※オンラインは、ライブ配信のみで、オンデマンド配信はございません。
※現地開催のみで、オンライン(ライブ配信、オンデマンド配信)開催はございません。
09:15 ~ 13:30 | 基本手技から学ぶ歯周組織再生療法 |
フラップ手術のための基本手技と歯周組織再生療法を豚骨実習で行います。
■講師 奈良 嘉峰 先生
■インストラクター
・森下 長 先生
(日本歯周病学会 歯周病専門医、日本口腔インプラント学会 インプラント専門医)
・榎本 拓哉 先生
(日本歯周病学会 歯周病専門医、日本臨床歯周病学会 認定医)
・多田 和弘 先生
(日本歯周病学会 歯周病認定医)
・前田 大輔 先生
(日本歯周病学会 歯周病認定医、日本口腔インプラント学会 インプラント専門医)
・舟山 一成 先生
(日本歯周病学会 歯周病認定医)
■当日、各自持参していただくもの
ご自身の歯周外科器具、ルーペ、
トンネリングインスツルメント剥離子
09:00 ~ 15:00 | ハンズオンセミナー 【インストラクター:佐藤昌美/池田歯科クリニック】 【インストラクター:塩浦有紀/熊谷歯科医院】 【インストラクター:伊藤 星良/円山グリーン歯科】 【アシスタント:山畑 由貴子/】 【アシスタント:古畑未由羽/なえぼ駅前歯科】 【アシスタント:櫻田華子/三好プリベント歯科】 【アシスタント:木藤 未来/なかむら歯科】 【アシスタント:向川 すみれ/ホワイト歯科クリニック】 |
1991年 北海道医療大学歯学部附属歯科衛生士専門学校卒業
医療法人社団池田歯科クリニック勤務 現在に至る
2007年~2012年 中国ハルピン医科大学第4病院口腔医療センター臨床客員教師
2009年 武蔵野大学通信教育部人間科学部人間科学科卒業
2011年 武蔵野 大学大学院通信教育部人間学研究科人間学専攻修士課程修了(2011年3月人間学修士号取得)
日本歯周病学会認定歯科衛生士・日本歯周病学会評議員
日本臨床歯周病学会指導歯科衛生士
日本歯科衛生士会認定歯科衛生士 生活習慣病予防
日本心理学会認定心理士
1989年 日本歯科大学付属歯科専門学校
(現日本歯科大学東京短期大学)卒業
下村石膏株式会社研究室勤務
1991年 住友不動産株式会社歯科室勤務
1995年〜数件の歯科医院に勤務
1996年 若林歯科医院(東京都渋谷区)非常勤勤務
2000年 熊谷歯科医院(東京都中野区)勤務現在に至
日本歯周病学会 認定歯科衛生士
日本臨床歯周病学会 指導歯科衛生士
2006年 小樽歯科衛生士専門学校卒業
2006年 中湧別歯科診療所勤務(オホーツク支部)
2011年 円山グリーン歯科勤務(札幌市)
現在に至る
2019年5月23日 日本歯周病学会認定歯科衛生士取得
2009年9月27日 日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士取得
2021年3月14日 日本臨床歯周病学会指導歯科衛生士取得
09:35 ~ 10:05 | うつ病の既往がある広汎型慢性歯周炎患者に対して,信頼関係を構築し,長期継続SPTへと繋げることができた1症例 【新田恵/医療法人誠心会 竹田歯科クリニック】 |
10:10 ~ 10:40 | AngleⅢ級による外傷性咬合を伴う広汎型重度慢性歯周炎患者に歯周組織再生療法を行った症例 【多田和弘/医療法人社団 多田歯科医院】 |
10:40 ~ 10:55 | 休憩 |
11:00 ~ 11:25 | 歯周治療におけるモチベーションを向上できた一症例 【大橋 亜希/ホワイト歯科クリニック】 |
11:30 ~ 12:00 | 審美領域において顔貌に調和した歯冠形態を付与することを目的に歯周外科を行った1症例 【舟山 一成/舟山歯科医院】 |
12:00 ~ 13:00 | リグロス報告 【岩野 義弘/日本歯周病学会 評議員・指導医・歯周病専門医 日本口腔インプラント学会 代議員・指導医・専門医 日本臨床歯周病学会 認定医 アメリカ歯周病学会 会員 OJ 理事 日本インプラント臨床研究会 副専務理事】 |
1994年 北海道医療大学歯学部付属歯科衛生士専門学校卒業
2013年 医療法人誠心会竹田歯科クリニック
2020年 日本口腔インプラント学会専門歯科衛生士取得
Ⅰ.はじめに
歯周治療の成功には,患者と歯科医療者の信頼関係を構築することが大切である.今回,患者との関わり方に十分配慮しながら対応したことで,初診時の問診には記載がなかった過去のうつ病の情報を得られ,患者の行動変容へと導いた7年経過した症例を報告する.
Ⅱ.症例の概要
患者:39歳,男性,喫煙(10本/18年) 初診:2016年3月 主訴:見た目をよくしてほしい.現病歴:10年以上前にぶつけた前歯が,最近大きく欠けてしまった.全身的既往歴:特記事項なし.歯科的既往歴:歯科受診は18年ぶりで今まで歯石を除去したことがない.口腔内所見:全顎的に辺縁歯肉の発赤腫脹,多量のプラーク付着,歯肉縁上縁下の歯石沈着を認めた.PCR100%,BOP100%,4mm以上のPPD95%.
Ⅲ.診断名
広汎型慢性歯周炎(ステージⅢグレードC)
Ⅳ.治療計画
1,歯周基本治療(口腔衛生指導,SC,SRP)/2,再評価/3,口腔機能回復治療/4,再評価/5,SPT
Ⅴ.治療経過
セルフケアの重要性の理解度がないことと,プラークコントロールが確立されていなかったので,適切な口腔清掃法の指導を行った.保存困難と判断された12,11抜歯後再評価を行い PCR24%,BOP15.6%,4mm以上のPPD36%となり、歯周組織の改善が見られたため口腔機能回復治療,SPTへ移行した.
Ⅵ.考察およびまとめ
内向的で,コミュニケーションがとりにくかったため信頼関係構築に時間がかかったが,担当制である強みを生かし,長期に渡り患者に寄り添う事で,徐々に患者背景を知り聞き取りすることができた.
出来るだけ傾聴を心がけ賞賛することにより,患者はキャンセルすることなく通院できたと思われる.口腔機能回復治療後から,患者自身生い立ちや,過去にうつ病で3年ほど引きこもっていた事を話し始め,洋服や身だしなみにも変化が見られるようになった.患者背景の聞き取りまで時間はかかったが,徐々に信頼関係を構築することで,現在1か月毎のSPTを欠かさず実施することができ, 良好な経過を得る事ができている.
2007年 日本歯科大学新潟生命歯学部卒業
2012年 日本歯科大学大学院新潟生命歯学研究科歯周機能治療学大学院修了
【症例概要】患者:54歳女性.初診日:2017年7月.主訴:全顎的に歯がしみる.歯の揺れが強くなってきた.喫煙歴:20歳頃から喫煙しており,現在は1日約5本.全身的既往歴:甲状腺腫瘍.現病歴:40歳前後から歯のしみと歯肉の腫脹を自覚していたが,現在まで放置していた.最近,歯牙の動揺と咬合時の違和感が強くなってきたために来院.20歳前後に臼歯部のカリエス処置の経験はあるが,歯周病の治療歴はない.口腔内所見:咬合様式はAngleⅢ級であり,アンテリアガイダンスがない.前方側方運動時に27と37の早期接触が認められた.全顎的に歯垢,歯石の沈着が認められ,辺縁歯肉に発赤,腫脹が認められた.エックス線画像所見:全顎的に中等度から重度の水平的X-p透過像,27は最深PPD9mm,動揺度1度,近遠心には垂直的X-p透過像が認められた.全顎的にPPD≧4mm91.9%,BOP79.9%,動揺歯も多数認められた.
【診断】広汎型重度慢性歯周炎 ステージⅢ グレードC
【治療方針】①歯周基本治療(モチベーションの獲得,禁煙指導,プラークコントロール,スケーリング・ルートプレーニング,前方側方運動時に作業側の小臼歯部分でのガイド付与のため小臼歯と大臼歯部分の早期接触部分の咬合調整)②再評価③保存不可能な歯の抜歯④歯周外科治療⑤口腔機能回復治療,ナイトガード装着⑥SPT
【治療経過】歯周基本治療では,スケーリング・ルートプレーニング,外傷性咬合に対する処置として,前方側方運動時に咬合性外傷が認められた14,16,17,24,25,27,37,47部分の咬合調整を行い,側方運動時の作業側は小臼歯部分でのグループファンクションとなるようにガイド付与をした.再評価後,垂直性骨欠損が残存した27にFGF-2製剤(リグロス)を用いた歯周組織再生療法,暫間固定を施行し,歯周ポケットが残存した14-17,24-26,34-37,44-47に対しては歯肉剝離搔把術を施行した.その後口腔機能回復治療,ナイトガード装着しSPTに移行した.口腔機能回復治療として永久固定は行わなかった.
【考察と結論】AngleⅢ級のため,アンテリアガイダンスがないことによる臼歯部の外傷性咬合に対して前方側方運動時の小臼歯と大臼歯部分での早期接触を除去し,作業側の小臼歯部分でのグループファンクションとすることで,良好な歯周組織の治癒が得られた.27は再生しやすい骨欠損形態に加え,基本治療で咬合性外傷を取り除いたことで良好に歯周組織の再生が得られたと考える.ナイトガードを装着することで,夜間の歯ぎしりやくいしばりに対応しSPTを継続している.今後も長期安定を目指し,慎重な口腔管理の継続が必要であると考えられる.
2001年 旭川歯科学院専門学校 卒業
2015年 ホワイト歯科クリニック 勤務
Ⅰ.はじめに
歯周治療を行う際, 歯周炎に対する理解とセルフケアの確立は非常に重要である. そのためには歯科衛生士として患者と良好なコミュニケーションをとり, 信頼関係を構築することは必要不可欠である.
今回, 歯周治療におけるモチベーションの向上により, 歯周基本治療から歯周外科手術までを行い, 良好な結果を得ることができたので報告する.
Ⅱ.症例の概要
患者:46歳 女性 非喫煙者 初診:2022年7月
主訴:左上の歯茎から血が出る.
全身的既往歴:特記事項なし
歯科的既往歴:2018年9月に歯石取り希望, 2021年1月にはブラッシング時に出血する
こと主訴に来院. 歯周基本治療を開始するも途中で挫折.
診査所見:PCR 21.4%, PPD4mm以上29.1%, BOP21.7%, X線にて, 臼歯部に水平性骨
吸収を認める.
Ⅲ.診断名
広汎型慢性歯周炎 ステージⅢ グレードA
Ⅳ.治療計画
1歯周基本治療(口腔清掃指導, スケーリング・ルートプレーニング)/2再評価/3歯周外科処置(フラップ手術)/4再評価/5 SPT
Ⅴ.治療経過
初診より8ヶ月, 歯周基本治療として口腔清掃指導, スケーリングルートプレーニングを行った. 患者は来院当初, セルフケアはできていると思っていた. 歯科医院では歯のクリーニングをしてもらうという感覚で来院されていたため,治療途中で挫折してしまった経緯があった.今回は,ブラッシングや補助的清掃用具の使用方法を指導するだけではなく,患者自身ができること,歯科衛生士ができることをお互いが理解することで, 口腔内の環境を整えるようにした. 再評価後, PPD4mm以上の部位に対し, 歯周外科手術(フラップ手術)を行った. 全てのPPDが3mm以下になったこと, セルフケアが確立されたことを確認し, SPTへと移行した.
Ⅵ.考察およびまとめ
口腔内の清掃状態や来院状況は仕事や生活環境に左右されると思われる.本症例は過去に治療の挫折があり,その反省より,モチベーションを維持するために患者へのアプローチ方法を変えて現在の口腔内環境について改めて説明する必要があると考えた.各場面で患者に寄り添うことでモチベーションの低下に対応する事もでき,無事SPTまで辿り着くことができた.改めて患者の治療に対するモチベーション向上とその維持の難しさを認識できた.再び歯周炎が再発しないよう引き続き患者に寄り添ったサポートを今後の目標と考える.
2015年東京歯科大学歯学部卒業
2015年慶應義塾大学病院歯科・口腔外科学教室入局
2018年慶應義塾大学病院歯科・口腔外科学教室退職
2022年医療法人舟山歯科医院院長就任
Ⅰ.はじめに
日常臨床においてガミースマイルによる審美障害を訴える患者に出会うことは少なくない.今回,骨格や口唇の機能に問題なく歯冠長の不足によるガミースマイルを呈する患者に対し,顔貌に調和した歯頸線を考慮した歯周外科治療を行い,さらにブリッジによる補綴治療を行うことで審美障害を改善した症例を報告する.
Ⅱ.症例の概要
症例
患者:43歳,男性,非喫煙者
初診:2022年4月
主訴:前歯が痛い
全身的既往歴:特記事項なし
口腔内診査所見:プロービングポケットデプスは全て3mm以下,デンタルエックス線写真所見では明らかな骨吸収像は認められなかったが,11に歯根を取り囲むエックス線透過像,11,12,21に歯肉縁下カリエス像が認められた.
Ⅲ.診断名
受動的萌出遅延,歯肉縁下カリエス,審美障害
Ⅳ.治療計画
1:歯周基本治療(口腔衛生指導,スケーリング,11感染根管治療,11抜歯,暫間被覆冠の装着).2:再評価.3:13-23歯周外科治療(歯冠長延長術,結合組織移植術).4:再評価.5:12-21ブリッジにて口腔機能回復治療.6:SPT
Ⅴ.治療経過
歯周基本治療時,11は当初保存可能と判断して感染根管治療を行ったが,歯根中央部に側枝の感染があり,それによる歯根周囲の炎症を抑えることができず,歯根端切除も不可な位置であり,また残存歯質がほとんどなく保存不可と判断して抜歯と診断し,同時にリッジプリザベーションを行った.再評価後,13-23の最終歯冠形態のワックスアップを行い,術後の歯冠形態と歯肉の見え方を患者と共有した後に歯冠長延長術と11部に結合組織移植術を行った.その後プロビジョナルレストレーションにて歯肉形態を調整後,口腔機能回復治療として12-21のブリッジを装着した.
Ⅵ.考察およびまとめ
今回,審美障害を訴える患者に対し,顔貌とレントゲン所見から術後の形態をあらかじめ決定し,十分に説明することで外科処置も含めた治療に対し患者の理解を得ることができ,結果として審美的な治療を奏効できたと考える. 患者の主訴や希望を十分に考慮した上で,審美領域に積極的なアプローチを行うことは,術者と患者の両者にとって満足のいく結果を得る上で重要な時間の一つだと思われる.
1999年 新潟大学歯学部卒業
1999年 日本大学歯学部保存学教室歯周病学講座入局
2012年 博士(歯学)取得
2012年 岩野歯科クリニック開業
2014年 日本大学歯学部兼任講師(歯周病学)
14:30 ~ 16:00 | “みなおそう”歯周基本治療~指導歯科衛生士の視点から 【佐藤 昌美/池田歯科クリニック】 |
16:15 ~ 17:45 | 再評価からメイテナンスを考える ~メインテナンスをより良く継続させるために〜 【塩浦 有紀/熊谷歯科医院】 |
1991年 北海道医療大学歯学部附属歯科衛生士専門学校卒業。
医療法人社団池田歯科クリニック勤務 現在に至る。
2007年~2012年 中国ハルピン医科大学第4病院口腔医療センター臨床客員教師。
2009年 武蔵野大学通信教育部人間科学部人間科学科卒業。
2011年 武蔵野 大学大学院通信教育部人間学研究科人間学専攻修士課程修了(2011年3月人間学修士号取得)
日本歯周病学会認定歯科衛生士・日本歯周病学会評議員
日本臨床歯周病学会指導歯科衛生士
日本歯科衛生士会認定歯科衛生士 生活習慣病予防
日本心理学会認定心理士
歯周基本治療はすべての歯周病患者さんに対して行う原因除去療法です1)。臨床では時として歯周外科治療や口腔機能回復治療(修復・補綴治療、矯正治療、インプラント治療)に目がむく場面があります。しかし、歯周治療の基本となるのは、プラークコントロール、スケーリング・ルートプレーニング(以下SRP)、習癖の修正、抜歯、咬合調整、う蝕治療・暫間固定などが含まれる歯周基本治療になります。そこで今回は、歯周基本治療の大きな柱の一つであるプラークコントロールとSRPに焦点をあて、慢性歯周炎を治すために大切な事柄を指導歯科衛生士の視点を交えて皆さんと一緒に確認したいと思います。
また、本講演のテーマは、日々の診療の忙しさから忘れがちな歯周基本治療の大切さに向き合いたいという私自身の思いを込めて「みなおそう歯周基本治療」にいたしました。池田歯科クリニックに働く33年間の中で担当させていただいた患者さんの様々な経過を共有する時間から、皆さんが歯周基本治療に対する認識とその効果を”見直す”きっかけを見いだし、患者さんがよい方向にむかう一助になればうれしく思います。
参考文献
1)日本歯周病学会.歯周治療のガイドライン.医歯薬出版;2020.21-31 .
1989年 日本歯科大学付属歯科専門学校
(現日本歯科大学東京短期大学)卒業
下村石膏株式会社研究室勤務
1991年 住友不動産株式会社歯科室勤務
1995年〜数件の歯科医院に勤務
1996年 若林歯科医院(東京都渋谷区)非常勤勤務
2000年 熊谷歯科医院(東京都中野区)勤務現在に至
日本歯周病学会 認定歯科衛生士
日本臨床歯周病学会 指導歯科衛生士
メインテナンスをおこなう際に、みなさんは何が一番重要と考えますか?
プラークコントロールの状態をみることでしょうか?歯肉の状態をみることでしょうか?着色を落とすことでしょうか?歯石除去でしょうか?
メインテナンスは1回の施術の中で上記のような事やもっと沢山、もっと他の事も行っている方もいらっしゃると思います。
ただ、それは本当に必要なことでしょうか?本当にやらないといけない事でしょうか?
再評価を行いそこから患者さんのリスクをどのように捉えられていますか?
日々臨床に追われていると、本当は違うのでは?これはどうなの?と思っていることでも、ついつい考えることを先延ばしにしてしまい、パターン化された内容をこなす臨床になってはいませんか?
再評価をおこなった後、そこには患者さんの情報が沢山詰め込まれています。
そこから健康な口腔内を維持する為に必要な情報をピックアップできるようになるために、メインテナンスでは本当に診るべきポイントや、どう診るべきなのかをみなさまと一緒に考えたいと思います。患者さんと長いお付き合いができるよう、必要なもの、必要ではないものが見極められるような思考を目指したいと思います。
14:30 ~ 18:00 | 歯周外科治療における臨床上の工夫とディシジョンメイキング 【岩野 義弘/日本歯周病学会 評議員・指導医・歯周病専門医 日本口腔インプラント学会 代議員・指導医・専門医 日本臨床歯周病学会 認定医 アメリカ歯周病学会 会員 OJ 理事 日本インプラント臨床研究会 副専務理事】 |
1999年 新潟大学歯学部卒業
1999年 日本大学歯学部保存学教室歯周病学講座入局
2012年 博士(歯学)取得
2012年 岩野歯科クリニック開業
2014年 日本大学歯学部兼任講師(歯周病学)
われわれは日常臨床のさまざまな場面で歯周外科治療を行っています。歯周外科治療には、切除療法、組織付着療法、歯周組織再生療法、歯周形成手術があり、それらはさらに細分化されています。多くの術式は先人たちによって考案されたものであり、われわれは種々の条件に対して出来るだけ良好な結果が得られるよう、それらの中から治療法を選択し、術式を真似て臨床応用しています。
条件に応じた適切な手技の選択は重要ですが、それだけで良好な結果が得られるわけではありません。少しでも良い結果が得られるよう、プラークコントロールを主体とした的確な歯周基本治療や、適切な術前術後管理、巧妙なオペ介助等、多くのところに注意を払う必要があります。さらに実際の手技においても、もっと良い方法はないかと思考し、模索しながら切開・縫合法を工夫したり、細かく条件付けをして手技を選択したりしていることと思います。
そこで本講演では、歯周外科手術のなかでも歯肉弁根尖側移動術、歯周組織再生療法、根面被覆術といった、日常臨床においてわれわれ歯周病専門医が取り扱うことの多い術式について、その成功率や確実性を高めるために自分なりに工夫している点、また条件に応じたディシジョンメイキングについて、文献の披瀝と症例の供覧を通してご紹介するとともに、皆さまとともにディスカッションできればと存じます。
09:30 ~ 10:10 | 「咬合性外傷を伴った広汎型慢性歯周炎患者に対して歯周組織再生療法を行った1症例」 【多田 和弘/多田歯科医院】 |
10:15 ~ 10:55 | 「歯周治療におけるモチベーションを向上できた一症例」 A Case Report of improved of motivation in periodontal treatment. 【儀俄 宏樹/ホワイト歯科クリニック】 |
11:00 ~ 12:20 | 「歯肉退縮に対する対応と予防」 【松井 徳雄/一般社団法人JIADS理事長】 |
キーワード:咬合性外傷、歯周組織再生療法、広汎型慢性歯周炎、リグロス
【症例概要】患者;38歳女性。初診日;2017年7月。主訴;左上と下の前歯の歯ぐきの腫れ。左下の歯が揺れて痛い。喫煙歴;20歳頃から1日約15本。全身的既往歴;特記事項なし。現病歴;30歳前後から歯肉の腫脹を自覚。最近は咬合時の疼痛が強くなってきたため来院。
【診断】広汎型慢性歯周炎 ステージⅢ グレードC
【治療方針】①歯周基本治療(モチベーションの獲得、禁煙指導、クレンチングやブラキシズムに対しての習癖指導、プラークコントロール、46番感染根管治療、スケーリング・ルートプレーニング、咬合調整)②再評価③保存不可能な歯の抜歯④歯周外科治療⑤口腔機能回復治療、ナイトガード装着⑥SPT
【治療経過】再評価検査において垂直性骨欠損が認められた13、17、26に再生療法を施行し、その後口腔機能回復治療、ナイトガード装着しSPTに移行した。
【考察と結論】アンテリアガイダンスが喪失したことによる臼歯部の咬合性外傷が修飾因子となり、急速な歯周組織の破壊が認められた。FGF-2製剤(リグロス)を用いた歯周組織再生療法により、良好な歯周組織の改善を認めた。その後SPTを継続しており、今後も長期安定を目指し、慎重な口腔管理の継続が必要であると考えられる。
Ⅰ.はじめに
歯周治療を行う際,歯周炎に対する理解とセルフケアの確立は非常に重要である.そのためには歯科衛生士として患者と良好なコミュニケーションをとり,信頼関係を構築することは必要不可欠である.
今回,歯周治療におけるモチベーションの向上により,歯周基本治療から歯周外科手術までを行い,良好な結果を得ることができたので報告する.
Ⅱ.症例の概要
患者:46歳 女性 非喫煙者 初診:2022年7月
主訴:左上の歯茎から血が出る.
全身的既往歴:特記事項なし
歯科的既往歴:2018年9月に歯石取り希望, 2021年1月にブラッシング時に出血することで当院に来院.歯周基本治療を開始するも途中で挫折.
診査所見:PCR75.9%,PPD4mm以上57.1%,BOP(+)82.1%,X線にて,全顎的水平性骨吸収像あり.
Ⅲ.診断名
広汎型慢性歯周炎 ステージⅡ グレードA
Ⅳ.治療計画
1歯周基本治療(口腔清掃指導,スケーリング・ルートプレーニング)/2再評価/3歯周外科処置(フラップ手術)/4再評価/5 SPT
Ⅴ.治療経過
初診より8ヶ月の間, 歯周基本治療として口腔清掃指導,スケーリングルートプレーニングを行った.再評価後, 4mm以上のPPDが残存した部位には歯周外科手術(フラップ手術)を行った.全てのPPDが3mm以下になったこと, セルフケアが確立されたことを確認し,SPTへと移行した.
Ⅵ.考察およびまとめ
本症例を通じて,患者における治療に対するモチベーションの向上とその維持の難しさを改めて再認識した.過去に治療の挫折もあったため,その反省を活かしながら,患者へのアプローチ方法を変えて現在の口腔内環境について改めて説明した,口腔内の清掃状態や来院状況は,特にお仕事や生活環境に左右されることが多い.今回,途中でモチベーションが低下することもあったが,各場面で患者に寄り添うことでモチベーションを維持して無事にSPTまで辿り着くことができた.今後の目標としては, 再び歯周炎が再発しないよう、引き続き患者に寄り添ったサポートをしていきたいと考える.
歯肉退縮はほぼ毎日見受けられると言えるくらい発現頻度が高い疾患です。歯肉退縮が生じてもまったく症状がない場合もありますが、知覚過敏や根面カリエス、審美性を損なうことも多く大きな問題につながることがあります。また歯肉退縮が生じるとおよそ80%の割合で進行することも報告されており、症状が軽度のうちに対応することが望ましく、歯肉退縮を改善する根面被覆術は治療オプションとして大切です。
根面被覆術は結合組織移植術(CTG)によるものが一般的で、多くの臨床家がその有用性を報告しています。一方、歯肉退縮を生じにくくする対応も重要です。特に補綴装置マージンを歯肉縁、縁下に設定する場合は歯肉退縮が生じるリスクは高くなり、付着歯肉の存在が重要となります。付着歯肉が欠如あるいは少ない場合は歯周外科処置による増大が必要な場合もあります。どのような状況だったら歯肉退縮が生じやすいかを理解すると、対応が必要か否かの判断も行いやすく、問題が生じてからの対応ではなく、問題が生じにくい治療を行うことが可能となります。
今回は、歯肉退縮を予防する治療の考え方と実践、CTGを用いた根面被覆術を安全・安心・確実に行うための考え方、テクニックについてお話しさせていただきます。
13:35 ~ 15:00 | 「患者さんに口福になってもらうために」 【松井徳雄/一般社団法人JIADS理事長】 |
15:15 ~ 16:45 | 「患者とともに進化する歯科医の診断力と治療方針」 【菅谷勉/北海道大学 歯学研究科】 |
1991年 大阪大学歯学部 卒業
同年 医療法人貴和会歯科診療勤務
小野善弘、中村公雄両氏に師事
現在 医療法人貴和会 理事
所属/役職
一般社団法人JIADS 理事長
日本臨床歯周病学会 副理事長、指導医、認定医
アメリカ歯周病学会(AAP)会員
日本歯周病学会 会員
私は1991年に大学を卒業し、すぐに医療法人貴和会歯科診療所に勤務させていただきました。その当時、国家試験勉強の名残の知識?は多少ありましたが、患者さんと治療として接することは少なく、口腔内写真やレントゲンなどの診査や患者さんに現状を説明することからのスタートでした。その時にもう少し早く来院されていたらなぁと感じたことも多くありました。やはり病状が進行してからの治療は難しくなり、患者さんのQOLは低下します。歯科の疾患にはカリエス、歯周病、歯牙破折、根尖病変、外傷など多岐にわたる病変があり、歯および歯周囲組織はさまざまな状態に変化します。歯周病は「骨」が喪失する疾患で自然には治りません。このような状況で歯、歯列が良好な状態を長期間維持できるためには、患者さん自身による清掃性の高い口腔内環境と安定した咬合の確立が大切だと思います。 私が考える「清掃性が高い」というのは、深い歯周ポケットは浅く、歯槽骨や根分岐部の窪みは少なく、歯ブラシをあてても痛くない歯肉組織が備わっている状態です。言い換えると「歯周ポケットの除去、生理的な骨形態の獲得、付着歯肉の獲得」によりプラークコントロールしやすい環境の確立が望ましいと考えます。
実際の歯周治療では非外科治療はとても大切である。炎症を軽減するとともに患者さんとの相互理解、モチベーションを図るには欠かすことができません。一方で、臼歯部や深い歯周ポケット、根分岐部病変が存在する部位ではアクセスが困難となり、非外科治療には限界があります。また垂直性骨欠損や根分岐部病変は長期的に見て安定を図ることは難しく、歯周囲の角化歯肉が少なくブラッシング時に疼痛がある場合は改善することが望ましいですが、これらの改善の多くは歯周外科処置のオプションが求められます。歯周外科処置もさまざまな目的があり、その目的に応じた術式が存在し、正しい術式を選択しなければ、同じ外科処置行ってもその効果は最大限得られません。術式の利点、欠点を理解することが重要です。
歯周治療においては非外科、外科どちらを優先するかではなく、両方の治療オプションを持ち、どちらが長期的安定を望めるか患者の希望も加味しながら治療方法の選択を行うことが大切と考えています。
今回のシンポジウムでは自身のラーニングステージも加えながら、患者さんが口福になる歯周組織の長期安定について皆様と考えてみたいと思います。
2002年度-2005年度 北海道大学、大学院・歯学研究科、助教授
2009年度 北海道大学 歯学研究科、准教授
2016年度 北海道大学 歯学研究科、准教授
2019-2021年度 北海道大学 歯学研究科、教授
2023年度 北海道大学 歯学研究科、特任教授
歯科治療の目的は生涯にわたって高いレベルで口腔機能を維持することであろう。そのためには、歯周病患者では歯周治療が根幹となって治療やメインテナンスを考えていくことになるが、歯周病は原因も治療法も多様なため、症例に応じた柔軟な対応が大切である。歯科医師となった当初は成書やガイドラインにしたがって治療を進めるのであろうが、そのことは必ずしも望ましい結果に導かれるとは限らず、そこから逸脱することが時には重要で、経験を重ねるほどそのような症例は多くなる。
歯周病はまず口腔清掃によりプラークを除去することが必須とされているが、繰り返しのモチベーション、テクニック指導にもかかわらず、歯肉辺縁の発赤が改善しない患者は、治療成績が十分に得られないため治療の適応外とさえ考えられていた。しかし、高いレベルで清掃できない患者はめずらしくないし、高齢化に伴いブラッシングレベルが著しく低下する患者もいる。それでも歯周炎が進行しない患者もいることから、口腔清掃状態が悪い患者に対して、歯周炎の進行を遅らせて歯の寿命を延ばすことを目標に治療を行うことで、一定の効果を発揮させることは可能と考えるようになっている。
また、歯肉の炎症がある場合に大きな力が負荷されると、歯周組織破壊が進行する危険性があるとされているが、垂直歯根破折やセメント質剥離性破折は、歯肉の炎症とは無関係に歯周組織破壊が進行する。最近は、薬物性ではなく咬合に起因すると考えられる骨壊死により、セメント質剥離破折と似た症状を示す症例の経験がふえている。これらの疾患を歯周病には含めるべきではないのであろうが、患者にとっては歯周病と同様の歯周組織破壊が生じるものであり、歯周病専門医がカバーすべき領域と考えている。したがって、咬合力による歯周組織破壊リスクが高い患者では、動揺はなく清掃状態が良くても予防的な咬合調整を積極的に行うようになっている。また、深いポケットの原因が細菌による炎症の結果でない症例に対しては、治療後に残存した深いポケットへの細菌の再増殖をいかに阻止するかより、咬合負荷を減弱させることが重要と感じている。
プロービングデプスが深くて骨欠損があれば歯周炎であり、とりあえずプラークコントロールとSRPいう時代は終焉を迎えたように思うが、まだ歯周組織破壊のメカニズムや治療法は不明確な点が山積しており、今後も多くの症例から情報を収集して整理していくことが必要であろう。
09:30 ~ 09:55 | インプラント周囲炎を伴う骨粗鬆症患者に対して包括的歯科治療を行った一症例 【儀俄 宏樹/医療法人社団白清会 ホワイト歯科クリニック】 |
09:55 ~ 10:20 | 包括的歯周治療を行った広汎型侵襲性歯周炎患者(StageⅣ gradeC)の5年経過症例 【榎本 拓哉/えのもと歯科】 |
10:30 ~ 11:00 | ブラッシング習慣がなかった患者がセルフケアの重要性を理解することで行動変容へと繋げた一症例 【木藤 未来/医療法人永遠会なかむら歯科】 |
11:05 ~ 11:30 | 慢性歯周炎患者に対して低侵襲歯周組織再生療法を行なった一症例 【森下 長/札幌プレミアム歯科】 |
11:40 ~ 12:10 | 多数歯に歯肉退縮を認める患者にプラークコントロールを改善し根面被覆術を行った一症例 【鳥井 優樹/医療法人社団トリヰ歯科医院 円山公園歯科】 |
12:10 ~ 12:40 | 歯科医院における禁煙支援 〜禁煙への行動変容ステージモデルの活用〜 【牧島 真美/竹田歯科クリニック】 |
2013年 北海道医療大学歯学部卒業
2015年 ホワイト歯科クリニック 開業
2018年 医療法人社団白清会 理事長
Ⅰ.はじめに
超高齢社会を迎えた今,内科疾患を抱えた高齢の患者は多くなっている.その中でも骨粗鬆症を患った高齢者においては健常者と異なる対処が必要である.また我々歯科医師の平均年齢も上がり,地方ではすでに閉院などにより,特に専門的なインプラントのメインテナンスを継続できない患者も多く見受けられる.今回,ビスホスホネート製剤を服用している骨粗鬆症の患者において,他院で16年前に埋入されたインプラントの周囲炎と広汎型慢性歯周炎(ステージⅣ グレードC)を改善した症例を報告する.
Ⅱ.症例の概要
患者:72歳 女性 非喫煙者 初診:2021年2月
主訴:インプラントの上物が取れた(他院より紹介)
全身的既往歴:骨粗鬆症(BP内服歴3年)
歯科的既往歴:2005年に主訴である部位のインプラントは紹介先の他院で埋入された.今回その上部が脱離し,対応が難しいとのことで当院へ紹介.
診査所見:PCR48%,PPD4mm以上72%,16インプラントPPD8mm,15,14インプラントPPD10mm排膿あり,15インプラント周囲膿瘍に瘻孔あり,21排膿あり,21,22,23,25,32,43,45,46にPPD6mm以上,BOP77%,X線にて15,14インプラント21,23に垂直性の骨透過像を認めた.
Ⅲ.診断名
広汎型慢性歯周炎 ステージⅣ グレードC
Ⅳ.治療計画
1歯周基本治療(プラークコントロール指導,SRP,不適合補綴物除去,上顎治療用総義歯,46,36,37暫間被覆冠,15,14インプラント撤去,13,22,25 抜歯,21,23 歯内療法)/2再評価/3歯周外科処置/4再評価/5補綴処置/6 SPT
Ⅴ.治療経過
歯周基本治療として口腔清掃指導,スケーリングルートプレーニングを行い炎症のコントロールをした.保存困難である3歯の抜歯及びインプラント2本は撤去した.歯内療法と同時に,治療用義歯,暫間被覆間による咬合の再構成を行い,力のコントロールをした.再評価後,4mm以上の歯周ポケットが残存した部位には歯周外科手術を行った.全ての歯周ポケットが3mm以下になったことを確認し,順次下顎から補綴した.上顎は16インプラントロケーターシステム,21,23マグネットによるオーバーデンチャーにて最終補綴を行った.口腔機能が回復しセルフケアが確立されたことを確認しSPTへと移行した.
Ⅵ.考察およびまとめ
本症例は,歯周基本治療をベースに全体的に歯周ポケットの改善を大きく認めた.またビスホスホネート製剤を服用している骨粗鬆症患者において,MRONJの問題と向き合いながら,抜歯及びインプラントの撤去,そして歯周外科手術を行い,最終補綴まで行うことができた.
2009年 北海道医療大学 歯学部卒業
2015年 昭和大学大学院 歯学研究科 歯周病専攻 修了
2017年 日本歯周病学会 専門医 取得
2019年 えのもと歯科(札幌市西区) 開業
Ⅰ.はじめに 重度歯周炎患者では,支持歯槽骨の減少と共に根分岐部病変や歯牙の動揺を伴う二次性咬合性外傷,フレアアウトを認める場合がある.上顎3度の根分岐部病変の処置法には,抜歯や歯根切除があり,動揺歯には連結固定を行い咬合の安定を図る必要がある.今回,3度の根分岐部病変と多数歯の動揺を伴う広汎性侵襲性歯周炎患者に対し,歯根切除と連結固定を行い歯牙の保存と咬合の安定に努め5年間良好な結果を得た一症例を報告する.
Ⅱ.症例の概要 患者:38歳,女性,非喫煙者 初診:2013年10月 主訴:右下奥歯が腫れている.
全身既往歴:特記事項なし 家族歴:両親とも歯周病で残存歯が2,3本ほどしかなく義歯を使用している.歯科的既往歴:2〜3年ほど前に近医にて17,16抜歯を行った.11が出てきたのが気になり近医にて暫間固定を行った.32,42は先天欠如,矯正治療の既往なし.口腔内所見:PCR40.6%,PPD4mm以上59%,BOP61.8%,全顎的に歯肉の発赤,腫脹を認め,26は3度の根分岐部病変を認め,15-17,34,35,45,46に1〜2度の動揺を認めた.X線所見では全顎的に歯根1/3に及ぶ水平性の骨欠損を疑うX線透過像を認め,14に垂直性,特に11,26に根尖まで及ぶX線透過像が認められた.36には近心根根尖部には透過像が認められた.
Ⅲ.診断名 広汎型侵襲性歯周炎(StageⅣ gradeC)
Ⅳ.治療計画 ①歯周基本治療TBI,スケーリング,SRP,暫間被覆冠,抜歯(11),ナイトガード装着,歯内療法,カリエス処置②再評価③歯周外科④再評価⑤口腔機能回復治療⑥再評価⑦SPT
Ⅴ.治療経過 15-14,12-22,25-27は暫間被覆冠を装着して暫間固定を行い,歯周基本治療を行なった.再評価後14,15は歯周組織再生療法,26,27は歯根切除,15-12,21-27には歯周ポケットの除去を目的として歯肉弁根尖側移動術を行った.口腔機能回復治療は,15-23のクロスアーチブリッジと24-27の連結冠を装着し,SPTへと移行した.
Ⅵ.考察およびまとめ 本症例は年齢に対するアタッチメントロス,家族集積性及びJSPの侵襲性歯周炎スクリーニングスコアが17点という点から侵襲性歯周炎と診断した.また,上下顎正中の不一致は下顎位の偏位によるものと推察され,歯列不正,咬頭干渉,早期接触と共に外傷性咬合として強く働いたと考察する.15,14は歯周組織再生療法の適応症と判断しエムドゲイン®︎を用いて再生療法を行い,15-12,21-27は歯肉弁根尖側移動術を行い歯周ポケットの除去を達成した.26,27は歯根切除を行い最低限の歯根を保存することができた.連結固定の範囲は,下顎位の偏位や咬頭干渉,動揺歯の状態を慎重に確認をしながら暫間被覆冠で判断した.歯根切除後の長期予後は,術後5~7年の間に症状が発生すると言われ,歯根破折や2次カリエスなどの問題によることが多いとされている.このことからパラファンクションや患者自身の咬合力の制御,プラークコントロールが適切に行われていることが重要と思われる.SPT移行後5年と短期ではあるが今後も注意深くメインテナンスを継続する必要がある.
2015年 小樽歯科衛生士専門学校 卒業
2019年 医療法人永遠会なかむら歯科 勤務
Ⅰ.はじめに
歯周治療において患者自身が歯周病について理解する事,現状を把握する事,そしてプラークコントロールを確立する事は非常に重要である.口腔清掃の必要性を知らず,自分の口腔内の状況に無関心ゆえに歯周病を理解せず,現状も自覚しようとせず,ブラッシング習慣がない患者のモチベーションの向上は容易ではない.さらにこの症例の患者はミトコンドリア病による難聴があり,言葉が伝わりづらく,聞き取りにくい時があった.今回ブラッシング習慣のない患者のモチベーションの停滞に苦慮しながらも,コミュニケーションを重視した基本治療を行うことで行動変容へと繋がり,プラークコントロールが向上し歯周炎の改善傾向を認めた症例を提示する.
Ⅱ.症例の概要
患者:28歳,男性,会社員,独身,非喫煙者/初診:2003年6月/再初診:2021年8月/主訴:右下の奥歯が数か月前から痛みがあり,昨日から何もしなくても痛い.全体的に歯茎がボコボコして腫れている.歯磨きで出血する./全身的既往歴:ミトコンドリア病/歯科的既往歴:2004年に16,26,46をう蝕治療.他院にて38埋伏歯を抜歯/検査初見:PCR:95.3%,BOP(+):30.2%,PPD4㎜以上:9.9%,全顎的に歯肉の発赤腫脹,歯肉縁上縁下歯石の沈着を認めた.
Ⅲ.診断名
限局型軽度慢性歯周炎(ステージⅠ,グレードA)
Ⅳ.治療計画
①主訴に対する治療(43抜髄処置),②歯周基本治療(口腔衛生指導,SC,SRP),③再評価,④歯周外科治療,⑤再評価,⑥口腔機能回復治療.⑥メインテナンス
Ⅴ.治療経過
歯周基本治療では歯肉の腫脹,出血はプラークコントロールの不良によるものだと説明した.セルフケアの確立を目指すためにホームケアの確認をするとブラッシング習慣のない患者であることが分かった.毎日磨くことを第一の目標にしてTBIを何度も行ったがブラッシングの定着,プラークコントロールの改善は一向に見られず数か月が経過した.ブラッシングの定着が見られないため患者自身が今度どうしていきたいのか問い,患者自身で考えてもらった.次第にコミュニケーションが多く取れるようになり,モチベーションの向上に繋がり,ブラッシングの定着,プラークコントロールの改善が見られた.
Ⅵ.考察およびまとめ
言葉が伝わりづらくブラッシング習慣のない患者に対して,歯周病についての理解,現状の把握,セルフケアの重要性を理解し行動変容へと繋げることは難しいと本症例で感じた.時に厳しく伝える場面もあったが,患者の気持ちに寄り添いながら多くのコミュニケーションを取ることで改善に努めた.歯周治療を成功に導くためには患者の治療に対する理解と行動変容,患者との信頼関係の構築がとても重要である.今後はブラッシング習慣が途切れないようコミュニケーションを取りながら,メインテナンスへと移行していきたい.
2007年 北海道大学歯学部卒業
2012年 北海道大学大学院歯学研究科修了
2014年 日本顎咬合学会認定医
2019年 日本歯周病学会専門医
2022年 日本口腔インプラント学会専門医
1.はじめに:
歯科用顕微鏡や高倍率ルーペによるマイクロサージェリーの普及により,歯周外科は以前より低侵襲なフラップデザインが可能となってきている.また,低侵襲な歯周外科は血餅の維持,一次創傷治癒,スペースメイキングなどの点において歯周組織再生療法にも有利だと考えられる.今回,慢性歯周炎患者に対して低侵襲歯周組織再生療法(SFA, MIST, M-MIST)を行った1症例を供覧する.
2.症例の概要:
患者は43歳男性.歯の痛みを主訴に来院した.口腔内所見として,37のカリエス,全顎的にプラークの沈着を認め,一部歯肉の発赤腫脹を認めた.PCR75.0%,PPD4mm以上が33.9%,BOP(+)が21.6%であった.デンタルエックス線所見では16近心,14近心,26近心,37近心,47近心に垂直性骨欠損と思われる透過像を,また26近心には1度の分岐部病変を認めた.喫煙歴は10本/日を20年である.
3.診断名:
広汎型慢性歯周炎(Stage Ⅲ Grade C)
4.治療計画
1.37抜髄 2.歯周治療(禁煙指導含む) 3.再評価 4.歯周外科治療 5.再評価 6.補綴処置 7.SPT
5.治療経過:
37の抜髄,歯周基本治療の後,再評価を行い,垂直性骨欠損の存在した部位にFGF-2(リグロス)とウシ脱灰骨(Bio-Oss)による低侵襲歯周組織再生療法を行うこととした.47近心にMIST,26近心,分岐部にSFA,16近心,14近心にM-MISTを行った.37近心は骨欠損の範囲が広かったためExtended Flapを行なった.再評価の後,補綴処置を行なった.歯肉の炎症所見は認められず,ポケットは4mm以下, BOP(+)率0%,PCR6.5%と改善し,3カ月ごとのSPTへ移行した.SPT開始後6カ月経過現在,歯周組織,咬合状態ともに良好に経過している.また,デンタルエックス線上で垂直性骨欠損部の不透過像の亢進を認める.
6.考察およびまとめ:
歯周組織再生療法を伴った歯周治療により炎症のない歯周組織を得た.また低侵襲なフラップデザインでの手術は歯周組織再生に有利であると期待される.今後もSPTを継続し経過観察していく必要があると思われる.
2006年 日本大学歯学部卒業
2008年 医療法人社団トリヰ歯科医院 円山公園歯科勤務
2019年 日本臨床歯周病学会認定医
Ⅰ.はじめに 歯周形成外科の進歩により口腔の機能・審美的改善、露出根面を被覆することで根面う蝕や知覚過敏の予防が可能となってきた。また、術式の選択により付着歯肉幅を獲得し清掃しやすい歯周環境を整備できる。今回は多数歯に歯肉退縮を認め、付着歯肉幅が少ない患者にいくつかの術式で根面被覆を行い歯頚線の不揃いを改善し、審美性の改善とプラークコントロールしやすい歯周環境を確立した症例について提示する.
Ⅱ.症例の概要 患者:21歳 男性 初診日:2017年4月主訴:歯茎が下がって気になる .全身的既往歴:特記事項なし.歯科既往歴:前医で左右下顎小臼歯部と下顎前歯部に根面被覆術を施行.喫煙歴:なし.口腔内所見:全顎的にプラークコントロール不良.左右上顎小臼歯部から前歯部にかけて歯肉退縮,歯頚ラインの不揃いを認める.PPD4㎜以上4%.初診時PCR97%BOP43%.CT所見:歯肉退縮を認める部位15,14,13,12,22,23,24,25においては歯根が頬側のボーンハウジングから逸脱.
Ⅲ.診断名 15,4,13,12,22,23,24,25歯肉退縮.Maynardの分類TypeⅣ(15,14,13,12,22,23,24,25).Millerの分類ClassⅠ (15,14,13,12,22,23,24,25).Cairoの分類RTⅠ(15,14,13,12,22,23,24,25)
Ⅳ.治療計画 1歯周基本治療(清掃指導・スケーリング・ルートプレーニング).2再評価.3歯周形成外科(結合組織移植).4再評価.5矯正治療.6メインテナンス.
Ⅴ.治療経過 歯周基本治療を行いPCR24%BOP14%まで歯周組織は改善したので歯周形成外科に移行した.歯周形成外科は以下の通り4ブロックに分けて行った.2018年1月(15,14,13)Coronally Positioned Flap with CTG .2018年8月(23,24,25)Modified Langer Technique .2019年4月(12)Tunneling Technique .2019年7月 (22 )Tunneling Technique .それぞれ術後8週間は週に1度のPTCを行いその後は通常のブラッシングを行った.歯周形成外科終了後再評価を行い歯肉の連続性,審美性が確立し清掃しやすい歯周環境が確立していることを確認した.臼歯部のシザースバイトと上下顎前突改善のために矯正治療を勧めたが同意を得なかったので3か月に1度のメインテナンスへと移行した.メインテナンス時のPCRは9%BOP3%であった
Ⅵ.考察およびまとめ 多数歯に歯肉退縮を認め、付着歯肉幅が少ない症例では清掃性が悪くプラークコントロールが困難なケースもある。患者の自己管理不足に加え歯頚ラインの不揃いや付着歯肉幅が少ないことによる清掃しにくい歯周環境がプラークコントロールをより一層悪化させていた。本症例では初診日より9か月間歯科衛生士によるブラッシング指導を行いプラークコントロールの改善に努めた。初診時PCR97%BOP43%から歯周形成外科直前の再評価時にはPCR24%BOP14%まで改善することができた。さらに歯周形成外科を4ブロックに分けて行い歯肉のフェノタイプの改善と歯頚ラインを整えることにより審美性の向上と、より清掃性の高い歯周環境を獲得することができた。現在初診から5年半経過しているがPCR9%BOP3%に改善され良好な状態を維持している。今後はプラークコントロールの維持に努めるとともに不正咬合による過剰な咬合負荷についても注意深く観察していきたい。
2003年 北海道立衛生士学院歯科衛生士科 卒業
2003年 社会医療法人北斗 北斗病院歯科・歯科口腔外科勤務
2008年 林歯科医院勤務
2013年 医療法人誠心会 竹田歯科クリニック勤務
2017年 パッションハンズオンセミナー講師
所属及び所属学会等
日本臨床歯周病学会 会員
日本歯周病学会 認定歯科衛生士
日本口腔インプラント学会 認定歯科衛生士
日本禁煙学会 禁煙サポーター
現在,健康意識の高まりや禁煙化の広がりとともに,日本における成人喫煙率は年々低下傾向にある.しかしながら,未だ歯科医院に来院する患者の約4人に1人が喫煙者である.特に,近年では加熱式タバコが急速に普及し,この新型タバコに関して,ニコチンを含んでいない,健康被害がない,といった誤った認識が広がっており,喫煙者本人の健康被害のみならず受動喫煙の問題も考えられる.
一方,我々歯科衛生士は歯周治療やSPT・メインテナンスを行う中で,日々喫煙による様々な弊害を目の当たりにしている.喫煙は全身への影響だけでなく,口腔領域にも多大な悪影響を及ぼすことが科学的根拠を持って示されている.現在では,タバコを吸うことは,「ニコチン依存症とその関連疾患からなる喫煙病」で,喫煙者は「積極的禁煙治療を必要とする患者」と考えられている.歯科では医科のように禁煙支援の設備が充分に整っていないが,口腔内を直接見て喫煙の悪影響を患者に確認してもらうことができる.さらに,歯科衛生士は治療やSPT・メインテナンスで繰り返し動機付けできるため,患者の意志や自立性を尊重しながら,自らが禁煙を決断するように支援することができる立場であると考える.
しかし,来院される患者のほとんどが,歯科医院で禁煙について指摘されると思っていない.また,タバコに関する依存度は人それぞれなので,画一した支援では効果は期待できない.
そこで,当医院では「喫煙に関する問診票」を導入し,現在の喫煙の状況を確認するとともに,患者の禁煙行動変容ステージを把握し,そのステージ別に対応を変えて禁煙支援を行っている.本日は,症例を共覧しながら,当院で行っている禁煙支援について発表する.
14:30 ~ 18:00 | 歯周治療と矯正治療の相乗効果 【工藤 求/プリズムタワー工藤歯科】 |
2001年昭和大学歯学部卒 東京所属学会 日本歯周病学会専門医指導医
2003年医療法人社団歯周会西堀歯科勤務
2006年日本歯周病学会専門医
2009年プリズムタワー工藤歯科開設
2017年医療法人社団善慶会設立理事長就任
2019年東京医科歯科大学歯周病科非常勤講師
日本歯周病学会専門医指導医
日本口腔インプラント学会専門医
日本臨床歯周病学会関東支部文献委員長
日本矯正歯科学会正会員
日本歯科審美学会正会員
歯周-矯正研究会POP共同代表
歯周炎は重度になると、アタッチメントロス(付着の喪失)が進み、欠損歯や2次性咬合性外傷を伴うようになる。また、病的な歯の移動(Pathologic Tooth Migration:以下PTM)も起こるようになると、患者さんは見た目も気にするようになる。そこで患者さんは見た目の改善と、歯並びの改善を主訴に歯科医院を受信することがあるわけだが、多くの一般歯科医、歯周病専門医も矯正治療は矯正専門医に任せることが多いかも知れない。しかし、矯正専門医の先生方も、その多くは重度に歯周炎に罹患した歯に矯正力をかけることに不安を抱いている。これが現在の日本の歯科事情である。
2023年3月にベルギーで開催されたヨーロッパ歯周病学会主催の歯周ー矯正マスタークリニックというシンポジウムでも、世界の実情は似ていて、多くの矯正医は訴訟を避けるべくして重度歯周炎に対する矯正治療は積極的には行っていないようである。
さて、それでは重度歯周炎の患者さん。見た目も気にして矯正治療を受けたい患者さん。彼らはどんな歯科医院に行けばいいのか。
多くの歯周治療の聖書、教科書の中に矯正治療の有用性は記載してあるものの、実際の臨床例の診査診断、治療計画、手順など詳細が記載されたものはほとんど目にしない。この背景には世界的にもこの分野がまだ未発達であるということがありそうである。
本講演では歯周病専門医の立場から、歯周炎患者の矯正治療について、歴史的な背景、方法、種類、タイミング、再生療法との併用、インプラント治療との併用など様々な症例を供覧いただきながら、解説する。
歯周治療、矯正臨床どちらも20年そこそこの拙い経験でしかございませんが、会員の皆様の明日からの臨床に歯周-矯正の知識がお役に立てれば幸いです。
09:15 ~ 09:45 | 重度歯周炎患者に対しインプラントを用いて咬合再構成治療を行なった一症例 【森下 長/札幌プレミアム歯科】 |
09:45 ~ 10:15 | 広汎型慢性歯周炎患者に対し自然挺出により深い垂直性骨欠損の改善を認めた症例 【吉野 友都/北海道大学第二保存】 |
10:15 ~ 10:45 | 標準的な歯周治療によって良好に経過している症例 【門貴司/北海道医療大学歯学部准教授】 |
11:00 ~ 11:35 | 演題 マイクロスコープを用いたOff the Job Training 〜dreyfus modelで説明される技術習得の5つのステージ〜 【吉谷正純/よしたに歯科医院】 |
11:40 ~ 12:15 | 歯周治療におけるマイクロスコープの活用 【菅谷勉/北海道大学第二保存教授】 |
12:15 ~ 12:30 | 質疑応答 |
14:05 ~ 14:50 | 歯周外科を成功に導くための口腔内の管理(術前編) 【下田裕子/九州支部 医療法人 水上歯科クリニック】 |
15:00 ~ 15:45 | 歯周外科を成功に導くための口腔内の管理(術中、術後編) 【下田裕子/九州支部 医療法人 水上歯科クリニック】 |
15:45 ~ 16:00 | 質疑応答 |
16:05 ~ 16:50 | 根分岐部病変に対する再生療法の現在(下顎) 【水上哲也/九州支部 医療法人 水上歯科クリニック】 |
17:00 ~ 17:45 | 根分岐部病変に対する再生療法の現在(上顎) 【水上哲也/九州支部 医療法人 水上歯科クリニック】 |
17:45 ~ 18:00 | 質疑応答 |
09:15 ~ 09:45 | 重度歯周炎患者に対しインプラントを用いて咬合再構成治療を行なった一症例 【森下 長/札幌プレミアム歯科】 |
09:45 ~ 10:15 | 広汎型慢性歯周炎患者に対し自然挺出により深い垂直性骨欠損の改善を認めた症例 【吉野 友都/北海道大学第二保存】 |
10:15 ~ 10:45 | 標準的な歯周治療によって良好に経過している症例 【門貴司/】 |
11:00 ~ 11:35 | マイクロスコープを用いたOff the Job Training 〜dreyfus modelで説明される技術習得の5つのステー 【吉谷正純/よしたに歯科医院】 |
11:40 ~ 12:15 | 歯周治療におけるマイクロスコープの活用 【菅谷勉/北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野歯周・歯内療法学教室】 |
1996年 福岡医科歯科技術専門学校
(現 博多メディカル専門学校)歯科衛生士科卒業
同年 医療法人水上歯科クリニック勤務
現在に至る
日本歯周病学会認定歯科衛生士
日本臨床歯周病学会指導歯科衛生士
超高齢化社会を迎えて、健康寿命の延伸が叫ばれている現在、歯周治療に携わる私たち歯科衛生士の役割がますます重要でなっていることは間違いありません。
再生療法が発達した現在でも、歯周治療の大部分は非外科的な治療であり、適切な非外科治療により多くの歯周病が改善されている事は事実です。適切な歯周基本治療やメインテナンスは私たち歯科衛生士が取り組む重要な仕事となっています。一方で進行した歯周病の患者においてはしばしば外科的な介入が必要となることがあります。そこでも歯科衛生士は術前、術中そして術後のメインテナンスにおいて重要な役割を果たします。
術前の処置としてまずは歯周基本治療の一旦を担っています。歯周基本治療はいわゆる原因除去のための非外科的な治療プロセスであり、その後の治療結果を大きく左右する重要な治療です。この歯周基本治療において私たちは患者さんのプラークコントロール、生活指導、そして歯根面の沈着物の除去を行い炎症の改善を図ります。そしてさらに重要な事はこの歯周基本治療の期間中に患者さんの性格や生活背景その他の情報を収集することです。この結果患者さんにおいて非外科的治療が適するか、再生療法などの外科的介入を行うかを決定するための重要な情報を得ることができます。プラークコントロールの改善が認められたとしても、患者さんが極端な怖がりで口を開けなかったり、舌や口唇の動きが激しかったり、体動が多い方であったりすると外科処置は困難となります。これらの情報を歯科医師に適切に伝え協議し患者さんに適した治療術式を選択します。
術中においては、術者のアシスタントを適宜行います。術者の動きを察知し効果的なアシスタントワークが出来るように日々努力していきます。今回の講演では具体的なアシスタントワークについても解説したいと思います。
さらに手術後の術後管理は非常に大切であり、再発を防ぎ治療結果を良好にするためには私たちの術後ケアが非常に大切なものとなります。この術後の重要な期間のケアについても解説したいと思います。そしてさらに治療後の結果を維持するために重要なメインテナンスの説明と具体例ついても紹介したいと思います。本講演が皆様のお役に少しでも立てると幸いです。
1996年 福岡医科歯科技術専門学校
(現 博多メディカル専門学校)歯科衛生士科卒業
同年 医療法人水上歯科クリニック勤務
現在に至る
日本歯周病学会認定歯科衛生士
日本臨床歯周病学会指導歯科衛生士
超高齢化社会を迎えて、健康寿命の延伸が叫ばれている現在、歯周治療に携わる私たち歯科衛生士の役割がますます重要でなっていることは間違いありません。
再生療法が発達した現在でも、歯周治療の大部分は非外科的な治療であり、適切な非外科治療により多くの歯周病が改善されている事は事実です。適切な歯周基本治療やメインテナンスは私たち歯科衛生士が取り組む重要な仕事となっています。一方で進行した歯周病の患者においてはしばしば外科的な介入が必要となることがあります。そこでも歯科衛生士は術前、術中そして術後のメインテナンスにおいて重要な役割を果たします。
術前の処置としてまずは歯周基本治療の一旦を担っています。歯周基本治療はいわゆる原因除去のための非外科的な治療プロセスであり、その後の治療結果を大きく左右する重要な治療です。この歯周基本治療において私たちは患者さんのプラークコントロール、生活指導、そして歯根面の沈着物の除去を行い炎症の改善を図ります。そしてさらに重要な事はこの歯周基本治療の期間中に患者さんの性格や生活背景その他の情報を収集することです。この結果患者さんにおいて非外科的治療が適するか、再生療法などの外科的介入を行うかを決定するための重要な情報を得ることができます。プラークコントロールの改善が認められたとしても、患者さんが極端な怖がりで口を開けなかったり、舌や口唇の動きが激しかったり、体動が多い方であったりすると外科処置は困難となります。これらの情報を歯科医師に適切に伝え協議し患者さんに適した治療術式を選択します。
術中においては、術者のアシスタントを適宜行います。術者の動きを察知し効果的なアシスタントワークが出来るように日々努力していきます。今回の講演では具体的なアシスタントワークについても解説したいと思います。
さらに手術後の術後管理は非常に大切であり、再発を防ぎ治療結果を良好にするためには私たちの術後ケアが非常に大切なものとなります。この術後の重要な期間のケアについても解説したいと思います。そしてさらに治療後の結果を維持するために重要なメインテナンスの説明と具体例ついても紹介したいと思います。本講演が皆様のお役に少しでも立てると幸いです。
1985年 九州大学歯学部卒業
1987年 九州大学第1補綴学教室文部教官助手
1989年 西原デンタルクリニック勤務
1992年 福岡県福津市(旧宗像郡)にて開業
2007年 九州大学歯学部臨床教授
2011年 鹿児島大学歯学部非常勤講師
根分岐部病変が歯周治療に携わる人間にとっての大きな課題であることは今も昔も変わりは無い。
進行した根分岐部病変を有する歯の生存率が減少することが文献によって示されている。根分岐部は特有の複雑な解剖学的特徴を有し、かつ大きく咬合力の影響を受けることが治療を困難にしている。この根分岐部病変に対しては、非外科治療、切除的処置法、歯周組織再生療法、自然挺出等の治療方法があり、適切な時期に適切な介入を行えば一定の成果が期待される。しかしながら重度に進行した根分岐部病変においては歯周組織再生療法による改善には未だ限界があり決定的な効果を示してはいない。
根分岐部病変に取り組む前に、まずは適切な歯周基本治療が行わなければならない。歯周基本治療によってポケット深さなどの歯周病学的パラメータの改善が得られる。そして重要なことは根分岐部病変を促進している因子の評価と個々の患者における歯周病に対するリスク因子の評価が行うことである。特に歯根破折、パーフォレーション、エンドペリオ病変などとの鑑別は重要である。そして咬合性因子などのリスク因子、促進因子の評価を行った後に外科的介入の是非が検討される。
下顎大臼歯においては再生療法による予知性が比較的高いことが報告されている。根分岐部病変における骨欠損はキーホールタイプの根分岐部病変と骨縁下欠損が進行した結果として骨縁下欠損のなかに根分岐部が含まれる骨欠損タイプに大きく分けられる。それらの違いによってアプローチの仕方、難易度、予知性は異なってくると考えられる。従って先ずはそれぞれのタイプの根分岐部病変の治療方法と予後について解説したい。
一方で上顎大臼歯においてはその解剖学的複雑さから、根分岐部病変に対する歯周組織再生療法の予知性は低いと考えられている。条件が整えば上顎の分岐部の再生療法でもある程度の結果を得るがなかなか難しいのが現状である。従って進行した上顎の大臼歯の根分岐部病変では再生療法のみの対応では限界があると考える。そこで上顎においては切除療法と再生療法のコンビネーションによる治療アプローチが効果的ではないかと考えている。ここではその治療方法とその結果についてについて紹介したい。
またさらに交通した根分岐部病変に対して従来盛んに行われてきた切除的な治療を再評価したい。切除的処置法は現在歯根破折のリスク、根管治療の予後成績の不良等から敬遠される傾向にあるが、自身の長期的な予後観察と文献的考察に基づき切除療法と再生療法のコンビネーション、そして最後の手段としての意図的再植法や自然挺出等の代替治療法についても言及したい。
これらの根分岐部病変への取り組みが皆様のお役に立てれば幸いである。
1985年 九州大学歯学部卒業
1987年 九州大学第1補綴学教室文部教官助手
1989年 西原デンタルクリニック勤務
1992年 福岡県福津市(旧宗像郡)にて開業
2007年 九州大学歯学部臨床教授
2011年 鹿児島大学歯学部非常勤講師
根分岐部病変が歯周治療に携わる人間にとっての大きな課題であることは今も昔も変わりは無い。
進行した根分岐部病変を有する歯の生存率が減少することが文献によって示されている。根分岐部は特有の複雑な解剖学的特徴を有し、かつ大きく咬合力の影響を受けることが治療を困難にしている。この根分岐部病変に対しては、非外科治療、切除的処置法、歯周組織再生療法、自然挺出等の治療方法があり、適切な時期に適切な介入を行えば一定の成果が期待される。しかしながら重度に進行した根分岐部病変においては歯周組織再生療法による改善には未だ限界があり決定的な効果を示してはいない。
根分岐部病変に取り組む前に、まずは適切な歯周基本治療が行わなければならない。歯周基本治療によってポケット深さなどの歯周病学的パラメータの改善が得られる。そして重要なことは根分岐部病変を促進している因子の評価と個々の患者における歯周病に対するリスク因子の評価が行うことである。特に歯根破折、パーフォレーション、エンドペリオ病変などとの鑑別は重要である。そして咬合性因子などのリスク因子、促進因子の評価を行った後に外科的介入の是非が検討される。
下顎大臼歯においては再生療法による予知性が比較的高いことが報告されている。根分岐部病変における骨欠損はキーホールタイプの根分岐部病変と骨縁下欠損が進行した結果として骨縁下欠損のなかに根分岐部が含まれる骨欠損タイプに大きく分けられる。それらの違いによってアプローチの仕方、難易度、予知性は異なってくると考えられる。従って先ずはそれぞれのタイプの根分岐部病変の治療方法と予後について解説したい。
一方で上顎大臼歯においてはその解剖学的複雑さから、根分岐部病変に対する歯周組織再生療法の予知性は低いと考えられている。条件が整えば上顎の分岐部の再生療法でもある程度の結果を得るがなかなか難しいのが現状である。従って進行した上顎の大臼歯の根分岐部病変では再生療法のみの対応では限界があると考える。そこで上顎においては切除療法と再生療法のコンビネーションによる治療アプローチが効果的ではないかと考えている。ここではその治療方法とその結果についてについて紹介したい。
またさらに交通した根分岐部病変に対して従来盛んに行われてきた切除的な治療を再評価したい。切除的処置法は現在歯根破折のリスク、根管治療の予後成績の不良等から敬遠される傾向にあるが、自身の長期的な予後観察と文献的考察に基づき切除療法と再生療法のコンビネーション、そして最後の手段としての意図的再植法や自然挺出等の代替治療法についても言及したい。
これらの根分岐部病変への取り組みが皆様のお役に立てれば幸いである。
1989年 北海道大学歯学部卒業
1996年 よしたに歯科医院開設
2017年 北海道大学大学院卒業
口腔インプラント学会指導医・専門医
北海道大学歯学部非常勤講師
北海道形成歯科研究会副会長
1985年 北海道大学歯学部 卒業
1985年 北海道大学歯学部附属病院第2保存科 医員
1988年 北海道大学歯学部附属病院第2保存科 助手
1998年 北海道大学歯学部附属病院第2保存科 講師
2002年 北海道大学大学院歯学研究科歯科
保存学第2講座 助教授
2019年 北海道大学大学院歯学研究院
歯周・歯内療法学教室 教授