが必須である.
本発表では,咬合再構成においてデジタル機器を活用した症例を供覧したいと考えている.そこからデジタル機器の可能性,メリットおよびデメリットなどを再考察し,デジタルデンティストリーの現状の到達点と従来のアナログな治療方法との融合について見解を述べたいと思う.
10:05 ~ 10:25 | 治療計画に基いた時間軸から考える長期SPTにおける考察 【緒方千秋/吉竹歯科医院】 |
10:25 ~ 10:45 | 審美領域のインプラント及びポンティックサイトに軟組織移植を行なった症例 【寺井浩之/てらい歯科クリニック】 |
10:50 ~ 11:10 | 広汎型侵襲性歯周炎患者に歯周組織再生療法を行った一症例 【東 仁/大阪歯科大学 歯周病学講座】 |
11:10 ~ 11:30 | 非薬剤性の歯肉増殖症に対して、歯肉切除術を行った一症例 【木下茉優/大阪大学歯学部附属病院 口腔治療・歯周科】 |
12:40 ~ 13:05 | リグロス第1報/第2報研究報告 【大月基弘/DUOデンタルクリニック】 |
13:05 ~ 13:30 | 再生療法にSignaling moleculeの選択がおよぼす影響について考察する 【石川 亮/石川齒科醫院】 |
13:30 ~ 13:55 | 文献を紐解きEMDとFGF2の臨床応用を考察する 【北村忠丈/北村歯科医院】 |
14:20 ~ 15:40 | 糖尿病領域における医科歯科連携の重要性と地域での連携 システムの構築に向けて 【押村憲昭/かすもり・おしむら歯科口腔機能クリニック】 |
1986年 財団法人尼崎口腔衛生センター附属尼崎歯科専門学校 卒業
1986年 吉竹歯科医院 勤務
2006年 日本歯周病学会認定歯科衛生士 取得
2009年 日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士 取得
比較的若い患者さんが、重度歯周病と診断された結果、ほとんどの歯が抜歯となる場合、その治療方針を受け入れ難いケースに時折直面します。年齢が若い方だと義歯を装着することに強い抵抗感があることも多く、経済的にもインプラント治療が不可能なこともあるでしょう。そのため、質の高い歯周基本治療を実践し、ホープレスと考えられる歯をなんとか機能させると共に、患者さんのデンタルIQの向上に図り、将来に計画している包括的歯科治療にスムースに移行できるよう、患者さんの気持ちに寄り添うのも歯科衛生士の役割と考えています。
今回は上記の考えのもと、最終的な治療ゴールへ辿り着くために、患者さんと共に15年間歩んでいる症例を供覧し、SPTのあり方を皆様と共に考えていきたいと思っています。
略歴
2012年 北海道大学歯学部 卒業
2017年 医療法人裕和会 タキノ歯科医院 ペリオインプラントオフィス勤務
2023年 てらい歯科クリニック 開業
前歯部欠損に対する治療において患者側から求められる要件として、機能の回復は当然のことながら審美性の回復が挙げられる。また、インプラント周囲および欠損顎堤周囲には必要十分な硬組織、軟組織が不足している事が多い.組織が不足する場合はその造成を行う必要性があるが,硬組織の造成に関しては骨補填材として自家骨や人工骨などの選択肢があり、軟組織の造成に関しては上皮下結合組織移植が有効とされている。それらを適切に行うことで、歯槽骨・歯肉・歯列に連続性が保たれ、清掃性・安定性の高い歯周環境が構築することができ、長期予後につながると考えている。
今回の症例では、保存不可能な歯の抜歯後にインプラント埋入を行い、硬組織造成には骨補填材を、軟組織造成には上皮下結合組織移植を行った症例と、ブリッジのポンティック窩における清掃性や審美性の改善の為に上皮下結合組織移植を行い、最終補綴装置を装着した症例の2症例を報告させていただく。2症例を通じて、諸先生方のご指導を賜りたい。
2013年 大阪歯科大学歯学部 卒業
2018年 大阪歯科大学大学院歯学研究科 修了 博士(歯学)
大阪歯科大学歯周治療科 助教(現在に至る)
日本歯周病学会 歯周病専門医
日本歯科保存学会 歯科保存治療認定医
侵襲性歯周炎とは、比較的若いうちから発症し、全身的には健康であるにも関わらず急速なアタッチメントロスと歯槽骨吸収を認める歯周炎である。したがって早期診断と外科処置も含めた積極的な治療が必要となる。
本症例では、広汎型侵襲性歯周炎(ステージⅢ グレードC)と診断し、部位特異的な垂直性の骨吸収が多数認められ歯周組織再生療法が可能であると判断した。再生材料として血管新生の促進を期待してリグロス®を適応した。さらに歯槽骨の欠損形態に応じて自家骨あるいは人工骨を併用した。本症例では全顎的に歯周外科治療を行い、良好な予後を得ることができたため報告する。
2018年 広島大学歯学部 卒業
2019年 大阪大学歯学部口腔治療学教室 所属
日本歯周病学会 認定医
日本歯科保存学会 認定医
歯肉増殖症は、歯肉肥大症または歯肉過形成症とも呼ばれ、歯肉組織のコラーゲン線維の過剰増生を認める疾患である。その原因として、抗てんかん薬(フェニトインなど)、Ca拮抗薬(ニフェジピンなど)および免疫抑制薬(シクロスポリンA )の服用が原因となる「薬物性歯肉増殖症」がよく知られているが、ごくまれな疾患として特発性に発症する「非薬剤性歯肉増殖症」が存在する。
一般に、歯肉増殖症の治療は、通常の歯周炎と同様にプラークコントロールの徹底を図り、スケーリング・ルートプレーニングなどの歯周基本治療を実施し歯周病の原因となるプラークを除去する。その後、歯周基本治療を行っても歯肉増殖の改善が認められない部位に対しては、外科的に歯肉形態を改善しポケットを消失させる歯肉切除が実施される。そして、「薬物性歯肉増殖症」の場合、歯肉増殖の原因となっている薬の変更や使用を中止することが可能なケースも多く、これらの治療により症状が期待通り改善されることが比較的多い。一方、特発性の「非薬剤性歯肉増殖症」では、歯肉増殖の原因に対する直接的なアプローチが不可能であることから、対応に苦慮することも多い。
今回、歯肉増殖症に関連する薬剤の服用歴がないにも関わらず、全顎的に著しい歯肉増殖を認める患者(40歳男性)に対し、歯周基本治療後、全顎的な歯肉切除術を行うことで良好な治療結果を得た症例について報告する。
略歴
1991年 朝日大学歯学部卒業
2000年 西宮市にて石川歯科医院 開業
2015年 尼崎市に石川齒科醫院 移転開業
現在に至る
所属学会
日本臨床歯周病学会 会員/認定医/歯周インプラント認定医
日本歯周病学会 会員/歯周病専門医/指導医
日本歯内療法学会 会員
In vivoにおける再生医療では、In vitroの組織工学で得られた「Cell」「Scaffold」「Signaling molecule」といった3つの構成要素を応用して考えることが成功の条件とされている。歯周組織再生療法では、1982年NymanらによってGTR法が発表されたが、これはメンブレンによって「Scaffold」を確保することを目的としたものである。
一方「Signaling molecule」の役割を期待したものとして、90年代にEMD(エナメルマトリックスデリバティブ)が開発され、現在まで臨床応用されている。その後2000年代に入りPDGF-bb(血小板由来成長因子:製品名Gem21S)が開発されたが、国内未承認であったため、本邦における臨床応用は容易でなかった。しかし2016年に、bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子:製剤名リグロス)が、日本で世界初の歯周組織再生医療品として開発され、盛んに臨床応用されるようになってきた。
以上のような経緯から、現時点では多くの臨床家にとって、EMDもしくはbFGFのどちらかを選択し、臨床で応用するのが現実的だと思われるが、どちらか一方がより優れた臨床結果をもたらすという報告はない。そのため私たち臨床家は、適切な選択基準を求めるため、今まさに知見を積み上げている最中であるといえる。
本講演では、選択基準についての私見を、臨床ケースを通して述べさせていただき、検討すべき因子をお示しすることで、皆様と議論するきっかけになれば幸いである。
略歴
1990年 岡山大学歯学部卒業
2000年 北村歯科医院開業
所属
JIADS Study Club Osaka会員
日本歯周病学会
日本臨床歯周病学会
OJ会員
「人生100年時代」が到来し、健康の保持増進のため歯の大切さが再認識されている。口腔内2大疾患の1つである歯周病の治療成果を上げ予防治療を徹底することで、我々は国民の健康に寄与することが出来る。
歯周病治療のオプションのひとつである歯周組織再生療法は1950年頃より始まり、歯周組織誘導再生療法(GTR)、EMDを利用した治療法へと変遷し、天然歯の保存に大きく貢献している。
歯周組織再生療法を成功に導くには、生物学的原理原則を理解し遵守することが重要であり、骨欠損を生じた原因を考察し、患者選択、徹底したプラークコントロール、骨欠損の状態、歯肉の厚みなど考慮すべき項目は多岐にわたる。これらが治療結果に影響を及ぼし合併症にも違いが生じる。また、術式や使用する再生材料も重要ではあるが、特に歯周組織再生の3要素の1つである成長因子(EMD、FGF-2)が注目を集めている。2016年にはMurakamiらにより、日本発の歯周組織再生療法薬剤 塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)が発売され、臨床応用が始まった。EMDは20年に渡り歯周組織再生治療の主役を担い、重篤な副作用の報告もない。一方、リグロス®は歴史が浅く未知な要素も多いが、その臨床的効果に対する期待は大きい。
今回、歯周組織再生療法を成功に導く上で、EMDとFGF-2の選択の違いにより上記の考慮すべき項目、治療結果ならびに合併症に差が見られるか考察してみたい。
【略歴】
2010年 愛知学院大学歯学部 卒業
2011年 敬天堂歯科 勤務
2015年 医療法人大里会 勤務
2017年 おしむら歯科 勤務
2020年6月 かすもり・おしむら歯科 開院
大阪大学大学院歯学研究科社会人大学院 在学中
【所属学会】
日本歯内療法学会、日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会、
日本顎咬合学会、日本皮膚免疫アレルギー学会、日本糖尿病学会
【著書】
歯科と連携して治す皮膚疾患3 Part3 歯科と皮膚科の連携 総説 8 歯科の対応 実際の治療の流れ 皮膚科への紹介.Visual Dermatology 16(12), 2017.
その皮膚疾患 歯科治療で治るかも.クインテッセンス出版, 2020 chaptar3 金属除去治療(抗原除去療法)の実際と留意点
糖尿病は現在日本でも大きな健康問題であり、その合併症は重篤なものとなることが知られています。糖尿病患者の口腔健康管理は、全身の健康状態にも大きく影響を与える重要な要素です。このため、医科歯科連携が糖尿病患者のケアにおいて不可欠であると言えます。
まず、糖尿病と口腔健康の関連性について考えてみても糖尿病は高血糖状態を引き起こし、免疫機能の低下や血管障害を引き起こすことがあり、これにより口腔内の細菌感染症や歯周病のリスクが増加します。また、糖尿病患者は唾液の分泌量が減少し、口腔乾燥症の症状が現れることもあります。医科歯科連携の重要性は、これらの問題を早期に発見し、適切な治療を行うことにあります。医科と歯科の専門家が連携し、糖尿病患者の口腔健康状態を継続的にモニタリングすることで、合併症の予防や進行の抑制が可能となります。また、糖尿病患者に対する口腔ケアの指導や予防法の提案も重要な役割となります。
さらに、医科歯科連携は糖尿病患者の生活の質向上にも寄与します。口腔健康の改善は、食事摂取や会話、笑顔などの日常生活において重要な要素です。糖尿病患者が口腔健康を維持することで、食事制限や血糖管理における負担を軽減することができます。また、口腔疾患の予防や早期治療により、糖尿病患者の全身の健康状態を改善することも期待できます。
糖尿病の医科歯科連携は、患者の健康状態の総合的な管理において不可欠です。口腔健康の維持は、糖尿病患者の生活の質向上や合併症の予防につながり、医科歯科の専門家が連携し、糖尿病患者に対する総合的なケアを提供することで、より良い治療結果を得ることができます。今回は医院で実践稼働し地域の医科と連携する方法をすべてお伝えさせていただきます。
10:05 ~ 10:25 | 「⻭科不信の患者に対し⻭周基本治療を⾏った⼀症例」 【原野晶代/竹村歯科】 |
10:25 ~ 10:45 | 「インプラントメインテナンスに移行後、8年が経過した一症例」 【丸山葉子/タニオ歯科】 |
10:50 ~ 11:10 | 広汎性重度慢性歯周炎(StageⅢGradeB)の患者の下顎右側臼歯部に対し、 歯周組織再生療法と切除療法を併用した一症例 【高屋 翔/高屋歯科医院】 |
11:10 ~ 11:30 | 乳頭切開を伴わない結合組織移植術とその応用 【中長武史/中長デンタルオフィス】 |
12:30 ~ 12:55 | 歯周治療後の補綴計画における前歯部の役割と考慮事項 【萩原 誠/医療法人 きずな歯科クリニック】 |
12:55 ~ 13:20 | 「インプラント周囲疾患を考慮した補綴的配慮」 【鈴木秀典/一般財団法人サンスター財団附属千里歯科診療所】 |
13:20 ~ 13:45 | 歯周治療を考慮した包括的治療 ~咬合の安定をめざして~ 【中野 浩/医療法人 成和歯科診療所】 |
14:05 ~ 15:25 | 力(咬合)のリスク診断によって変わる治療計画 【大森有樹/大森歯科医院】 |
15:30 ~ 15:45 | 質疑応答 |
15:45 ~ 15:55 | 総会 |
2005年 高知学園短期大学歯科衛生専攻 卒業
2005年 野中歯科勤務
2010年 弁天町歯科勤務
2012年 なかやま歯科 勤務
2020年 竹村歯科 本町医院 勤務
歯周治療においてスケーリングルートプレーニングは必須である。
患者にその重要性を伝え、理解、納得していただき治療を行うことが必要である。
そのためには患者に現状、治療内容を理解してもらわなくてはならない。
今回、歯科医院嫌いでスケーリングルートプレーニングを行ったことのない患者に
対し、DrとDHで連携をとりコンサルを行うことでインフォームドコンセントを得
ることができ再評価まで進むことができた。
今後外科処置に移行予定ではあるものの、モチベーションの維持、口腔内環境の安
定に繋がっている今後の変化に注目している一症例を報告する。
2002年
関西女子短期大学 歯科衛生士コース 卒業
2004年
大阪歯科大学付属歯科技工士専門学校 卒業
2004年4月〜2008年3月
大阪市内歯科技工所にて歯科技工士として勤務
2008年4月
タニオ歯科クリニック オープニングスタッフとして入局
所属学会
・日本臨床歯周病学会
・日本歯周病学会
・日本顎咬合学会
・日本臨床歯科学会
インプラント治療後の口腔機能やインプラント周囲組織の健康状態を,長期にわたって維持・安定させるために,定期的なメインテナンスは必須である.患者は63歳 女性(全身既往歴は特記事項なし,喫煙歴なし)で,主訴は上下の歯ぐきが痛いとのことで来院した.本症例の患者は,プラークコントロールが不良であることを自覚しているが,歯科不信と口腔内を診られることに対する羞恥心が強く,歯科医院を20年間受診できなかった.診断は,広汎型慢性歯周炎(ステージⅣグレードC)で,全抜歯後,上顎は全部床義歯, 下顎はインプラント支持補綴装置を装着した.
今回は,治療終了時から現在まで,高いモチベーションを伴い口腔機能と健康なインプラント周囲組織が維持されている,メインテナンスに移行後8年経過症例を発表する.
重度に進行した歯周疾患は、著しい歯槽骨吸収、歯牙動揺、病的な歯の移動を伴う。場合によっては歯が喪失し咬合崩壊につながり、咀嚼障害や審美障害を招き、患者のQOLが大きく低下する。現在、咬合と歯周病の関係については様々な研究や議論がなされており、咬合力のコントロールと炎症のコントロールが重要なことは周知の事実である。
今回、全顎的に歯周病が進行しており、動揺がほぼすべての歯に起きている患者に対して、多くの治療介入を行った。特に分岐部病変Ⅲ度と動揺1〜2度を伴う下顎右側大臼歯部の治療計画立案したのちに処置したが、対応に苦慮した本症例を通じて、諸先生方のご意見とご指導を賜りたい。
以下に治療概要を列挙する。今回の症例の主訴は「歯が揺れて噛めない」であった。ほぼすべての歯に動揺と病的移動を認めた。動揺固定のため、プロビジョナルレストレーションを装着し、咬合の安定を確保しつつ基本治療を開始した。基本治療終了後、下顎右側臼歯部歯周組織再生療法を行った。組織の治癒を8ヶ月程度観察し、骨整形を含めた切除療法を行なった。組織の治癒を待ちながら、プロビジョナルレストレーションを修正し、清掃性を確認できたので最終補綴を作製、装着した。現在、SPTに移行し経過観察を行っている。
https://us06web.zoom.us/j/88328876533?pwd=dndUMVNtZUx0Y3FLSUJIaU9GSGp6UT09
結合組織移植術(CTG:Connective Tissue Graft) は、⻭⾁退縮により露出した⻭根⾯の被覆や
Gingival phenotypeの改善に効果的な⼿法として広く⽤いられている。
CTGを併⽤した根⾯被覆術は、1985年にLanger & Langerによって提唱され、同年にはRaetzkeによるEnvelope technique、1994年にはBrunoによるModified Langer technique、AllenによるTunnel technique、2000年にはZucchelliによる改良型⻭⾁弁⻭冠側移動術(MCAF: Modified
Coronally Advanced Flap)、2011年にはZadehによるVISTA techniqueなど、現在に⾄るまで様々な変法や新たなアプローチが発表されてきた。
⻭周形成外科の術式は、各術式の⻑所を活かし短所を補完しながら発展を続けており、術式の特徴を理解することは、術式選択のヒントとなりうる。
筆者の臨床では、⻭間乳頭の切開により⽣じた瘢痕化や予期せぬリセッションの経験から、切開の少ないEnvelope techniqueやTunnel techniqueを選択することが多い。これらの術式に⻭⾁弁 ⻭冠側移動術(CAF: Coronally Advanced Flap)を組み合わせる事で移植⽚への⾎液供給を確保し、根⾯被覆の予知性に寄与していると考えている。また、VISTA techniqueの応⽤により受容床形成が容易になり、さらにCTGの適応範囲が広がったように感じている。
今回の発表では、Envelope techniqueやTunnel technique、VISTA techniqueを⽤いた症例を通して、⻭間乳頭の切開を伴わない術式の有⽤性を考察し、諸先⽣⽅のご指導を賜りたい。
2010年 広島大学歯学部卒業
2011年 きずな歯科クリニック勤務
所属
日本臨床歯周病学会
日本口腔インプラント学会
日本顕微鏡歯科学会
日本顎咬合学会
重度歯周病患者においては,歯槽骨が吸収していくにしたがって,動揺がみられるようになり病的歯牙移動や,2次性咬合性外傷などの問題が生じることになる。また,歯の動揺により咬頭嵌合位は不安定になることや,適切なアンテリアガイダンスを失うことにつながることもある。さらに欠損が生じると残存歯に過重負担がかかるようになる。これらの改善のためには可及的に歯周組織再生療法にて失われた組織の再建を試みるとともに,矯正治療や補綴治療で咬合性外傷を取り除き動揺を収束させる必要がある。咬合の不調和と歯周病の悪化との関わりについては様々議論されているが,歯周病の既往があり,その骨破壊が咬合の不調和によって修飾されている場合には,咬合状態の改善が必要であると考えられる。
咬合回復治療でこれらを達成するためには,咬頭嵌合位の安定と臼歯部離開咬合が求められる。前者においては,適切な顎位で,歯列の連続性を確保し,補綴物には上下の対向関係にも配慮した適切な咬合面形態を付与することが求められる。後者は臼歯部に対して強い過剰な咬合負担がかからないようにするために,前歯部に適切なアンテリアガイダンスを付与し,さらに側方運動時に臼歯部咬合面形態との調和を図ることが求められる。さらに,治療の再介入の危険性を考慮したとき,連結固定の範囲はできる限り小さい範囲ですることが好ましいと考えている。
本講演では,自身の臨床症例を通じて前歯部に焦点を当てて,考慮した点を提示する。
口腔インプラントはあらゆる欠損を有する患者の補綴治療戦略に今や欠かすことのできない有効な治療オプションである。その長期予後において問題となるのが、インプラント周囲炎をはじめとしたインプラント周囲疾患であるが、近年の研究結果からその有病率が思いのほか高いことがわかってきた。インプラントの補綴装置は粘膜貫通部分も装置に含まれる点で天然歯の補綴装置と大きく異なる。選択する形状や素材の選択の良し悪しが、インプラント周囲疾患に影響を及ぼす可能性は十二分に考えられる。しかし、これまでインプラントの長期予後は、セルフケアの方法やメインテナンス管理方法に依存していると考えられてきたことから、これまで補綴装置との関係についてはあまり議論されていない。その固定様式が話題になることはあったが、まだまだ情報が不足している現状である。本講演では、現在のメインテナンス主導型インプラント治療時代における、「インプラント周囲疾患と補綴装置の関係」について、現時点で分かっているエビデンスをもとに整理してお伝えしたい。
1992年 大阪大学歯学部 卒業
大阪大学歯学部歯科補綴学第一講座 入局
1997年 宮前歯科医院 勤務
2000年 医療法人宮前歯科クリニック 理事
2007年 医療法人成和歯科診療所 理事長
【所属・役職】
日本臨床歯周病学会 常任理事 認定医
日本補綴歯科学会 会員
日本口腔インプラント学会 会員
日本歯科審美学会 会員
JIADS常任講師
歯周病と咬合の関係については、過去から様々な議論がなされているが、歯周治療と咬合治療の関係に対する明確なエビデンスはない。咬合はプラークに起因する炎症性疾患である歯周炎の発症には関与しないとはいうものの、歯周病の進行や長期的な予後への影響については未だ不明な点が多く否定はできない。実際の臨床の場においては、う蝕や歯の欠損、咬合の不調和が生じている、咬合が崩壊しているなどの理由から歯周病を有する患者に対して補綴・咬合治療が必要となるケースが多い。その際には、過度な咬合力がアタッチメントロスや、垂直性骨欠損、プロービングデプスの増悪に影響を与えるという可能性を考慮して診断や治療を行うことが治療結果の長期的な安定を得るために大切であると考えている。
今回、歯周疾患を有する患者に対して補綴・咬合治療を行った症例を供覧し、歯周治療における補綴・咬合的配慮の重要性について考えてみたい。
1999年 九州歯科大学 卒業
2005年 大森歯科医院 開設
2020年 大阪歯科大学 歯学博士・非常勤講師
日本臨床歯科学会(大阪SJCD) 大阪支部長
日本口腔インプラント学会 専門医
ITI フェロー
ARDEC Research Affiliate
大森塾 主宰
人間の口腔内に起こるトラブルの原因は意外とシンプルで、1、カリエス2、ペリオ3、力(咬合)4、医原性の4つくらいしかない。カリエスとペリオに関してはエビデンスも多く存在し、エビデンスに基づき適切な対応をすればトラブルを回避することが可能である。しかし力に関してはエビデンスも少なく、それぞれの術者の勘や経験に頼るところが多い。
もしその患者が力によって起こるトラブルに見舞われやすい(力のリスクが高い)のであれば、咬合再構成をはじめとする力のコントロールが必要となる。その判別は、力のリスク診断を行わなければわからない。つまり力のリスク診断の結果によって、咬合治療が必要かどうかを含め治療計画が大きく変わるのである。
根本的な解決を図るためには、力のリスク診断を行い、その結果に基づき治療計画を立て、治療・メインテナンスにあたらなければならない。
10:35 ~ 10:55 | 「歯周基本治療を低侵襲で行った症例~再生療法までの道~」 【池上夏生/医療法人社団 奥田歯科医院】 |
10:55 ~ 11:15 | 「リグロスⓇとサイトランスⓇグラニュールを併用した 歯周組織再生療法を実施した症例」 【北村正博/大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 歯周病分子病態学】 |
11:20 ~ 11:40 | 「歯周基本治療により難治性皮膚疾患の改善を認めた一症例」 【嘉藤弘仁/大阪歯科大学 歯周病学講座】 |
11:40 ~ 12:00 | 包括的治療におけるインプラントおよび 再生療法の治療計画について考慮した一症例 【粟谷英信/姫路駅前グランツ歯科】 |
12:45 ~ 13:10 | シンポジウム ①「インプラント周囲組織における抜歯後即時インプラント埋入の可能性」 【奥田浩規/医療法人社団 奥田歯科医院】 |
13:10 ~ 13:35 | シンポジウム ② 「リッジプリザベーションを利用したインプラント治療」 【小田師巳/医療法人小田会 おだデンタルクリニック】 |
13:35 ~ 14:00 | シンポジウム ③ 「GBRを用いたインプラント治療」 【平山富興/医療法人優愛会 須沢歯科・矯正歯科】 |
14:20 ~ 15:40 | インプラント治療における骨造成を考察する 【猪子光晴/医療法人社団 いのこ歯科医院】 |
歯周炎に罹患した歯に対して、まず歯周基本治療を行いますが、そこでは非外科的歯
周治療が主に選択されます。その後、歯周組織再生療法や切除療法といった外科的歯周
治療が、再評価後に必要とされることも多く経験することでしょう。しかし、全ての患
者に外科治療の同意を得られるわけではありません。また、非外科的歯周治療の質を高
めることにより、外科的介入を避けることができるのであれば、患者の負担は少な
く、喜んでいただけることに疑いの余地はありません。
昨今、マイクロスコープの普及により、歯科衛生士が治療の質を高めるために使用す
ることも増えています。低侵襲な非外科的歯周治療(MINSTcc minimally invasive non
surgical technique)を行うにあたって、マイクロスコープを使用し拡大下で歯石を除去することで裸眼では確認できなかった歯石を探知できたり、歯周組織を傷つけず患者の負担が減るなど効果的であると考えています。
本症例では、歯周組織再生療法が必要となると考えられた重度歯周炎に罹患した歯に
対し、マイクロスコープ下でSRPを行った症例を提示させていただきます。
リグロスⓇ(0.3%FGF-2:線維芽細胞増殖因子)を用いたフラップ手術は、現在日本における歯周組織再生療法の標準治療になっている。しかしながら、リグロスⓇにはスペースメーキング機能がなく、リグロスⓇの単独投与では重度骨欠損の歯周組織再生効果に限界があるため、リグロスⓇと骨補填材との併用により歯周組織再生効果を増強する試みがなされている。そこで、今回我々は、10名の重度歯周炎患者を対象として、リグロスⓇと炭酸アパタイトを主成分とする骨補填材(サイトランスⓇグラニュール)を併用した歯周組織再生療法の安全性(主要評価項目)および有効性(副次評価項目)を評価するため、特定臨床研究(臨床研究実施計画番号:jRCTs051190045)を実施した。
本発表では、リグロスⓇとサイトランスⓇグラニュールを併用した歯周組織再生療法を実施した臨床例を提示すると共に、被験部位の主要評価項目と副次評価項目の解析結果をお示しし、両者を併用した歯周組織再生療法の安全性および有効性について考察する。
2010年3月 大阪歯科大学歯学部 卒業
2014年3月 大阪歯科大学大学院歯学研究科 修了 博士(歯学)
2015年4月 大阪歯科大学歯学部 歯周病学講座 助教
2021年4月 大阪歯科大学歯学部 歯周病学講座 講師(現在に至る)
日本歯周病学会 歯周病専門医
日本歯科保存学会 歯科保存治療専門医
掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis: 以下, PPPとする)は手掌や足蹠部に限局性紅斑と多発性無菌性膿疱を特徴とする難治性皮膚疾患である。PPPでは膿疱周辺部の疼痛や関節炎を伴い, 足蹠部の病変が拡大すると歩行困難などの機能障害が生じるため患者の生活の質(quality of life: QOL)が大きく損なわれる。
PPPの発症機序は未だ不明であるが, 病巣扁桃, 歯性病巣, 副鼻腔炎など慢性炎症を伴う疾患の病巣が発症に関連することが多く, 歯性感染単独が原因となるのは約50%を占めると報告されている。したがって, 歯性病巣を含めた感染病巣を適切に除去することが求められる。しかし, PPPの感染病巣は無症状の潜在性炎症であるため適切な診断と治療が遅れ, 皮膚症状や関節症状は慢性の経過を辿ることが多い。
今回, 某総合病院皮膚科から歯科口腔外科を介して歯性感染の精査を依頼された慢性歯周炎患者(ステージⅢ・グレードB)に対してスケーリング・ルートプレーニング等の歯周基本治療を行いPPPの改善を認めた症例を経験した。本発表では, 歯周組織と皮膚症状の改善との関連を考察し, 歯周治療の臨床経過について報告する。
略歴
2010年 大阪大学歯学部卒業
2010年 滋賀県立成人病センター口腔外科勤務
2012年 兵庫県内歯科医院勤務
2019年 姫路駅前グランツ歯科 開業
所属
日本臨床歯周病学会
日本臨床歯科学会
日本口腔外科学会
日本口腔インプラント学会
日本顎咬合学会
歯周組織再生療法の結果に影響する因子はいくつか存在するが、その中でも術後に血餅の安定(blood clot stability)を得られるかということは重要な因子である。血餅を安定させることができるかどうかは、外科手技を適切に行うこと以外にも、術後の歯の動揺の有無や、術前の骨欠損の形態に左右される。特に骨欠損形態に関しては、3壁性骨欠損のようなcontained defectよりも1壁性骨欠損のようなnon-contained defectの方が血餅の安定が得られにくく、さらに骨欠損の角度に関しても狭いものよりも広いものの方が同様に血餅の安定に不利とされる。
本症例の患者は56歳の男性で、審美障害と咀嚼障害を主訴に来院された。多数歯欠損による咬合崩壊を認め、広汎型慢性歯周炎(stageⅣ gradeC)と診断した。特に上顎前歯部は下顎前歯部からの突き上げと垂直性骨欠損を伴う非生理的な歯槽骨形態であり、治療予後は不良である可能性が考えられた。しかし、患者との綿密なカウンセリングを元に、同部位は可能な限り天然歯を保存することとし、インプラントを用い臼歯部の強固な咬合支持を確保することで、上顎前歯部における2次性咬合性外傷に対応することとした。また、幅の広い1壁性骨欠損に対し、矯正治療と歯周組織再生療法を計画的に行うことにより、生理的な歯槽骨形態及び辺縁歯肉形態の獲得を目指した。
本発表を通じて諸先生方のご意見、ご指導を賜りたいと思う。
略歴
2006年 愛知学院大学歯学部卒業
2007年 愛知学院大学歯学部付属病院総合診療科勤務
2008年 神戸市歯科医院勤務
2012年 奥田歯科医院 開業
所属
日本臨床歯科学会 大阪支部
日本臨床歯周病学会
オッセオインテグレイション・スタディクラブ・オブ・ジャパン
日本口腔インプラント学会
顕微鏡歯科学会
抜歯を行うことにより、硬軟組織の幅と高さの減少が生じることは周知のことであり、特に、日本人の前歯部においては唇側歯槽骨の厚みが薄く、抜歯後早期に唇側束状骨が大きく失われるため、その後のインプラント埋入が極めて難しくなる。
近年、前歯部・臼歯部の抜歯後即時インプラント埋入における良好な結果が立証されてきており、同術式は、条件を満たせば有益な治療法であると考えている。
よって、普段の臨床においても前歯・臼歯問わず抜歯後即時インプラント埋入が適応であれば、唇側骨の保存を念頭にいれながら、治療の第一選択としている。
その際、抜歯前の硬軟組織の診断が重要で、『抜歯後即時インプラント埋入を行うことが可能か、リッジプリザベーション、GBRなどの治療オプションを併用するのか』
などインプラント埋入を行うタイミングに関しては十分吟味した上でインプラント治療に望まなければならない。
本講演では前歯部における症例を中心に抜歯後即時インプラント埋入を成功に導く診断基準について文献的考察を踏まえてお話ししたい。
略歴
2001年 岡山大学歯学部卒業
2005年 おだデンタルクリニック開業
2006年 医療法人小田会 理事長
2012年 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科修了 博士(歯学)取得
所属
日本臨床歯周病学会 関西支部理事
日本口腔インプラント学会 専門医
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科インプラント再生補綴学分野 非常勤講師
抜歯後の歯槽骨吸収は経験的にもよく知られており、インプラント埋入時に我々臨床医をしばしば悩ませる。特に、唇(頬)側骨の厚みが薄い部位における抜歯後の歯槽骨吸収は、時に深刻な状況を生み出し、ブロック骨移植や強化フレーム付き非吸収性メンブレンなどを用いた大規模なGBRを必要とする場合がある。そのような状況を回避するため、かねてより、抜歯後の歯槽骨吸収を抑制するリッジプリザベーションが注目されており、様々な骨補填材やメンブレンを用いた術式が報告されてきた。また、リッジプリザベーションの目的も従来の「歯槽骨吸収の拡大抑制」から、近年では「骨吸収を有する抜歯窩外側に抜歯と同時にGBRを行い、顎堤の増大を図る」まで、変化と広がりを見せている。すなわち、選択すべき術式もおのずと異なってくるわけである。
本日は、どのような状況の歯を抜歯する場合にリッジプリザベーションを選択すべきなのか、加えて、抜歯対象歯がうけているダメージの度合いによって異なる術式選択の考え方を解説し、皆様とディスカッションしたいと思う。
語句補足説明
リッジプリザベーションとは、「抜歯後の変化として生じる歯槽堤の硬・軟組織の吸収に伴う体積の減少を抑制する処置」を指す。また、骨補填材を抜歯窩に填入する処置を指すソケットグラフト(socket graft)や、吸収した抜歯窩壁の造成術(ridge augmentation of extraction sockets )など、より細分化された語句があるが、本講演においては、これらを抜歯時に行う一連の処置としてまとめ、リッジプリザベーションという語句に含めることとする。
◆ 略歴
1999年 大阪歯科大学卒業
1999年 医療法人 西村歯科金剛診療所 勤務
2014年 須沢歯科・矯正歯科 承継・開業
2016年 医療法人優愛会 須沢歯科・矯正歯科 理事長
◆ 所属
日本歯周病学会 専門医
日本臨床歯周病学会 認定医
日本口腔インプラント学会 会員
日本歯科審美学会 会員
American Acadedemy of Periodontology (AAP) 会員
EAO (European Association for Osseointegration) 会員
OJ (Osseointegration Study Club of Japan) 正会員
◆ 抄録
インプラント治療が臨床に取り入れられるようになって約半世紀が経過した。日常臨床において、そのほとんどは部分欠損症例であるが、日本人の歯の喪失理由では歯周病がもっとも多いため、歯周病で歯を失った患者に対しては、インプラント治療に先立ち歯周治療を成功させるだけでなく、歯周病患者の特徴を十分理解してインプラント治療を行う必要がある。また、歯周病患者においては、欠損部の歯槽骨が高度に吸収していることが多く、欠損部歯槽堤に対する骨造成などを行わなくてはインプラントを埋入できないことも多い。さらに、治療後の予知性を高めるためには、残存歯だけでなくインプラント周囲においても清掃性の高い口腔環境を構築することが求められ、3次元的に正しい位置にインプラントを埋入し、清掃しやすい上部構造を装着することが重要となるが、埋入部位の水平的・垂直的骨量不足に多くの症例で遭遇する。
上記のような問題点を鑑み、患者に長期予後を提供することが大切であるという背景から、以前の「外科主導型インプラント治療」から「補綴主導型インプラント治療」が推奨されるようになり、天然歯に近い、清掃しやすい形態を付与するために、まず硬組織を望ましい条件に整える歯槽堤増大術が必須となってきた。そして、歯槽堤増大術のなかでも、臨床家にとって最も汎用性の高い手技は骨誘導再生療法(Guided Bone Regeneration: GBR)であると考えている。
そこで本講演では、GBRで使用されるマテリアル・手技を再確認し、実際の症例とその予後を検証したい。
略歴:
昭和62年(1987) 日本歯科大学新潟歯学部卒業
昭和62年(1987) 日本歯科大学新潟歯学部第一口腔外科教室勤務
平成 4年(1992) いのこ歯科医院 理事長
所属・専門医認定医等:
日本歯科大学新潟生命歯学部歯周病学講座 非常勤講師
東京歯科大学歯周病学講座 客員講師
JIADS ペリオインプラントアドバンス講師
アメリカ歯周病学会(AAP)
日本歯周病学 専門医
日本臨床歯周病学会 認定医・指導医、歯周インプラント指導医
日本口腔インプラント学会
日本顎咬合学会
Osseointegration Study Club of Japan
近年のデンタルインプラントの発展には目を見張るものがある。なかでもGBRやSinus Lift(上顎洞底挙上術)などの骨造成を行うことでその適応症も広がり、しかも力学的にも理想的な位置にインプラントを埋入できるようになってきた。特にSinus Liftは、既存骨の厚みが1mm程度の症例においても20mm以上の垂直的な増大が可能であり、自分自身の症例の20年の予後をみても骨補填材に100%異種骨を用いたSinus Liftにおいて、術後の骨の吸収は殆どなく経過が良好であることを経験している。特に中鼻道自然孔ルート(Ostiomeatal complex )を含め Sinusに病変の無い症例におけるSinus Liftは安全確実な方法である。
一方、垂直的GBRに際しては高度なスキル、材料の選択そしてリモデリング後の骨の安定度など考慮しなければならない要素が沢山ある。現在、それらに関して多くの情報があり、臨床では混乱しているのが現状である。たとえばソーセージテクニックでは合併症は少なくても術後のリモデリングによる骨吸収が多い、チタンメッシュを併用すると合併症は多いが術後の骨吸収が少ない、自家骨:異種骨の比率50:50が一倍良い、Growth Factorは必要等、に関して多くの情報が錯綜している。これらの情報を整理するためには、まずは基本的な事を理解する必要がある。すなわち、骨造成における大原則として骨が充分成熟するためには、①動かない環境と②軟組織の迷入のない環境、の2点が満たされる必要があり、この条件をいかに合併症が少ない状況で達成することが出来るか?が骨造成の成否の鍵となる。
骨の動かない環境という観点からSinus Liftの予後は良いことは理解できる。また垂直的なGBRではBone Enhancing Cover Screw (BECS)に代表されるインプラント体に固定したチタンメッシュのような骨が動かない環境が大事である。軟組織の迷入のない環境という点からすると、チタンメッシュの露出を防止が大切である。そのためには、歯肉の厚さが大切であり、歯肉のもともと薄い部位にチタンメッシュは禁忌であり、また減張切開で歯肉を薄くしすぎることも禁忌となる。そのために、Upward Motion Scissors Technique (UMST)により骨膜だけの減張切開を行い歯肉の厚さをコントロールすることが大切である。さらにバリアメンブレンも軟組織の迷入がない環境に必要となるが、メンブレンは骨膜からのGrowth Factorを造成骨に作用する際に障害となるという点ではその応用に工夫が必要となる。今回、インプラント治療における骨造成について 私の今までの臨床例を通して上記の情報を整理し皆様と一緒に考えたい