日本臨床歯周病学会

中国四国支部
教育研修会

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令和4年度 第1回 日本臨床歯周病学会中国四国支部教育講演会
こんなに深い再生医療の基礎と臨床
中国四国支部

歯周病患者に対するインプラント治療、そのポイントは?

研修名:
令和4年度第2回日本臨床歯周病学会中国四国支部教育研修会
場所:
愛媛県歯科医師会館 ハイブリッド形式
※現地参加は、先着30名限定です。定員に達しましたらWEB参加のみとなります。
※各演者の抄録は 『詳細をみる+』 をクリックし、ご覧ください。
現地開催人数制限有り(30名)
日時:
2022年10月16日(日) 09:55〜16:30
大会参加申込
会員発表
10:00 ~ 10:15 咬合性外傷を伴う広汎型慢性歯周炎患者に対してクロスアーチスプリントを用いた長期メインテナンス症例 【白石 和美/医療法人 丸尾歯科】
10:15 ~ 10:30 前歯部に結合組織移植術と矯正治療を併用して審美障害を改善した症例 【金子 一平/医療法人 盡己会 カネコデンタルオフィス】
10:30 ~ 10:40 質疑応答
10:40 ~ 10:55 多数歯に骨縁下欠損を有する慢性歯周炎患者に対してエムドゲイン®を用いて歯周組織再生療法を行った症例 【山本 哲史/やまもと歯科】
10:55 ~ 11:10 広汎性慢性歯周炎患者に対して全顎的に歯周組織再生療法を行った症例 【原博章/医療法人 QOLファミール歯科】
11:10 ~ 11:20 質疑応答
教育講演①
11:35 ~ 12:35 インプラント周囲疾患の新分類に基づく診断・治療およびリスクマネジメント 【岩野 義弘/岩野歯科クリニック】
教育講演②
13:20 ~ 14:20 歯周病患者に対するインプラント治療・その注意点について 【小野 晴彦/おの歯科医院】
特別講演
14:35 ~ 16:25 歯周病患者におけるインプラント治療 【長谷川 嘉昭/長谷川歯科医院】 【川崎律子/長谷川歯科医院】
会員発表
座長石井 肖得
座長栗原 孝幸
10:00~10:15
演題

咬合性外傷を伴う広汎型慢性歯周炎患者に対してクロスアーチスプリントを用いた長期メインテナンス症例

白石 和美
医療法人 丸尾歯科
抄録

Ⅰ.報告の背景と目的
著しい骨吸収と咬合性外傷によるフレアーアウトを伴う広汎型慢性歯周炎患者に対して歯周治療を行い,コーヌスクローネによるクロスアーチスプリントで安定した均等咬合を獲得した後,19年間にわたり良好な経過が得られている長期メインテナンス症例について報告する.
Ⅱ.症例の概要
患者:44歳女性 非喫煙者 初診:2002年8月 主訴:上の歯がグラグラして噛みにくい. 現病歴:数年前から動揺が始まり他院にてSRPと暫間固定を行うが3日前より動揺が大きくなり咀嚼が困難になった.全身的既往歴:なし. 検査所見:PCR:67%,BOP陽性率:76.9%,PPD4mm以上:48.1%.全顎的に水平性骨吸収と咬合性外傷によるフレアーアウトを認めた.診断:広汎型慢性歯周炎(ステージⅣ グレードC) 二次性咬合性外傷
Ⅲ.治療計画
1.歯周基本治療 2.再評価3.歯周外科治療 4.再評価 5.口腔機能回復治療 6.再評価 7.メインテナンス(SPT)
Ⅳ.治療経過
歯周基本治療に対し患者の積極的な参加の結果,PCR:19.2%,BOP陽性率:19.3%,PPD4mm以上:32.7%となり,歯肉の炎症は軽減した.再評価の後,歯周外科治療(11~17,22~25,26,27,35,36,45,46)を行い,その後,12,38抜歯,27遠心根の分割抜歯を行った.初診から9ヵ月後の再評価時に,PCRは20%以下に維持していたが,フレアーアウトは改善されなかったためクロスアーチスプリントにて口腔機能回復治療を行った.2004年1月にSPTに移行後,良好な状態が続くが,1年半来院が中断したことにより歯周組織が悪化した.再度SRPを行い,現在SPTを行っている.
Ⅴ.考察
咬合性外傷を伴う慢性歯周炎患者に対してクロスアーチスプリントによる連結固定を行った後,長期的に良好な口腔内を保つためには,歯周基本治療時から歯科衛生士として患者教育と口腔衛生指導に重点を置いてPCRの向上を図ること,患者との信頼関係を確立することが重要であると考える.そして,SPT期間中も患者が来院中断することがないように,いかに患者のモチベーションを維持できるかが鍵となると考える.
Ⅵ.結論
全顎固定性ブリッジはメインテナンス中のトラブルへの対応が難しいと考えたため,コーヌスクローネによる患者可撤式クロスアーチスプリントを選択した結果,19年という長期にわたり良好な経過を得ることができたと考える.

10:15~10:30
演題

前歯部に結合組織移植術と矯正治療を併用して審美障害を改善した症例

金子 一平
医療法人 盡己会 カネコデンタルオフィス
抄録

Ⅰ.報告の背景と目的
審美領域における治療において,患者の満足を得るには歯冠修復と同様に軟組織のマネージメントが必要である.今回,前歯部に矯正治療,結合組織移植術を併用し,軟組織のマネージメントを行い,審美障害が改善した症例を報告する.
Ⅱ.症例の概要(初診, 診査, 検査所見等)
患者:35歳 女性 初診:2018年10月 主訴:前歯を綺麗にしたい
全身的既往歴:特記事項なし,非喫煙者.現病歴:前医にて口蓋側転位のあった12を抜歯してプロビジョナルレストレーションブリッジが装着されていた.前歯部の治療を希望して当院を受診した.口腔内所見:下顎前歯部に叢生を認めた.上顎に関しては歯頚線の不揃い,欠損部歯槽堤の陥凹を認めた.診断:11歯肉退縮, 12歯槽堤陥凹(Seibertの分類 Class I)
Ⅲ.治療計画
1.歯周基本治療2.再評価3.部分矯正,結合組織移植術4.再評価5.口腔機能回復治療6.再評価7.SPT
Ⅳ.治療経過
上顎においては歯頚線の不揃いおよび11の捻転の改善のために部分矯正を行った.下顎においては42の抜歯を行い叢生を改善した.また,12部位の歯槽堤が陥凹している部分はSeibertの欠損部顎堤の分類でClass Iと診断し,結合組織移植による歯槽堤増大術(パウチ法)を行った.プロビジョナルレストレーションを用いて基底面を圧接してオベイト形態を付与し,基底面形態を最終補綴装置に反映した.
Ⅴ.考察
PES (Pink Estetic Score)により軟組織を評価することは,近遠心の歯間乳頭の高さの不足や歯肉のボリューム不足が明確になり,審美障害の改善に有効であった. また, プロビジョナルレストレーションの形態を最終補綴装置に反映することにより良好な結果が得られたと考える.
Ⅵ.結論
前歯部の歯頚線を揃える部分矯正治療および12 抜歯後に生じた歯肉陥凹部に対する歯槽堤増大術を行うことにより,機能面と審美面の双方を改善することができた.

10:30~10:40
演題

質疑応答

10:40~10:55
演題

多数歯に骨縁下欠損を有する慢性歯周炎患者に対してエムドゲイン®を用いて歯周組織再生療法を行った症例

山本 哲史
やまもと歯科
抄録

Ⅰ.報告の背景と目的
多数歯において骨縁下欠損を有する歯周炎患者に対して,炎症と力のコントロールを中心とした歯周基本治療を行った後に,歯周組織再生療法を含めた歯周外科治療を行い,良好な結果が得られた症例について報告する.
Ⅱ.症例の概要(初診、診査、検査所見等)
患者:64歳女性 初診:2017年10月 主訴:下の奥歯が痛い
全身的既往歴:特記事項なし,非喫煙者 現病歴:他院にて37,47が保存不可能のため抜歯が必要との説明を受けた.歯周病の治療を希望して当院を受診した.
口腔内所見:局所に歯石の沈着,歯肉の発赤,腫脹を認め,左右側方運動時に臼歯部に咬合干渉を認めた.検査所見:BOP陽性率は46.4%,PPD4mm以上の部位は21.4%,PCR26.0%であった.エックス線所見:17,27,37,46,47に垂直性骨吸収を認めた.診断:広汎型慢性歯周炎(ステージⅢグレードC),二次性咬合性外傷
Ⅲ.治療計画
1.歯周基本治療 2.再評価 3.歯周外科治療 4.再評価 5.口腔機能回復治療(ナイトガードの作製)6.再評価 7.SPT
Ⅳ.治療経過
上記の歯周基本治療後に,17,37,47の垂直性骨吸収を伴う深い歯周ポケット残存部に対してエムドゲイン®(以下EMDと表記)と骨補填材を併用した歯周組織再生療法を行った.2020年4月の再評価において,BOP陽性率は2.3%,PPD4mm以上の部位は4.2%と改善した.再評価時のエックス線所見では,歯槽骨の不透過性の亢進を認めたため歯周組織は安定していると判断しSPTへ移行した.
Ⅴ.考察
本患者の歯周炎増悪因子として咬合性外傷が関与していたため,歯周基本治療において咬合調整や暫間被覆冠による歯の固定を行い咬合性外傷の軽減を図った.その後歯周外科へ移行した.口腔機能回復治療において,15,26,27,36,37,46,47に補綴装置による外側性固定を行ったことにより,初診から5年経過した現在も良好な経過を得ていると考える.
Ⅵ.結論
本患者に対して,二次性咬合性外傷の問題を排除した後,多数歯にわたる骨縁下欠損に対してEMDと骨補填材を併用した歯周組織再生療法を行い,良好な結果を得ることができた.今後も外傷力とセルフケアに注意しつつ,SPTを行っていく必要があると考える.

10:55~11:10
演題

広汎性慢性歯周炎患者に対して全顎的に歯周組織再生療法を行った症例

原博章
医療法人 QOLファミール歯科
抄録

Ⅰ.緒言
重度歯周炎患者では,歯周基本治療後に垂直性骨吸収を伴う深い部位の歯周ポケットに対して,歯周外科治療が必要となることが多い.今回,歯周基本治療後に歯周組織再生療法を行い,良好な結果を得た症例を報告する.
Ⅱ.症例の概要
患者:44歳,女性,非喫煙者
初診:2014年3月
主訴:下の前歯がぐらぐらしている
全身的既往歴:特記事項なし
現病歴:2006年2月に当院を受診したが,主訴部位のみの治療で終了していた.その後,下顎前歯の動揺が大きくなったため,再び当院を受診した.
診査所見:PCR:68.8%,PPD 4 mm 以上:84.5%,BOP:100%,PISA:3859.5mm2,すべての歯においてⅠ~Ⅲ度の動揺があり,エックス線写真では,21・27・41・43・46に重度,16・14・13・12・11・22・23・37・33・32・31・42・47に中等度の骨吸収を認めた.
診断:広汎型慢性歯周炎(ステージⅢ グレードC)
Ⅲ.治療計画
① 主訴の改善(32・31・41・42・43暫間固定),②歯周基本治療(患者教育,OHI,SC・SRP,21抜歯)
③再評価,④歯周外科治療,⑤再評価,⑥SPT
Ⅳ.治療経過
歯周基本治療において徹底したTBIとSC・SRPを行った.患者は今回,歯を喪失したくないという危機感を持って治療に臨んだためPCRが向上し,口腔内環境は大きく改善した.BOP:11.7%,PISA:162.3mm2と歯周組織が安定したので,患者の強い希望があり歯周外科治療は行わずにSPTに移行した. SPTを継続していたが,歯周病進行による歯の喪失を予防するためにも垂直性骨吸収を伴う深い歯周ポケットが残存している部位に,再度歯周外科治療を提案し同意を得たため,全顎的に歯周組織再生療法を行った.歯周外科治療後の再評価の結果,PPD, BOP, PCR, PISA等は低値を示したため,再度SPTへ移行した.
Ⅴ.考察およびまとめ
本症例では垂直性骨吸収を伴う深い歯周ポケットが残存している部位に対して,FGF-2を使用した歯周組織再生療法を行い歯周組織は安定している.今後は歯の長期保存のためにSPTでfollow-upすることが重要であると考える.

11:10~11:20
演題

質疑応答

教育講演①
座長西岡 信治
座長山脇 将貴
11:35~12:35
演題

インプラント周囲疾患の新分類に基づく診断・治療およびリスクマネジメント

岩野 義弘
岩野歯科クリニック
略歴

1999年 新潟大学歯学部卒業、日本大学歯学部歯周病学講座入局
2012年 博士(歯学)取得、岩野歯科クリニック開業
日本歯周病学会 指導医 歯周病専門医
日本口腔インプラント学会 代議員 指導医 専門医
日本臨床歯周病学会 認定医

抄録

近年インプラント治療は,材料学的進歩と臨床術式の向上により,その適応症は大きく拡大してきました.歯周炎による歯の喪失は,咬合崩壊,顎堤の吸収や角化粘膜の委縮,審美障害等,種々の問題を引き起こします.適切なインプラント治療がもたらす強固なバーティカルストップは,咬合の安定と残存歯の保護を可能にするため,顎堤や軟組織にもたらされた種々の困難を克服したうえでも,欠損補綴の重要な手段の一つとして,臨床の場で広く応用されています.
歯周病患者においてインプラント治療を選択する場合,適切な検査診断,治療計画の立案が肝要となります.無論インプラント治療の有無に限らず,治療計画立案にあたり最も重要視されるべき点は,リスクマネジメントに基づく良好な長期的予後でしょう.そして特にインプラント治療を計画する場合には,インプラント周囲疾患,なかでも未だ確実な治療法の存在しないインプラント周囲炎の発症に留意しなければなりません.
歯周病は,Porphyromonas gingivalis,Tannerella forsythia,Treponema denticolaに代表される歯周病原細菌の感染による慢性炎症性疾患であり,歯周ポケット内,舌あるいは粘膜に定着,増殖した細菌は,唾液を介してインプラント周囲にも到達します.発症の原因は未だ明らかではありませんが,歯周炎の既往や進行性の歯周炎はインプラント周囲炎発症のリスクファクターであることが,多くの疫学研究により示されています。インプラント周囲炎は最新のメタ分析の結果,患者レベルで18.5%,インプラントレベルで12.8%に発症すると報告されており,歯周病患者ではその確率が高まることも明らかとされています.そのため歯周病患者に対してインプラント治療を行う場合、将来的な感染のリスクを考慮したうえでの介入が必要となります.
2017年,シカゴで行われましたアメリカ歯周病学会・ヨーロッパ歯周病連盟共催によるワールドワークショップにおいて,歯周病の新分類について議論され,2018年,レビューおよびコンセンサスレポートとしてJournal of Periodontology ならびにJournal of Clinical Periodontology に同時掲載されましたが,そこでは併せて,インプラント周囲疾患についての定義づけが初めてなされました.特に重要なのが,健康なインプラント周囲組織が明確に定義されたこと,そして感染に伴う炎症性疾患であるインプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎,それ以外の原因によって生ずるインプラント周囲硬・軟組織欠損とをそれぞれ個別に定義づけしていることです.なかでもインプラント周囲炎は,インプラント上部補綴装置装着1年後を基準として,プロービング時の出血および/または排膿を伴うインプラント周囲軟組織における視診での炎症性変化を認め,プロービングポケット深さが増加し,進行性の骨吸収が認められることと定義されており,まずはインプラント上部補綴装置装着1年後にきちんと健康なインプラント周囲組織であるとの評価を行ったうえで,メインテナンス中にもプロービングを含めた検査にて変化をとらえていく必要があります.また最近は他院で治療されたインプラントのトラブルも増えてきており,インプラント周囲炎に罹患した患者さんが自院へ来院される機会も多くなった来ています.その場合にはベースライン時のデータが存在しないため,インプラント周囲炎の定義は,エックス線的な3mm以上の骨吸収もしくはそれとともに大量の出血を伴う6mm以上のプロービングポケット深さが存在すること,となります.そしてこれらの新しい定義を基に的確に診断を行い,早期に最もふさわしい治療を行う必要があると考えます.
そこで本講演では,文献の披歴と症例の供覧を行い,インプラント周囲疾患の新分類を基に,インプラント周囲粘膜炎,インプラント周囲炎についての診断,治療の実際を紹介するとともに,リスクマネジメントについて皆様と一緒に考えてみたいと思います.

教育講演②
座長西原 茂昭
座長清水 賢
13:20~14:20
演題

歯周病患者に対するインプラント治療・その注意点について

小野 晴彦
おの歯科医院
略歴

1994年 広島大学歯学部卒業
1994年 広島大学付属病院勤務 (第一口腔外科所属)医員
1997年 横山歯科医院 勤務
2000年 おの歯科医院勤務〜現在に至る
日本臨床歯周病学会 認定医
アメリカ歯周病学会
元東京医科歯科大学臨床講師、元東京歯科大学臨床講師
JIADS理事  

抄録

 近年, 歯を失った部位へのインプラント補綴は, 欠損補綴の有力なオプションとして益々認知されてきている. 一方、インプラント治療に伴う合併症も度々メディアに取り上げられるなど問題となっており, 中でもインプラント周囲炎は最多の合併症とされている. 歯周病への罹患がインプラント周囲炎のリスクファクターとなっていることは周知の事実であり, 歯周病患者に対するインプラント治療には注意すべきポイントがいくつかある. 今回は特に治療後インプラント周囲炎を引き起こさないという観点から, 治療計画, 埋入手術, 補綴時などそれぞれの時期において, 臨床例を提示し考察してみたい.
 先ず治療計画の段階では, 残存歯の歯周炎をどのようにコントロールしていくか, 保存すべき歯, 保存が難しいと考えられる歯, 治療してみないとなんとも言えない歯を分けて, 長期的な観点で計画を立案する. その際に考慮すべき主なものとして, 患者の年齢, 性格, 歯周病の分類におけるGrade等が挙げられる. 理想的にはインプラントを埋入する時点で全ての歯のデブライドメントが終わっていることが望ましいが, 治療のタイミングは必ずしもそうはならないことも多い. 少なくとも歯周基本治療が終わり, 患者のセルフケアの向上が図られ, 軟組織の炎症がコントロールされている時点を目標とする.
 埋入手術の段階では, 3次元的な埋入位置のコントロールが最も重要である. 近遠心, 頬舌的には補綴主導の位置をとり, 埋入深度は骨縁, もしくは軟組織が3mm以下の場合はその分深めの埋入位置とする. さらに周囲に最低2mmの骨幅を確保するため, 骨量の不足した部分ではG B R等で骨の増大を図る.
 二次手術, 補綴処置においては, インプラント周囲に角化粘膜を確保し, 清掃性の高いエマージェンス・プロファイル, 補綴形態を目指す.
動的治療期間において, 以上のような項目を達成し, その上で定期的なメインテナンスに確実に応じてもらうよう, 患者のモチベーション維持に努める. メインテナンス期には, インプラント周囲粘膜炎の状態を見逃さず, 早めにセルフケアの徹底と非外科的治療で対応することが重要と考える.
周病の新分類の発表された2017年のワークショップにおいても, インプラント周囲炎のリスクファクターとして, 歯周病の既往, プラークコントロールの不良, メインテナンス欠如との相関が強く述べられている. このことからも患者のセルフケア向上を含めた歯周基本治療を徹底すること, 定期的なメインテナンスへの理解を得て来院していただくことが, インプラントを長期的に良い状態で維持する上でも重要であると考えている.

特別講演
座長鈴川 雅彦
座長小倉 嘉弘
14:35~16:25
演題

歯周病患者におけるインプラント治療

長谷川 嘉昭
長谷川歯科医院
略歴

日本大学歯学部卒業
日本歯周病学会専門医 
日本臨床歯周病学会指導医
日本臨床歯周病学会歯周インプラント指導医
東京医科歯科大学非常勤講師

川崎律子
長谷川歯科医院
略歴

長谷川歯科医院勤務
歯友会歯科技術専門学校(現 明倫短期大学)卒
日本歯周病学会認定歯科衛生士
日本臨床歯周病学会指導歯科衛生士
日本顎咬合学会指導歯科衛生士
日本口腔インプラント学会認定インプラント専門歯科衛生士

抄録

 戦術中心のインプラント治療は、今や究極の域に到達している感があるが本来歯周病患者の重要な診断に関しては、議論される機会があまりにも少ない。戦略診断とは、すなわち臨床検査値から導かれるものであり、各学会が推奨するステージ・グレード診断のことではない。病因検査から病態を把握し、インプラント治療を施術する際の診断基準を導くことを意味するものである。歯周基本治療はすべての治療において優先される医療行為であるが、従来の病態検査から病因検査を追加することで、その効果を明視化できる利点を活用し、インプラント治療が必要な歯周病患者に有益な情報提供が可能となる。
具体的には炎症徴候に高感度CRP、感染情報にリアルタイムPCRやシーケンシング検査を取り入れることで、インプラント埋入時期やSPT時における口腔内環境を把握する一助になると考えている。またCBCT等のデジタルデータを活用したガイドサージェリーは、残存骨量が減少した歯周病患者には特に有効なツールにもなるであろう。
いずれにせよ、歯周病患者における歯周病原細菌叢の改善なくしてインプラント治療の成功はあり得ない。そのための臨床検査の活用を注意喚起していきたいと常々思っている。
 いまだインプラント周囲炎に罹患する患者の共通項を、私の稚拙な臨床では掌握できず無念ではあるが、概ね良好な経過を辿っている症例から、本講演ではインプラント治療を行う前の自院の歯周診断からの実際の取り組みを歯科医・歯科衛生士に分けて説明し歯周インプラント治療のあり方を詳細に解説してみたい。