日本臨床歯周病学会

中国四国支部
教育研修会

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令和5年度 第1回 日本臨床歯周病学会中国四国支部教育研修会
『やっぱり必要 歯周病患者に対する包括的治療』
中国四国支部

本会会員 歯科衛生士向け ハンズオン実習コース

研修名:
中国四国支部 CEC ハンズオン セミナー
場所:
満席となりました。ありがとうございました。(ハンズオンのため現地参加のみです)

歯科衛生士がステップアップ可能なハンズオンを、1日コースの少人数制で開催いたします。歯周精密検査、シャープニング、SRPを中心とした内容になります。
【現地開催のみ】 対象者は、本会会員歯科衛生士のみで、申し込みは、先着順15名といたします。
【開催場所】 広島大学歯学部 デンタルスキルスラボ1
【顎模型購入希望の方】 参加登録が完了した方に、開催1カ月前を目安に購入方法をご案内いたします。実習当日に必要な持ち物も、後日お知らせいたします。
【会費】正会員 25,000円 準会員A 29,000円 準会員B 27,000円 (お弁当代込み)
現地開催人数制限有り(16名)
日時:
2023年7月23日(日) 10:00〜16:20
大会参加申込
ハンズオン
10:00 ~ 16:20 【ハンズオン】 歯周精密検査、シャープニング、SRPを中心に 【山﨑瑞穂/日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士】 【石原彰子/日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士】 【重成佳江/日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士】
ハンズオン
10:00~16:20
演題

【ハンズオン】 歯周精密検査、シャープニング、SRPを中心に

山﨑瑞穂
日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士
略歴

日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士

石原彰子
日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士
略歴

日本臨床歯周病学会認定医歯科衛生士

重成佳江
日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士
略歴

日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士

中国四国支部

やっぱり必要 歯周病患者に対する包括的治療

研修名:
令和5年度 中国四国支部研修会
場所:
岡山オルガホール ハイブリッド形式
※現地参加は、先着30名限定です。定員に達しましたらWEB参加のみとなります。
※各演者の抄録は 『詳細をみる+』 をクリックし、ご覧ください。
※オンデマンド配信は4月23日~5月6日を予定しております。(ただし、綿引淳一先生のオンデマンド配信はございませんので、予めご了承ください。)
現地開催人数制限有り(30名)
日時:
2023年4月2日(日) 10:00〜16:40
大会は終了しました
会員発表
10:05 ~ 10:20 歯肉退縮に対するVISTAテクニックの臨床応用 【奥村昌泰/歯科イーエムデンタルクリニック】
10:20 ~ 10:35 歯列不正を有する広汎型慢性歯周炎(ステージⅢ グレードB)患者に対し、インスツルメンテーションに配慮して歯周治療を行った一症例 【高山景子/広島すとう歯科・歯周病クリニック】
10:35 ~ 10:50 根分岐部病変を伴う広汎型慢性歯周炎(ステージⅢ、グレードB)患者に対して歯周組織再生療法及び永久固定を用いて治療を行なった一症例 【周藤 巧/広島すとう歯科・歯周病クリニック】
10:50 ~ 11:05 質疑応答 【奥村昌泰・高山景子・周藤巧/】
特別講演
11:15 ~ 12:15 歯科医師・衛生士チームで取り組む包括的治療~Full mouth disinfectionを軸として~ 【清水 賢/医療法人HAKARA アルファ歯科クリニック】
特別講演
13:15 ~ 14:15 歯科衛生士の視点から考える歯周-矯正治療の注意点 【土岡弘明/土岡歯科医院】 【佐藤未奈子/土岡歯科医院】
特別講演
14:25 ~ 15:25 矯正学的視点からみた歯周再生療法の新たな可能性と今後の課題 【綿引淳一/東京日本橋AQUA歯科・矯正歯科 包括CLINIC】
特別講演
15:35 ~ 16:35 歯周病患者における咬合を考える 【佐々木 猛/医療法人貴和会】
会員発表
座長小出 康史
座長上中 茂晴
10:05~10:20
演題

歯肉退縮に対するVISTAテクニックの臨床応用

奥村昌泰
歯科イーエムデンタルクリニック
抄録

Ⅰ.報告の背景と目的
歯肉退縮の原因として,薄い歯肉,小帯の高位付着などの解剖学的要因や強いブラッシング圧,歯周炎による付着の喪失などの後天的要因が挙げられる.これらに起因した歯肉退縮に対する根面被覆術には,さまざまな術式がある.今回,Vestibular Incision Subperiosteal Tunnel Access(VISTA) Techniqueを用いて根面被覆を行った2症例について報告する.

Ⅱ.症例の概要(初診、診査、検査所見等)
症例1 患者:67歳,男性,非喫煙者.初診:2019年11月.主訴:右上前歯の歯茎が痩せて歯がしみる.全身既往歴:特記事項なし.口腔内所見: 11から13 部にかけて3mm~4mmの歯肉退縮を認めた.隣接面の付着は喪失を伴うが,口腔前庭は深く,歯肉退縮は歯肉頬移行部を超えていない.Cairoの分類 RT2と診断した.
症例2 患者:39歳,女性,非喫煙者.初診:2021年9月.主訴:右上奥歯の歯茎が下がって見た目が気になる.全身既往歴:特記事項なし.口腔内所見:14 部に3mmの歯肉退縮を認めた. 隣接面の付着は存在し,口腔前庭は深く,歯肉退縮は歯肉頬移行部を超えていない. Cairoの分類 RT1と診断した.
Ⅲ. 得られた知見
2症例ともに治療部位への血液供給を阻害する可能性が低い口腔前庭部の縦方向の切開であったため,歯肉に対する侵襲が最小限であり,術後の治癒が早く経過は良好であった.

Ⅳ. 考察
VISTAテクニックは,歯肉への侵襲が少なく,歯肉の歯冠側移動が比較的容易な術式であるため,歯肉のフェノタイプの改善に有効であると考える.

Ⅴ. 結論
VISTAテクニックは,前庭切開部から骨膜下にトンネル形成し,適切なテンションで移植片の設置および固定が行えるため,確実性のある根面被覆術の一つであると考える.

10:20~10:35
演題

歯列不正を有する広汎型慢性歯周炎(ステージⅢ グレードB)患者に対し、インスツルメンテーションに配慮して歯周治療を行った一症例

高山景子
広島すとう歯科・歯周病クリニック
抄録

抄録 Ⅰ.報告の背景と目的
歯周基本治療において歯周組織に侵襲の少ないSRPを行うためには歯の解剖学的形態を考慮するとともに,より慎重かつ繊細なインスツルメンテーションが求められる.今回,歯列不正を有する広汎型慢性歯周炎患者に対して,インスツルメンテーションに配慮した歯周治療を行うことによって,良好な結果が得られた症例を報告する.
Ⅱ.症例の概要(初診,診査,検査所見等)
初診:2013年7月,45歳女性 主訴:全顎的な歯と歯肉の痛み
現病歴:半年前より自発痛.他院にて消毒を繰り返されたが改善が認められず当院を受診.クレンチングの自覚あり.全身的既往歴:なし.喫煙歴:あり(約10年前に禁煙)
診断:広汎型慢性歯周炎ステージⅢグレードB.歯周組織所見:PCR 33%,BOP 43.5%,4㎜以上PPD 15.5%.X線所見:#11,12,21,22 #26に垂直的骨吸収を認めた.
Ⅲ.治療計画
1.歯周基本治療 2.再評価 3.#26歯周組織再生療法 4.再評価 5.口腔機能回復治療 6.ナイトガード作製 7.再評価 8.SPT
Ⅳ.治療経過
歯列不正に伴うプラークリテンションファクターの増加とくいしばりによる咬合性外傷が歯肉炎症を助長する増悪因子であることを説明し,矯正治療を提案したが患者は希望せず.そこで不良補綴物の再製を行い,咬合性外傷に関してはナイトガードで対応することとした.再評価後,#26に歯周組織再生療法EMD応用.およびトライセクションを行い,口腔機能回復治療,ナイトガードの作製を行った.再評価時にBOPは16.1%となり歯周組織の改善を認めたためSPTへ移行した.
Ⅴ.考察
特に歯列不正を有する患者にSRPを行う際には,より複雑な操作と歯の解剖学的形態を理解した上で的確なインスツルメンテーションを行うことができなければ歯肉退縮,知覚過敏を生じる可能性があると考える.
Ⅵ.結論
的確なインスツルメンテーションは,歯肉退縮や知覚過敏などの問題を低減するのみならず,その後の歯周外科治療の成否やSPTの効果に影響するため,歯周基本治療において重要であると考える.

10:35~10:50
演題

根分岐部病変を伴う広汎型慢性歯周炎(ステージⅢ、グレードB)患者に対して歯周組織再生療法及び永久固定を用いて治療を行なった一症例

周藤 巧
広島すとう歯科・歯周病クリニック
抄録

Ⅰ.報告の背景と目的
水平性骨吸収に対する歯槽骨再生は難しく,臨床的歯冠歯根比を改善できない場合が多いため,咬合性外傷のリスクをいかに排除するかが歯周病治療の課題の1つであると考える.そこで今回,根分岐部病変を伴う広汎型慢性歯周炎患者に対して,歯周組織再生療法の前後において咬合性外傷のリスク管理として動揺歯の固定を行った結果,良好な経過が得られている症例について報告する.
Ⅱ.症例の概要
初診:2016年6月.57歳女性.
主訴:歯周病で抜歯と言われたので治療して欲しい.
現病歴:紹介元の歯科を月1回定期受診.2016年5月重度歯周炎で47抜歯.
歯の保存を強く希望し当院を受診.
既往歴,喫煙歴:なし
診断:広汎型慢性歯周炎ステージⅢグレードB 二次性咬合性外傷
歯周組織所見:主に臼歯部に歯肉腫脹を認めた.
PCR29.5%,BOP37.5%,4㎜以上PPD33.3%.16,23,26,27動揺度Ⅱ度.
X線所見:全顎的歯根1/3~1/2の水平性吸収,16,23,25,26,33,36垂直性骨吸収を認めた.
インプラント治療希望なし.
Ⅲ.治療計画
1.歯周基本治療2.再評価3.歯周外科治療4.再評価5.口腔機能回復治療6.再評価7.SPT
Ⅳ.治療経過
歯周基本治療,暫間固定(13-17,24-27,35-37),36遠心根ヘミセクション,48抜歯.再評価.13-15,17,24,34-37,44-46歯肉剥離搔爬術,16,23,25-27,33,歯周組織再生療法(EMD,ABG,DFDBA).再評価.14-17, 23-27陶材焼付鋳造連結冠,22陶材焼付鋳造冠,35-37陶材焼付鋳造冠ブリッジ,再評価,SPT.44-46ジルコニア連結冠(旧補綴物脱離のため再製).
Ⅴ.考察
上顎臼歯部はアタッチメントロスが大きく,16,26は根分岐部病変も存在し予後不良が予想された.良好なプラークコントロールの維持及び歯周外科治療前後の動揺歯の強固な固定により力のコントロールを行ったことが歯周組織安定に繋がったと考える.
Ⅵ.結論
根分岐部病変を伴う重度歯周炎患者に対して,モチベーションの向上と良好なプラークコントロールの維持,再生療法における適切な術式,材料の選択,さらに永久固定による咬合のコントロールが達成できれば,歯周組織の維持,安定が得られる可能性が示唆された.

10:50~11:05
演題

質疑応答

奥村昌泰・高山景子・周藤巧
特別講演
座長高井康博
座長藪 健一郎
11:15~12:15
演題

歯科医師・衛生士チームで取り組む包括的治療~Full mouth disinfectionを軸として~

清水 賢
医療法人HAKARA アルファ歯科クリニック
略歴

2001年 広島大学歯学部卒業
日本臨床歯周病学会 認定医

抄録

歯周病は、Porphyromonas gingivalis などのグラム陰性嫌気性桿菌をはじめとする歯周病原細菌の感染に起因する疾患である。その予防・治療の基本がプラークコントロールであることは周知の事実である。その中でも機械的プラークコントロールが中心となるが、補助的なアプローチとして、抗菌薬などを用いた化学的プラークコントロールも日常臨床に根付いた治療法である。例えば、15員環マクロライド系抗菌薬であるアジスロマイシンを用いたFull mouth disinfection(FMD)は、歯周病患者の深い歯周ポケットから検出される菌群の中で病原性が高いred complexの減少、ひいては口腔内細菌叢の改善を目的として行われている。アジスロマイシン投薬に加えて、フルマウススケーリング・ルートプレーニングを行うことで、6mm以上の深い歯周ポケットのポケットデプス、クリニカルアタッチメントロスが優位に減少することが報告されている。FMDを成功に導くためには、歯科医師はもとより歯科衛生士の果たす役割はとても大きい。FMDによって外科治療を必要とする部位が減少し、患者負担を軽減することができるが、歯周組織再生療法などの歯周外科治療が必要となる場合もある。その後、インプラント治療、歯周―矯正治療などの口腔機能回復治療を行い、メインテナンス、サポーティブペリオドンタルセラピーへと移行する。このように、重度歯周病の治療においては、細菌感染症であるがゆえに、病因の除去を軸として歯科医師・衛生士チーム一丸となって包括的に治療に取り組むことが求められる。今回の講演では、FMDを軸とした包括的治療の実際を、症例を通じて供覧いただき、その治療法の有用性を述べたいと考える。

特別講演
座長和田 圭祐
座長岡野 孝
13:15~14:15
演題

歯科衛生士の視点から考える歯周-矯正治療の注意点

土岡弘明
土岡歯科医院
略歴

1997年 東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業
2005年 土岡歯科医院 開設
日本臨床歯周病学会指導医、日本歯周病学会指導医、東京医科歯科大学臨床教授

佐藤未奈子
土岡歯科医院
略歴

2013年 東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科卒業、土岡歯科医院 勤務
日本臨床歯周病学会 認定歯科衛生士、日本歯周病学会 認定歯科衛生士

抄録

中等度から重度歯周炎患者における治療では、歯の病的移動を生じていることが多いため、歯周治療のみならず、不正咬合や審美的な問題を解決するための包括的歯周治療の実践が必要となる場合があります。包括的歯周治療を成功させるためには、まず歯周基本治療(モチベーション、口腔清掃指導、スケーリング・ルートプレーニングなど)が大切となります。それを担う歯科衛生士の役割はとても重要であり、治療成功の鍵を握ると思われます。歯周基本治療後に残存した問題に対し、歯周外科治療を行うことは一般的ですが、不正咬合や審美的な問題を解決するために、歯周-矯正治療や咬合機能回復治療を希望する患者も増加しており、治療期間が長期に渡ります。そのため担当歯科衛生士は、歯周基本治療中に患者の既往や性格を把握し、歯周基本治療中からメインテナンスに至るまで、患者に寄り添い、歯科医師と共にモチベーションの維持を図ることも必須となります。歯科衛生士、歯科医師間のコミュニケーションを初診時の段階から密に取り、チームアプローチで治療を進めることが求められるのです。
今回、ご参加の歯科衛生士とともに、歯の病的移動について再考し、それを解決する歯周-矯正治療を行う際に注意すべき点を当医院で取り組んだ症例を交えながら、考えていきましょう。

特別講演
座長小笠原一行
座長辻 光弘
14:25~15:25
演題

矯正学的視点からみた歯周再生療法の新たな可能性と今後の課題

綿引淳一
東京日本橋AQUA歯科・矯正歯科 包括CLINIC
略歴

1999年  昭和大学歯学部卒業
2004年  昭和大学歯学部歯科矯正学 大学院卒業  
2006年〜 AQUA 日本橋 DENTAL CLINIC(現:東京日本橋AQUA歯科・矯正歯科 包括CLINIC) 開業
2008年〜 医療法人社団Teeth Alignment 理事長 就任
2008年〜2012年 理化学研究所脳科学総合センター 客員研究員
2009年〜2011年 ニューヨーク大学インプラント科CDE修了
2011年〜2017年 アサヒグループHD 和光堂 商品開発コンサルタント
2021年〜 包括的矯正歯科研究会を発足
昭和大学歯学部歯科矯正学教室 兼任講師
日本矯正歯科学会認定医

抄録

近年,歯周再生治療の成績は著しく向上し積極的に歯を保存する事への期待が高まって来ている. そこで, 天然歯を活かし機能的・審美的に大幅な改善が期待できる矯正治療にも大きな注目が集まっている.
一方, 矯正歯科界においてはAngle E.HとCalvin Caseによって引き起こされた“抜歯Vs非抜歯論争(1911年)以来, 歯槽骨基底部を超えた矯正治療の是非や矯正後の後戻りに大きく関与する犬歯幅径を維持すべきかどうかの議論に関しては矯正後の歯肉退縮の出現と併せては未だ解決されておらず大きな課題となっている.
また,矯正治療と歯周再生治療はそれぞれどのタイミングで行うべきか? 根管治療を行った歯はどのタイミングで矯正治療を開始すべきか? インプラント治療を行うタイミングは?つまり、それぞれの治療の特性や治癒のメカニズムを十分に理解する事が不可欠である. 無計画な包括的治療を行った場合には,逆にそれぞれの治療結果を著しく低下させてしまうリスクも現実に起こり得る.
しかし、矯正治療と歯周治療・歯内療法・補綴治療などをどのように組み合わせていくことが最適であるかに関しては,世界的にコンセンサスが得られていないばかりか学術論文すら十分に報告されていないのが現状である.
そこで,本講演では歯周矯正のエビデンスを整理するとともに演者が発表した矯正治療に最適化された歯周再生治療(O-PRO法)や近年筆者が提唱するペリオルソクリニカルガイドラインを提案するとともに歯周矯正の可能性と今後の課題にも関しても言及したい.

特別講演
座長岩田光弘
座長大江 丙午
15:35~16:35
演題

歯周病患者における咬合を考える

佐々木 猛
医療法人貴和会
略歴

1995年 大阪大学歯学部卒業
同年  (医)貴和会歯科診療所入所
2008年 (医)貴和会理事 新大阪診療所院長
2019年 (医)貴和会理事長
日本臨床歯周病学会 指導医・歯周インプラント指導医

抄録

歯周治療を成功に導き、治療結果を長期に渡って安定させるために炎症と力のコントロールが不可欠であることは周知の事実である。炎症については、非外科治療や外科治療を適用して、歯周ポケットや骨欠損を改善したり、十分な付着歯肉を獲得して清掃しやすい歯周組織を構築することにより、制御することが可能であるが、力のコントロールについては、一定のプロトコールはあるものの、患者一人ひとりに調和した咬合状態を適切に付与する具体的な方法はほとんど報告されていない。2002年の日本補綴歯科学会の咬合異常の診療ガイドラインでは、安定した咬合を得るための3つの基準として、①咬頭嵌合位が顆頭安定位にあること、②咬頭嵌合位への閉口時に早期接触がなく、安定した咬合接触があること、③偏心滑走運動時に咬頭干渉がなく、適正なガイドがあることが挙げられているが、歯周病により支持組織を失った歯牙に対しては、より特別で厳密な対応が求められることが多い。また、歯周病患者において、欠損補綴のためにインプラント治療を適用する場合、動揺する残存天然歯と被圧変位量がほとんどないインプラントを共存させ、長期的に協働させることは容易ではない。天然歯の歯周治療を徹底し、炎症の改善を図った後に、残存する動揺度をコントロールするために、必要に応じて矯正治療により歯を整直させ、補綴装置を用いた連結固定を行って咀嚼機能の回復をめざす。この時、天然歯群の動揺度を生理的範囲に制御して、天然歯群とインプラントの間に被圧変位量の差がほとんど生じないように補綴設計を立案し、天然歯とインプラントが相互的に補完し合う咬合状態を確立することが重要である。インプラントを効果的に用いることにより、天然歯支台の補綴範囲を小さくし、天然歯の削合を減らす、または、避けることができるが、歯周病患者においては、インプラントよりも連結固定を兼ねたブリッジ修復の方が咬合面形態を適切に改変できることも相まって有効であることも多い。支持組織が少ない歯にとっては、側方力は大きな負担になり、動揺の増加や咬合の不安定化につながる恐れがあるため、補綴修復を行う際には、①臼歯部の固有咬合面を頬舌的に狭小化する、②咬合接触点を咬合面の中心付近に拮抗的に付与することにより、咬合力を歯軸方向に向ける、③前歯、犬歯誘導の角度を弱める、④臼歯部干渉が生じないようにスピーの湾曲を緩く、臼歯部咬頭傾斜角を小さく設定する、など、咬合面形態を改変して、側方力の軽減に努めることが重要である。本講演では、患者の顎運動を反映した咬合面形態の製作法について紹介しながら、患者一人ひとりに真に調和した咬合面形態の付与について考察したい。

中国四国支部

歯周病患者に対するインプラント治療、そのポイントは?

研修名:
令和4年度第2回日本臨床歯周病学会中国四国支部教育研修会
場所:
愛媛県歯科医師会館 ハイブリッド形式
※現地参加は、先着30名限定です。定員に達しましたらWEB参加のみとなります。
※各演者の抄録は 『詳細をみる+』 をクリックし、ご覧ください。
現地開催人数制限有り(30名)
日時:
2022年10月16日(日) 09:55〜16:30
大会は終了しました
会員発表
10:00 ~ 10:15 咬合性外傷を伴う広汎型慢性歯周炎患者に対してクロスアーチスプリントを用いた長期メインテナンス症例 【白石 和美/医療法人 丸尾歯科】
10:15 ~ 10:30 前歯部に結合組織移植術と矯正治療を併用して審美障害を改善した症例 【金子 一平/医療法人 盡己会 カネコデンタルオフィス】
10:30 ~ 10:40 質疑応答
10:40 ~ 10:55 多数歯に骨縁下欠損を有する慢性歯周炎患者に対してエムドゲイン®を用いて歯周組織再生療法を行った症例 【山本 哲史/やまもと歯科】
10:55 ~ 11:10 広汎性慢性歯周炎患者に対して全顎的に歯周組織再生療法を行った症例 【原博章/医療法人 QOLファミール歯科】
11:10 ~ 11:20 質疑応答
教育講演①
11:35 ~ 12:35 インプラント周囲疾患の新分類に基づく診断・治療およびリスクマネジメント 【岩野 義弘/岩野歯科クリニック】
教育講演②
13:20 ~ 14:20 歯周病患者に対するインプラント治療・その注意点について 【小野 晴彦/おの歯科医院】
特別講演
14:35 ~ 16:25 歯周病患者におけるインプラント治療 【長谷川 嘉昭/長谷川歯科医院】 【川崎律子/長谷川歯科医院】
会員発表
座長石井 肖得
座長栗原 孝幸
10:00~10:15
演題

咬合性外傷を伴う広汎型慢性歯周炎患者に対してクロスアーチスプリントを用いた長期メインテナンス症例

白石 和美
医療法人 丸尾歯科
抄録

Ⅰ.報告の背景と目的
著しい骨吸収と咬合性外傷によるフレアーアウトを伴う広汎型慢性歯周炎患者に対して歯周治療を行い,コーヌスクローネによるクロスアーチスプリントで安定した均等咬合を獲得した後,19年間にわたり良好な経過が得られている長期メインテナンス症例について報告する.
Ⅱ.症例の概要
患者:44歳女性 非喫煙者 初診:2002年8月 主訴:上の歯がグラグラして噛みにくい. 現病歴:数年前から動揺が始まり他院にてSRPと暫間固定を行うが3日前より動揺が大きくなり咀嚼が困難になった.全身的既往歴:なし. 検査所見:PCR:67%,BOP陽性率:76.9%,PPD4mm以上:48.1%.全顎的に水平性骨吸収と咬合性外傷によるフレアーアウトを認めた.診断:広汎型慢性歯周炎(ステージⅣ グレードC) 二次性咬合性外傷
Ⅲ.治療計画
1.歯周基本治療 2.再評価3.歯周外科治療 4.再評価 5.口腔機能回復治療 6.再評価 7.メインテナンス(SPT)
Ⅳ.治療経過
歯周基本治療に対し患者の積極的な参加の結果,PCR:19.2%,BOP陽性率:19.3%,PPD4mm以上:32.7%となり,歯肉の炎症は軽減した.再評価の後,歯周外科治療(11~17,22~25,26,27,35,36,45,46)を行い,その後,12,38抜歯,27遠心根の分割抜歯を行った.初診から9ヵ月後の再評価時に,PCRは20%以下に維持していたが,フレアーアウトは改善されなかったためクロスアーチスプリントにて口腔機能回復治療を行った.2004年1月にSPTに移行後,良好な状態が続くが,1年半来院が中断したことにより歯周組織が悪化した.再度SRPを行い,現在SPTを行っている.
Ⅴ.考察
咬合性外傷を伴う慢性歯周炎患者に対してクロスアーチスプリントによる連結固定を行った後,長期的に良好な口腔内を保つためには,歯周基本治療時から歯科衛生士として患者教育と口腔衛生指導に重点を置いてPCRの向上を図ること,患者との信頼関係を確立することが重要であると考える.そして,SPT期間中も患者が来院中断することがないように,いかに患者のモチベーションを維持できるかが鍵となると考える.
Ⅵ.結論
全顎固定性ブリッジはメインテナンス中のトラブルへの対応が難しいと考えたため,コーヌスクローネによる患者可撤式クロスアーチスプリントを選択した結果,19年という長期にわたり良好な経過を得ることができたと考える.

10:15~10:30
演題

前歯部に結合組織移植術と矯正治療を併用して審美障害を改善した症例

金子 一平
医療法人 盡己会 カネコデンタルオフィス
抄録

Ⅰ.報告の背景と目的
審美領域における治療において,患者の満足を得るには歯冠修復と同様に軟組織のマネージメントが必要である.今回,前歯部に矯正治療,結合組織移植術を併用し,軟組織のマネージメントを行い,審美障害が改善した症例を報告する.
Ⅱ.症例の概要(初診, 診査, 検査所見等)
患者:35歳 女性 初診:2018年10月 主訴:前歯を綺麗にしたい
全身的既往歴:特記事項なし,非喫煙者.現病歴:前医にて口蓋側転位のあった12を抜歯してプロビジョナルレストレーションブリッジが装着されていた.前歯部の治療を希望して当院を受診した.口腔内所見:下顎前歯部に叢生を認めた.上顎に関しては歯頚線の不揃い,欠損部歯槽堤の陥凹を認めた.診断:11歯肉退縮, 12歯槽堤陥凹(Seibertの分類 Class I)
Ⅲ.治療計画
1.歯周基本治療2.再評価3.部分矯正,結合組織移植術4.再評価5.口腔機能回復治療6.再評価7.SPT
Ⅳ.治療経過
上顎においては歯頚線の不揃いおよび11の捻転の改善のために部分矯正を行った.下顎においては42の抜歯を行い叢生を改善した.また,12部位の歯槽堤が陥凹している部分はSeibertの欠損部顎堤の分類でClass Iと診断し,結合組織移植による歯槽堤増大術(パウチ法)を行った.プロビジョナルレストレーションを用いて基底面を圧接してオベイト形態を付与し,基底面形態を最終補綴装置に反映した.
Ⅴ.考察
PES (Pink Estetic Score)により軟組織を評価することは,近遠心の歯間乳頭の高さの不足や歯肉のボリューム不足が明確になり,審美障害の改善に有効であった. また, プロビジョナルレストレーションの形態を最終補綴装置に反映することにより良好な結果が得られたと考える.
Ⅵ.結論
前歯部の歯頚線を揃える部分矯正治療および12 抜歯後に生じた歯肉陥凹部に対する歯槽堤増大術を行うことにより,機能面と審美面の双方を改善することができた.

10:30~10:40
演題

質疑応答

10:40~10:55
演題

多数歯に骨縁下欠損を有する慢性歯周炎患者に対してエムドゲイン®を用いて歯周組織再生療法を行った症例

山本 哲史
やまもと歯科
抄録

Ⅰ.報告の背景と目的
多数歯において骨縁下欠損を有する歯周炎患者に対して,炎症と力のコントロールを中心とした歯周基本治療を行った後に,歯周組織再生療法を含めた歯周外科治療を行い,良好な結果が得られた症例について報告する.
Ⅱ.症例の概要(初診、診査、検査所見等)
患者:64歳女性 初診:2017年10月 主訴:下の奥歯が痛い
全身的既往歴:特記事項なし,非喫煙者 現病歴:他院にて37,47が保存不可能のため抜歯が必要との説明を受けた.歯周病の治療を希望して当院を受診した.
口腔内所見:局所に歯石の沈着,歯肉の発赤,腫脹を認め,左右側方運動時に臼歯部に咬合干渉を認めた.検査所見:BOP陽性率は46.4%,PPD4mm以上の部位は21.4%,PCR26.0%であった.エックス線所見:17,27,37,46,47に垂直性骨吸収を認めた.診断:広汎型慢性歯周炎(ステージⅢグレードC),二次性咬合性外傷
Ⅲ.治療計画
1.歯周基本治療 2.再評価 3.歯周外科治療 4.再評価 5.口腔機能回復治療(ナイトガードの作製)6.再評価 7.SPT
Ⅳ.治療経過
上記の歯周基本治療後に,17,37,47の垂直性骨吸収を伴う深い歯周ポケット残存部に対してエムドゲイン®(以下EMDと表記)と骨補填材を併用した歯周組織再生療法を行った.2020年4月の再評価において,BOP陽性率は2.3%,PPD4mm以上の部位は4.2%と改善した.再評価時のエックス線所見では,歯槽骨の不透過性の亢進を認めたため歯周組織は安定していると判断しSPTへ移行した.
Ⅴ.考察
本患者の歯周炎増悪因子として咬合性外傷が関与していたため,歯周基本治療において咬合調整や暫間被覆冠による歯の固定を行い咬合性外傷の軽減を図った.その後歯周外科へ移行した.口腔機能回復治療において,15,26,27,36,37,46,47に補綴装置による外側性固定を行ったことにより,初診から5年経過した現在も良好な経過を得ていると考える.
Ⅵ.結論
本患者に対して,二次性咬合性外傷の問題を排除した後,多数歯にわたる骨縁下欠損に対してEMDと骨補填材を併用した歯周組織再生療法を行い,良好な結果を得ることができた.今後も外傷力とセルフケアに注意しつつ,SPTを行っていく必要があると考える.

10:55~11:10
演題

広汎性慢性歯周炎患者に対して全顎的に歯周組織再生療法を行った症例

原博章
医療法人 QOLファミール歯科
抄録

Ⅰ.緒言
重度歯周炎患者では,歯周基本治療後に垂直性骨吸収を伴う深い部位の歯周ポケットに対して,歯周外科治療が必要となることが多い.今回,歯周基本治療後に歯周組織再生療法を行い,良好な結果を得た症例を報告する.
Ⅱ.症例の概要
患者:44歳,女性,非喫煙者
初診:2014年3月
主訴:下の前歯がぐらぐらしている
全身的既往歴:特記事項なし
現病歴:2006年2月に当院を受診したが,主訴部位のみの治療で終了していた.その後,下顎前歯の動揺が大きくなったため,再び当院を受診した.
診査所見:PCR:68.8%,PPD 4 mm 以上:84.5%,BOP:100%,PISA:3859.5mm2,すべての歯においてⅠ~Ⅲ度の動揺があり,エックス線写真では,21・27・41・43・46に重度,16・14・13・12・11・22・23・37・33・32・31・42・47に中等度の骨吸収を認めた.
診断:広汎型慢性歯周炎(ステージⅢ グレードC)
Ⅲ.治療計画
① 主訴の改善(32・31・41・42・43暫間固定),②歯周基本治療(患者教育,OHI,SC・SRP,21抜歯)
③再評価,④歯周外科治療,⑤再評価,⑥SPT
Ⅳ.治療経過
歯周基本治療において徹底したTBIとSC・SRPを行った.患者は今回,歯を喪失したくないという危機感を持って治療に臨んだためPCRが向上し,口腔内環境は大きく改善した.BOP:11.7%,PISA:162.3mm2と歯周組織が安定したので,患者の強い希望があり歯周外科治療は行わずにSPTに移行した. SPTを継続していたが,歯周病進行による歯の喪失を予防するためにも垂直性骨吸収を伴う深い歯周ポケットが残存している部位に,再度歯周外科治療を提案し同意を得たため,全顎的に歯周組織再生療法を行った.歯周外科治療後の再評価の結果,PPD, BOP, PCR, PISA等は低値を示したため,再度SPTへ移行した.
Ⅴ.考察およびまとめ
本症例では垂直性骨吸収を伴う深い歯周ポケットが残存している部位に対して,FGF-2を使用した歯周組織再生療法を行い歯周組織は安定している.今後は歯の長期保存のためにSPTでfollow-upすることが重要であると考える.

11:10~11:20
演題

質疑応答

教育講演①
座長西岡 信治
座長山脇 将貴
11:35~12:35
演題

インプラント周囲疾患の新分類に基づく診断・治療およびリスクマネジメント

岩野 義弘
岩野歯科クリニック
略歴

1999年 新潟大学歯学部卒業、日本大学歯学部歯周病学講座入局
2012年 博士(歯学)取得、岩野歯科クリニック開業
日本歯周病学会 指導医 歯周病専門医
日本口腔インプラント学会 代議員 指導医 専門医
日本臨床歯周病学会 認定医

抄録

近年インプラント治療は,材料学的進歩と臨床術式の向上により,その適応症は大きく拡大してきました.歯周炎による歯の喪失は,咬合崩壊,顎堤の吸収や角化粘膜の委縮,審美障害等,種々の問題を引き起こします.適切なインプラント治療がもたらす強固なバーティカルストップは,咬合の安定と残存歯の保護を可能にするため,顎堤や軟組織にもたらされた種々の困難を克服したうえでも,欠損補綴の重要な手段の一つとして,臨床の場で広く応用されています.
歯周病患者においてインプラント治療を選択する場合,適切な検査診断,治療計画の立案が肝要となります.無論インプラント治療の有無に限らず,治療計画立案にあたり最も重要視されるべき点は,リスクマネジメントに基づく良好な長期的予後でしょう.そして特にインプラント治療を計画する場合には,インプラント周囲疾患,なかでも未だ確実な治療法の存在しないインプラント周囲炎の発症に留意しなければなりません.
歯周病は,Porphyromonas gingivalis,Tannerella forsythia,Treponema denticolaに代表される歯周病原細菌の感染による慢性炎症性疾患であり,歯周ポケット内,舌あるいは粘膜に定着,増殖した細菌は,唾液を介してインプラント周囲にも到達します.発症の原因は未だ明らかではありませんが,歯周炎の既往や進行性の歯周炎はインプラント周囲炎発症のリスクファクターであることが,多くの疫学研究により示されています。インプラント周囲炎は最新のメタ分析の結果,患者レベルで18.5%,インプラントレベルで12.8%に発症すると報告されており,歯周病患者ではその確率が高まることも明らかとされています.そのため歯周病患者に対してインプラント治療を行う場合、将来的な感染のリスクを考慮したうえでの介入が必要となります.
2017年,シカゴで行われましたアメリカ歯周病学会・ヨーロッパ歯周病連盟共催によるワールドワークショップにおいて,歯周病の新分類について議論され,2018年,レビューおよびコンセンサスレポートとしてJournal of Periodontology ならびにJournal of Clinical Periodontology に同時掲載されましたが,そこでは併せて,インプラント周囲疾患についての定義づけが初めてなされました.特に重要なのが,健康なインプラント周囲組織が明確に定義されたこと,そして感染に伴う炎症性疾患であるインプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎,それ以外の原因によって生ずるインプラント周囲硬・軟組織欠損とをそれぞれ個別に定義づけしていることです.なかでもインプラント周囲炎は,インプラント上部補綴装置装着1年後を基準として,プロービング時の出血および/または排膿を伴うインプラント周囲軟組織における視診での炎症性変化を認め,プロービングポケット深さが増加し,進行性の骨吸収が認められることと定義されており,まずはインプラント上部補綴装置装着1年後にきちんと健康なインプラント周囲組織であるとの評価を行ったうえで,メインテナンス中にもプロービングを含めた検査にて変化をとらえていく必要があります.また最近は他院で治療されたインプラントのトラブルも増えてきており,インプラント周囲炎に罹患した患者さんが自院へ来院される機会も多くなった来ています.その場合にはベースライン時のデータが存在しないため,インプラント周囲炎の定義は,エックス線的な3mm以上の骨吸収もしくはそれとともに大量の出血を伴う6mm以上のプロービングポケット深さが存在すること,となります.そしてこれらの新しい定義を基に的確に診断を行い,早期に最もふさわしい治療を行う必要があると考えます.
そこで本講演では,文献の披歴と症例の供覧を行い,インプラント周囲疾患の新分類を基に,インプラント周囲粘膜炎,インプラント周囲炎についての診断,治療の実際を紹介するとともに,リスクマネジメントについて皆様と一緒に考えてみたいと思います.

教育講演②
座長西原 茂昭
座長清水 賢
13:20~14:20
演題

歯周病患者に対するインプラント治療・その注意点について

小野 晴彦
おの歯科医院
略歴

1994年 広島大学歯学部卒業
1994年 広島大学付属病院勤務 (第一口腔外科所属)医員
1997年 横山歯科医院 勤務
2000年 おの歯科医院勤務〜現在に至る
日本臨床歯周病学会 認定医
アメリカ歯周病学会
元東京医科歯科大学臨床講師、元東京歯科大学臨床講師
JIADS理事  

抄録

 近年, 歯を失った部位へのインプラント補綴は, 欠損補綴の有力なオプションとして益々認知されてきている. 一方、インプラント治療に伴う合併症も度々メディアに取り上げられるなど問題となっており, 中でもインプラント周囲炎は最多の合併症とされている. 歯周病への罹患がインプラント周囲炎のリスクファクターとなっていることは周知の事実であり, 歯周病患者に対するインプラント治療には注意すべきポイントがいくつかある. 今回は特に治療後インプラント周囲炎を引き起こさないという観点から, 治療計画, 埋入手術, 補綴時などそれぞれの時期において, 臨床例を提示し考察してみたい.
 先ず治療計画の段階では, 残存歯の歯周炎をどのようにコントロールしていくか, 保存すべき歯, 保存が難しいと考えられる歯, 治療してみないとなんとも言えない歯を分けて, 長期的な観点で計画を立案する. その際に考慮すべき主なものとして, 患者の年齢, 性格, 歯周病の分類におけるGrade等が挙げられる. 理想的にはインプラントを埋入する時点で全ての歯のデブライドメントが終わっていることが望ましいが, 治療のタイミングは必ずしもそうはならないことも多い. 少なくとも歯周基本治療が終わり, 患者のセルフケアの向上が図られ, 軟組織の炎症がコントロールされている時点を目標とする.
 埋入手術の段階では, 3次元的な埋入位置のコントロールが最も重要である. 近遠心, 頬舌的には補綴主導の位置をとり, 埋入深度は骨縁, もしくは軟組織が3mm以下の場合はその分深めの埋入位置とする. さらに周囲に最低2mmの骨幅を確保するため, 骨量の不足した部分ではG B R等で骨の増大を図る.
 二次手術, 補綴処置においては, インプラント周囲に角化粘膜を確保し, 清掃性の高いエマージェンス・プロファイル, 補綴形態を目指す.
動的治療期間において, 以上のような項目を達成し, その上で定期的なメインテナンスに確実に応じてもらうよう, 患者のモチベーション維持に努める. メインテナンス期には, インプラント周囲粘膜炎の状態を見逃さず, 早めにセルフケアの徹底と非外科的治療で対応することが重要と考える.
周病の新分類の発表された2017年のワークショップにおいても, インプラント周囲炎のリスクファクターとして, 歯周病の既往, プラークコントロールの不良, メインテナンス欠如との相関が強く述べられている. このことからも患者のセルフケア向上を含めた歯周基本治療を徹底すること, 定期的なメインテナンスへの理解を得て来院していただくことが, インプラントを長期的に良い状態で維持する上でも重要であると考えている.

特別講演
座長鈴川 雅彦
座長小倉 嘉弘
14:35~16:25
演題

歯周病患者におけるインプラント治療

長谷川 嘉昭
長谷川歯科医院
略歴

日本大学歯学部卒業
日本歯周病学会専門医 
日本臨床歯周病学会指導医
日本臨床歯周病学会歯周インプラント指導医
東京医科歯科大学非常勤講師

川崎律子
長谷川歯科医院
略歴

長谷川歯科医院勤務
歯友会歯科技術専門学校(現 明倫短期大学)卒
日本歯周病学会認定歯科衛生士
日本臨床歯周病学会指導歯科衛生士
日本顎咬合学会指導歯科衛生士
日本口腔インプラント学会認定インプラント専門歯科衛生士

抄録

 戦術中心のインプラント治療は、今や究極の域に到達している感があるが本来歯周病患者の重要な診断に関しては、議論される機会があまりにも少ない。戦略診断とは、すなわち臨床検査値から導かれるものであり、各学会が推奨するステージ・グレード診断のことではない。病因検査から病態を把握し、インプラント治療を施術する際の診断基準を導くことを意味するものである。歯周基本治療はすべての治療において優先される医療行為であるが、従来の病態検査から病因検査を追加することで、その効果を明視化できる利点を活用し、インプラント治療が必要な歯周病患者に有益な情報提供が可能となる。
具体的には炎症徴候に高感度CRP、感染情報にリアルタイムPCRやシーケンシング検査を取り入れることで、インプラント埋入時期やSPT時における口腔内環境を把握する一助になると考えている。またCBCT等のデジタルデータを活用したガイドサージェリーは、残存骨量が減少した歯周病患者には特に有効なツールにもなるであろう。
いずれにせよ、歯周病患者における歯周病原細菌叢の改善なくしてインプラント治療の成功はあり得ない。そのための臨床検査の活用を注意喚起していきたいと常々思っている。
 いまだインプラント周囲炎に罹患する患者の共通項を、私の稚拙な臨床では掌握できず無念ではあるが、概ね良好な経過を辿っている症例から、本講演ではインプラント治療を行う前の自院の歯周診断からの実際の取り組みを歯科医・歯科衛生士に分けて説明し歯周インプラント治療のあり方を詳細に解説してみたい。

中国四国支部

こんなに深い再生療法の基礎と臨床

研修名:
令和4年度第1回日本臨床歯周病学会中国四国支部教育講演会
場所:
広島大学広仁会館 ハイブリッド形式
※現地参加は、先着30名限定です。定員に達しましたらWEB参加のみとなります。
※総会 開催時間が16:40~16:50 へと変更になっております。中国四国支部正会員の方のみご参加下さい。

【研修会への参加方法】
研修会に参加申込されている方は、ログイン後、右上の「詳細をみる」を押した後に表示される画面から
WEB(オンライン)で参加する」というボタンを押して参加ください。




現地開催人数制限有り(30名)
日時:
2022年5月22日(日) 09:55〜16:50
大会は終了しました
会員発表
10:00 ~ 10:15 外国人の患者に歯周病治療の重要性を伝える事の難しさを痛感した症例 【尾原 利菜子/きむら歯科医院】
10:15 ~ 10:30 rhFGF-2の小規模歯周骨内欠損に及ぼす臨床効果と評価方法 【橋本 鮎美/AICデンタルクリニック】
10:30 ~ 10:40 質疑応答 【尾原 利菜子/きむら歯科医院】 【橋本 鮎美/AICデンタルクリニック】
10:40 ~ 10:55 ステージⅢグレードCの歯周炎患者に対し臨床検査を用いながらアプローチした一症例 【伊達 奏美/医療法人祐真会 はやし歯科クリニック】
10:55 ~ 11:10 多数の骨縁下欠損と咬合性外傷を有する歯周炎患者に対して歯周組織再生療法を用いて良好な結果が得られた症例 【畑中 乾志/こうなんファミリィ歯科】
11:10 ~ 11:20 質疑応答 【伊達 奏美/医療法人祐真会 はやし歯科クリニック】 【畑中 乾志/こうなんファミリィ歯科】
基調講演
11:35 ~ 13:15 歯周組織再建/再生療法を科学的に検証する ~真のゴールを目指して~ 【白方 良典/鹿児島大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野】
シンポジウム
14:05 ~ 14:35 歯周組織再生療法において、歯科衛生士が担う役割 【由良 典子/大川歯科医院・関西支部】
14:35 ~ 15:05 歯周基本治療からはじまる再生療法 【斎田 寛之/斉田歯科医院・関東支部】
15:20 ~ 15:50 再生療法はスペースメインテナンスが鍵! 【奈良 嘉峰/茅ヶ崎駅前 奈良デンタルクリニック・関東支部】
15:50 ~ 16:20 歯周再生療法と矯正治療 【工藤 求/プリズムタワー工藤歯科・関東支部】
16:20 ~ 16:35 ディスカッション(シンポジウム)
会員発表
座長藪 健一郎
座長小出 康史
10:00~10:15
演題

外国人の患者に歯周病治療の重要性を伝える事の難しさを痛感した症例

尾原 利菜子
きむら歯科医院
抄録

Ⅰ.報告の背景と目的
近年,国内には多くの外国人就労者が在住しており,生活背景の異なる外国人が患者として来院することも珍しくない.治療を行う上で患者に現在の状態を理解してもらい,口腔内に関心を持ってもらうことは重要である.しかしながら,言葉の障壁があり患者と良好なコミュニケーションを取ることが難しい場面に遭遇することもある.今回,外国人の患者に対して,説明時に視覚的要素を取り入れながら歯周治療を行い,良好な結果を得ている症例を報告する.
Ⅱ.症例の概要(初診、診査、検査所見等)
初診:2021年5月,患者:28歳,男性:ベトナム人.主訴:ブラッシング時に出血する.診査所見:全顎的に辺縁歯肉の発赤,腫脹を,また多量の歯肉縁上・縁下歯石の沈着を認めた.初診時では4㎜以上のPPD56.2%,BOP 95.8%,PCR 100%であった.診断:広汎型慢性歯周炎(ステージⅡグレードB)
Ⅲ.治療計画
1.簡易的細菌検査2.歯周基本治療(患者教育,OHI,歯肉縁上スケーリング,SRP)3.再評価4.矯正治療5.SPT
Ⅳ.治療経過
来院当初は歯周治療を行うにあたり十分なコミュニケーションを取ることが難しかったが,理解しやすいように視覚的媒体を用い,試行錯誤しながら患者教育を行った. 患者は歯周治療を行うことの重要性を理解した.2021年11月の再評価では4㎜以上のPPD7.3%,BOP 25.5%,PCR 31.3%となり,歯周組織の改善を認めたためSPTへ移行した.下顎前歯部に叢生を認めたため矯正治療を提案したが,患者が希望しなかったため行っていない.
Ⅴ.考察
患者は口腔内に対する関心が低く,セルフケアが不十分であったため,歯周炎に罹患したと考える.治療を行うにあたり言葉の障壁は少なくなかったが,いかに口腔内に関心を持ってもらうかが重要であると考え,歯周病の説明媒体として模型や本等を積極的に用いたことがセルフケアの改善につながったと考える.
Ⅵ.結論
口頭による説明のみならず絵や写真等の視覚的媒体を用いることで歯周治療の理解が得られた.結果,患者の口腔内環境の改善につながったと考える.今後も患者のセルフケアの確立とともにSPTにより,改善された口腔内の状態を維持できるように努めたい.

10:15~10:30
演題

rhFGF-2の小規模歯周骨内欠損に及ぼす臨床効果と評価方法

橋本 鮎美
AICデンタルクリニック
抄録

Ⅰ.報告の背景と目的
歯周組織再生療法の結果を適性に評価することは容易ではない.今回提示するrhFGF-2を使用した再生療法の症例を通じて,小規模歯周骨内欠損に及ぼす臨床効果とその結果の評価方法,特に規格デンタルエックス線画像の有効性について検討を行ったので報告する.
Ⅱ.症例の概要(初診、診査、検査所見等)
小規模歯周骨内欠損(歯周炎のステージⅠ,Clinical Attachment Loss≦1-2mm,デンタルエックス線画像上の骨吸収が歯根長の1/3未満)に対しrhFGF-2を単独使用し,歯周組織再生療法を行った4症例を提示する.術式は,全層弁にて粘膜骨膜弁を形成し,肉芽組織の除去ならびに根面の機械的なデブライドメントに加え,24%EDTAによる化学的根面処理を2分間行い,骨内欠損にrhFGF-2を塗布し緊密に縫合した.術後18ヵ月から41ヵ月の経過を歯周組織検査ならびに規格デンタルエックス線画像により評価した.
Ⅲ.得られた知見
小規模歯周骨内欠損に対し,rhFGF-2は臨床的な効果を示した.プロービング時の深さ(PD)及びプロービング時の出血(BOP)の改善,加えてレントゲン的に不透過性の亢進を認めた.さらに,デンタルエックス線画像の規格化により,小規模歯周骨内欠損の改善を適性に評価することができた.
Ⅳ.考察
サイトカイン療法のひとつであるrhFGF-2を用いた歯周組織再生療法は,小規模歯周骨内欠損に対し有効であった.歯周組織再生療法の評価では,プロービングは誤差が生じやすいと報告されている.評価方法として規格デンタルエックス線画像を用いることで,小さな歯周組織の変化を見逃すことなく,適正に評価できた.
Ⅴ.結論
小規模歯周骨内欠損に対し,rhFGF-2は有効であり,規格デンタルエックス線画像による歯周組織再生療法の評価は,より高い信頼性と妥当性を有するものと考える.

10:30~10:40
演題

質疑応答

尾原 利菜子
きむら歯科医院
橋本 鮎美
AICデンタルクリニック
10:40~10:55
演題

ステージⅢグレードCの歯周炎患者に対し臨床検査を用いながらアプローチした一症例

伊達 奏美
医療法人祐真会 はやし歯科クリニック
抄録

Ⅰ.報告の背景と目的
歯周治療を成功へ導くには,患者の協力度と安定した歯列咬合の獲得が重要な鍵となる.今回,様々な検査結果や情報を提示することで患者のモチベーションを維持しながら治療を行った症例を報告する.
Ⅱ.症例の概要
患者:50才,男性,喫煙者
初診日:2019年10月 主訴:右上の奥歯が痛い 現病歴:当院にて2006年に歯周基本治療まで終了したが,メインテナンスは中断した.右上大臼歯部が夜も寝れない程痛むとのことで2019年10月に再来院した.
診断名:広汎型慢性歯周炎(ステージⅢ グレードC)
Ⅲ.治療計画
①主訴に対する治療 ②歯周基本治療(歯周組織検査,歯周病細菌検査,高感度CRP検査)③再評価 ④歯周組織再生療法 ⑤歯列矯正 ⑥再評価 ⑦口腔機能回復治療 ⑧再評価 ⑨SPT
Ⅳ.治療経過
主訴に対して18の抜歯処置を行った後,歯周基本治療を開始した.
口腔内スキャナー(IOS)とマイクロスコープを用いて,咬合状態やプラークの付着と炎症の状況を視覚的に説明した.残存歯を保存するためには禁煙は必須であること,細菌検査と高感度CRP測定の臨床検査を行うことにより,歯周炎が患者自身の体に及ぼす影響を把握することは重要であると説明した.
SRP後に高感度CRP値は低減したため,患者のモチベーションは向上し,禁煙に成功した.歯周基本治療を患者と協力して行うことができた.歯周ポケットが残存した16〜11, 24〜27には歯周組織再生療法を行い,現在は歯列矯正を行っている.今後は,再評価の後,歯周組織が安定していれば口腔機能回復治療を行い,SPTへ移行する予定である.
Ⅴ.考察
本症例では,様々な臨床検査結果を患者に詳しく説明し理解を得たこと,患者の歯を残したいという想いが強かったことにより治療が奏功したと考える.
本患者において,ブラケット矯正ではなくマウスピース矯正を行うことは,口腔内清掃状態を維持すること,歯周炎の悪化を防ぐことが期待できるため,有用であると考える.
Ⅵ.結論
患者へのアプローチとして,臨床検査を用いることでコンプライアンスが得られ,自分の歯を大切にする意義を患者と共有することが可能となり,歯周治療まで行うことができた. 本患者は現在矯正治療中であるが,今後もモチベーションを持続させながら,SPTまでサポートできるように努めたい.

10:55~11:10
演題

多数の骨縁下欠損と咬合性外傷を有する歯周炎患者に対して歯周組織再生療法を用いて良好な結果が得られた症例

畑中 乾志
こうなんファミリィ歯科
抄録

Ⅰ.報告の背景と目的
咬合性外傷を伴う骨縁下欠損がある場合,歯周組織破壊が助長され歯の喪失につながる可能性がある.今回,多数の骨縁下欠損と咬合性外傷を有する歯周炎患者に対して,炎症と力のコントロールを中心とした歯周基本治療を行った後に,歯周組織再生療法を行い良好な結果が得られた症例について報告する.
Ⅱ.症例の概要(初診、診査、検査所見等)
患者:35歳 女性 初診:2018年10月 主訴:クリーニング希望
全身的既往歴:特記事項なし,非喫煙者 歯科的既往歴:夜間のブラキシズムあり
口腔内所見:プラークコントロールは比較的良好であったが,局所に歯肉の発赤および腫脹を認め,左右側方運動時に臼歯部に咬合干渉を認めた. 検査所見: BOP陽性率は33.3 %,PPD4 mm以上の部位は28 %,PCR 25.7%であったエックス線所見: 17,16,23,26,27,36,35,42,45,46に垂直性骨欠損を認め,また,46には根分岐部病変を認めた. 診断:限局型慢性歯周炎 (ステージⅢ グレードC),二次性咬合性外傷
Ⅲ.治療計画
① 1. 歯周基本治療(咬合調整,ナイトガード作製,口腔衛生指導,スケーリング・ルートプレーニング)2. 再評価 3. 歯周外科治療(歯周組織再生療法)4. 再評価 5. SPT
Ⅳ.治療経過
上記の歯周基本治療後に,垂直的性欠損部に対してEMDと骨補填材(Bio-Oss)を併用した歯周組織再生療法を行った.2020年3月の再評価において,BOP陽性率は6.8 %,PPD4 mm以上の部位は8.9 %と改善した.再評価時のエックス線所見では骨の不透過性の亢進を認めたため,歯周組織は安定していると判断し,SPTへ移行した.
Ⅴ.考察
本患者の歯周炎悪化の原因として咬合性外傷の関与が考えられた.歯周基本治療において咬合調整やナイトガード装着を行い咬合性外傷の軽減を図ったため,垂直性骨欠損部に対して行った歯周組織再生療法は良好な経過を得ていると考える.
Ⅵ.結論
二次性咬合性外傷の問題を排除することにより,多数の骨縁下欠損に対してEMDを使用した歯周組織再生療法は良好な結果を得ることができた。今後も咬合性外傷に注意してSPTを行っていく必要があると考える.

11:10~11:20
演題

質疑応答

伊達 奏美
医療法人祐真会 はやし歯科クリニック
畑中 乾志
こうなんファミリィ歯科
基調講演
座長高井 康博
座長大江 丙午
11:35~13:15
演題

歯周組織再建/再生療法を科学的に検証する ~真のゴールを目指して~

白方 良典
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野
略歴

1998年 鹿児島大学歯学部卒業
2002年 東京医科歯科大学大学院修了 
2003年 鹿児島大学歯学部 助手
2007年 鹿児島大学歯学部 助教
2011年 鹿児島大学成人系歯科センター 講師 
2011-2012年 ベルン大学歯学部 客員研究員
2015年- 鹿児島大学歯学部 准教授 
2021年- 東京医科歯科大学非常勤講師
資格
日本歯周病学会歯周病専門医/指導医/評議員
Periodontology 2000, Clinical Oral Investigations, BMC Oral Health (Editorial Board)

抄録

 中等度・重度歯周炎に罹患した天然歯の保存や審美性の向上を目的とする歯周組織再建/再生療法の成功は歯周治療の長期予後の向上に寄与するだけでなく,咬合崩壊や歯列不正を伴う患者の全顎的な口腔機能の回復のため,補綴治療や矯正治療と併せて今日の包括的歯科治療においてもその意義は極めて大きいものと考えられる.
実際,この数十年の間に重度の歯周組織破壊を伴う垂直性骨欠損や根分岐部病変に対して,多種多様な骨移植材を用いた骨移植術,根面処理,バリアメンブレンを用いたGTR法, エムドゲインⓇゲルやリグロスⓇに代表される生理活性物質の単独/併用療法が広く用いられており,近年はさらに歯肉退縮に対する歯周形成外科治療にも新規生体材料や生理活性物質の応用が試みられている.
このように現在,歯周組織再建/再生療法に用いられる治療オプションは非常に多岐にわたり国内外,保険適応/非適応といった臨床現場での制限はあるものの,歯周治療学上はその選択の幅が益々広がっている.しかしそのオプションの多さから現在,最適なアプローチの選択がより困難になり臨床成績や予後にばらつきが認められるという新たな問題が生じている.またこれらのアプローチを歯周組織「再生」療法と称し行っているものの,組織学的な「真の再生」の獲得が証明されているものは限られており,必ずしも単独療法に比較して併用療法に付加的効果があるとも言えない.その一方でマイクロスコープの活用やフラップデザインの改良も進み確実なデブライドメントや血餅の保持,創面の保護,創傷治癒の安定を最大限に図ることで再生材料を用いずとも良好な治癒や臨床成果が得られるとの報告もある.さらに歯周基本治療により炎症のコントロールを始めとする原因除去を徹底することで臨床的に良好な治癒と予後を認めることもあり,術中術後の管理やcost-effectivenessの観点からも歯周組織再生療法導入の見極めは十分に吟味する必要があるかもしれない.
こうした治療結果におけるデイスクレパンシーの解消は歯周疾患が感染症であるばかりでなく多因子性疾患で,さらに治療目標が単一組織ではなく,歯根セメント質-歯根膜-歯槽骨といった硬/軟/硬組織からなる組織複合体(付着器官)の再生と長期維持である以上,難題であることに変わりはない.しかし対象患者や欠損の選択に始まる的確な診断や外科手技の習得はもちろん,各アプローチにおける生物学的バックグラウンドや客観的選択基準を理解し,さらにその臨床結果に対する科学的検証を繰り返し,エビデンスと臨床経験を融合・昇華することで光明を見いだせるかもしれない.
本講演では,基礎研究・前臨床研究データに基づく最新のエビデンスと臨床例を含めて歯周組織再建/再生療法を俯瞰すると共に,真の歯周組織再生と天然歯の保存,さらに健康寿命の延伸に少しでも近づけるよう,皆様とデスカッションさせて頂ければと思います

シンポジウム
座長岩田 光弘
座長小笠原 一行
14:05~14:35
演題

歯周組織再生療法において、歯科衛生士が担う役割

由良 典子
大川歯科医院・関西支部
略歴

2002年 兵庫歯科学院専門学校 卒業
2002年 一般開業医 勤務
2012年 大川歯科医院 勤務
資格
日本歯周病学会 認定歯科衛生士
日本臨床歯周病学会 指導歯科衛生士

抄録

 2016年12月にリグロス®が発売・保険収載されて以来, 歯科医療従事者と患者双方にて歯周組織再生療法の認知度が上がり, より身近に感じて頂ける処置となったように思います. 現在では「再生療法を受けたい」とご自分で歯周治療を勉強されて来院される患者さんも, しばしばいらっしゃるようになりました. また, その歯周組織再生療法も2001年にマイクロサージェリーが報告されて以降, 低侵襲への追求が進み現在では歯間乳頭部の完全な保存を実現するにまで至りました.
専門誌を華々しく飾る話題の一方で, 私個人の日常臨床においては, これまでにない新たな難題に直面することが多くなりました.
一つは, 患者さんそれぞれが来院前に抱かれる歯周治療のイメージが, 多様になってきたことです. これまでは, そもそも歯周病を理解されてない患者さんが大多数でしたが, 最近では予めインターネットなどで下調べをされる方も増えてきたため, ”手術を受けたら, ハイ!おしまい!!” といったお手軽なものから, ”全身麻酔を伴った医療ドラマさながらの大手術”まで, 様々なストーリーを作ってお越しになる方がちらほら見られます. もう一つは, 術式の変化に伴う施術やアシスタント方法の変化です. より低侵襲に, より短時間に治療を進めるために, 組織の扱いはますます繊細になり術野はますます狭くなってきています. 自身の技術の見直しはもちろんのこと, 知識の向上や担当歯科医師との打ち合わせの必要性をより強く感じています.
そのような中で, 私は”患者・歯科医師・歯科衛生士が同じ治療ゴールを目指す”ことを心がけながら, 診査診断・歯周基本治療・再生療法・SPTの各治療ステージにおいて, 診療に当たっています.
まず診査診断では, そもそもの検査の必要性を患者さん自身が理解しているかに注意しています. レントゲン写真も複数枚撮影され, 歯周組織検査ではチクチクと歯茎を刺激され, 私たちが日常的に行なっている検査は, 思っているよりも患者さんに負担をかけていると思います. 検査の目的や結果の理解が追いついていなければ, モチベーションも低下し, SPTにたどり着くことなど叶いません. 次に, 歯周基本治療では”歯周病とは何か?”, ”歯周治療は何をするのか?”, ”セルフケアの目的は?”などを小分けにしながら患者さんに伝えています. 患者さん毎に理解の速さや度合いは違い, キャパシティーオーバーしないよう注意します. また、モチベーションが高すぎるのも, オーバーブラッシングを生じ, 歯周基本治療の目的の一つである”外科処置に耐えうる歯肉”を実現できません. もちろん, 残存しているセメント質や歯根膜へ配慮しつつ, 歯肉退縮に注意したスケーリング・ルートプレーニングの実践は, 最も注意すべきポイントと考えています. 手術時では, 処置のより円滑な進行のために, 術式の打ち合わせを行い, 手順, 注意すべき項目などの確認を行います. そのためには, 日頃からの歯科医師とのコミュニケーションが大切だと実感しています. また, 術後の患者さんへの配慮も欠かせません. 術直後, 患者さんは疲労感や痛み, 創部の扱い方など多くの不安を感じます. 術後の達成感を抑えつつ, 外科処置を共に頑張った同志として, ねぎらいの言葉とともに術後の生活におけるアドバイスを行うよう気をつけています. さらに, SPTに移行する前には改めて患者さんと歯周病についての知識を確認することにしています. そこで, 再発しうるリスクや可能性, 日々のセルフケアが欠かせないこと, 責任を持って些細な変化も見逃さないようにケアさせていただくことをお伝えし, 信頼関係をより強固にして長いSPTの旅路へ出発していきます.
今回は, 私が日々の歯周治療や歯周組織再生療法の実践において注意していることを挙げさせていただきますが, これから改善していくべき点も多くあることも感じています. また, 良い治療を提供していく上ではご参加いただいている皆様からのご助言もいただきたいと考えています.
どうぞ宜しくお願い致します.

14:35~15:05
演題

歯周基本治療からはじまる再生療法

斎田 寛之
斉田歯科医院・関東支部
略歴

2002年 東京医科歯科大学歯学部卒業
2018年 東京医科歯科大学 臨床教授
資格
2008年 日本歯周病学会 歯周病専門医
2015年 日本歯周病学会 指導医
2016年 日本臨床歯周病学会 歯周インプラント認定医
2020年 日本臨床歯周病学会 指導医

抄録

 再生療法を成功に導くためのポイントは多く存在し, 一歯単位においては骨欠損形態に応じた適切な術式選択とそれを成功させるための切開や郭清, 縫合などのテクニックがそれらを左右する. 一方で口腔単位・個人単位の要素も再生療法を行う上では結果に大きな影響を及ぼすと考えており, 年齢, 喫煙の有無, 全身疾患の有無など, そして患者のモチベーション, コンプライアンスなどから再生療法を行なうべき症例かどうかを予測し, また再評価検査までに歯周基本治療を通じて各患者の歯周組織の反応の良し悪しを判断してから, 再生療法を行うかどうかを決定するようにしている.
一方で, 歯周組織の反応が良い症例の多くは歯周基本治療で改善させることも可能で,症例によっては歯周基本治療のみで骨欠損の改善も含めた十分な改善が見られることもしばしば経験する. ただ, その改善には歯肉退縮などの変化が伴うこともある. 骨欠損形態, 歯の動揺度, 補綴設計, 清掃性, 患者の審美的要求度, プラークコントロール, 経済的要件などから再生療法を行うかどうかを判断し, 再生療法症例であれば, どこまでの改善を歯周基本治療の目標とするのか担当の歯科衛生士としっかりと連携することが重要であると考える.
再生療法を行う前の歯周基本治療で重要なことは言うまでもなくプラークコントロールを確立させることである. 術前のプラークコントロールは, 術部の歯肉の炎症を消退させ一次創傷治癒を達成するため, 術後のプラークコントロールは, 術部の再感染を予防し歯周組織を長期的に安定させるために極めて重要である. (術直後ではない)
歯周基本治療からはじまり, どのような症例に対してどのようなタイミングで再生療法を行うのか, 再生療法前後におけるプラークコントロールなどについて, 私の考えを症例を交えてお話ししたい.

15:20~15:50
演題

再生療法はスペースメインテナンスが鍵!

奈良 嘉峰
茅ヶ崎駅前 奈良デンタルクリニック・関東支部
略歴

2007年 日本大学歯学部 卒業
2008年 菅井歯科医院藤沢 勤務
2019年 茅ヶ崎駅前奈良デンタルクリニック 開院
資格
日本臨床歯周病学会 認定医, 歯周インプラント認定医
日本歯周病学会 歯周病専門医

抄録

 歯周炎の進行によって付着は徐々に根尖側に移動し, 歯槽骨は破壊されていく. 一般的に,中等度から重度に進行した歯周炎罹患歯は,骨吸収の度合いを理由に抜歯の対象と判断されることがしばしばある. 抜歯か保存かの判断は歯周組織の状態のみならず,残存歯質の量,隣在歯の予後,補綴計画,患者の希望など様々な要素を考慮して判断する必要があるが,可能な限り歯の保存に努めることは歯周病治療に携わる歯科医師としての責務だと考えている. 歯周組織再生療法は一見ホープレスと思われるほどに骨吸収が進行した歯でも,歯周組織を回復し機能を維持させることが可能な治療法であるが,治療の結果が不確実であるという側面も持つ.
 良好な歯周組織再生を得るための試みは以前より様々に取り組まれてきた. 自家骨や異種骨等を用いた骨移植術は20世紀前半から行われ,1980年代にはGTR法が開発された. 1990年代にはエナメルマトリックスデリバティブを用いた治療法が臨床応用され,その後もいくつかの生理活性物質が歯周組織再生に活用されてきた. 近年ではメンブレンのトリミングや設置の煩雑さ,術後の合併症の多さからGTR法は敬遠され,生理活性物質を応用した手術法が主流になっていると思われる. 国内では2016年にFGF-2製剤であるリグロスを応用した手術が保険収載されたため,歯周組織再生療法は以前より一層注目を集め,またより身近な治療になってきていると感じている.
骨欠損部に歯周組織が再生するための要件は様々あるが,再生のためのスペースの確保は重要な要素の一つである. メンブレンを用いて物理的にスペースを維持するGTR法に比べ,エムドゲインやリグロスなどはゲル状の製品であるため,それら単体で空間を確保する能力は低い. 3壁性骨欠損のような再生のスペースが維持されやすい,いわゆるcontaining defectの場合は問題とはならないが,non-containing defectにおいては何らかの工夫がなければ最大限の組織再生を得ることは困難と思われる.
また,再生マテリアルの変遷とともにフラップデザインも変化してきた。GTR法ではメンブレンを覆うために大きなフラップを剥離,翻転せざるを得なかったが現在ではそのような制約はなくなり,MISTやM-MISTに代表されるようなより低侵襲なフラップデザインが考案された. 歯間乳頭部の良好な治癒は歯周組織再生療法を行う歯科医師にとって常に課題であり再生スペースの維持のためにも重要であるが,低侵襲フラップは手術時間を短縮しフラップ及び創傷を安定化することにより歯間乳頭部の初期閉鎖率を向上させた. しかしその一方で術野が小さいために骨欠損部へのアクセスは制限され,フラップの可動性も限定的であるため,対応できるケースは限られてくる. フラップデザインも再生スペースをコントロールする上で非常に重要であるため,症例に応じた使い分けが必要である.
今回の講演では歯周組織再生療法において,どのように再生のスペースを維持もしくは創造するか,フラップマネジメントを中心にお話させていただく予定である.

15:50~16:20
演題

歯周再生療法と矯正治療

工藤 求
プリズムタワー工藤歯科・関東支部
略歴

2001年 昭和大学歯学部卒業
2001年 東京医科歯科大学歯周病科入局
2003年 医療法人社団歯周会西堀歯科勤務
2009年 プリズムタワー工藤歯科開院
2019年 東京医科歯科大学歯周病科非常勤講師

資格 日本歯周病学会歯周病専門医・指導医
   日本口腔インプラント学会インプラント専門医
   日本臨床歯周病学会会員 関東支部学術委員長
   日本矯正歯科学会会員
   日本歯科審美学会会員

抄録

 歯周炎の外科治療は, 1918年発表のWidman原法あたりから始まる. 歯肉弁を剥離し,感染したと思われる歯槽骨を削り取り, 歯肉弁には縦切開を入れて根尖側へ移動しポケットを減少させようと試みた. その後はボーンファイルや, チゼルなども発達し, 歯槽骨を削るまたは, 歯肉切除も含め, 切除療法が発達した. 1970年代までの話である. これらヘミセクションやトライセクションを含む切除療法は端的に言うと悪いものを切除するので, 予知性の部分では非常に成功率が高い治療法であり, 今も臨床で応用されている部分もある.
それとは別に, 1980年代に巻き起こったGTR(歯周組織再生誘導法)から始まる歯周再生療法. これまでの歯科分野の所謂「切る」「削る」「埋める」「抜く」「入れる」などとは一線を画した「再生」という素晴らしい概念である. この歯周再生療法は40年たった2022年の今でも色々な改良を加えながら我々歯科医師, そして患者に希望と夢を与え続けている. とはいうものの, 理想的な青写真の一方で, その夢のような治療目標は, 歯科医師と患者がいつも確実に手に入れやすいものでもない. 現在もこの不確実な再生療法の成功率を少しでも上げるべくして, さまざまなアプローチの試みがされている. できる限り血流を確保すべくして歯科用顕微鏡の拡大視野下で行われたり, とても繊細なインスツルメントの開発, さまざまな成長因子の開発, 再生の足場となる骨移植材の開発, メンブレンの開発, また様々な新しい切開線や術式の開発などである.
 一方, 5年前の2017年2018年に発表されたAAP (アメリカ歯周病学会)・EFP(ヨーロッパ歯周病学会)の歯周炎の分類を受けて日本歯周病学会,日本臨床歯周病学会も歯周炎の分類を2018年に発表した. この2018年分類では歯周炎の重症度をStage1〜Stage4と分けており, 中等度より重症化したStage3は歯周外科のみならず欠損補綴のオプション, さらに重症化したStage4では, Stage3の治療に加えて, 2次性咬合性外傷,病的な歯の移動を特徴とすることが多く, このような重度歯周炎患者には欠損補綴や矯正治療を含む包括的な歯周治療や咬合再構成治療が必要になると言及されている.
にもかかわらず, この2017年のワールドワークショップのコンセンサスレポートで, Catonらは矯正力が歯周組織に及ぼす影響について2008年ワシントン大学の矯正医Bollenらが発表したシステマティックレビュー・メタ分析の論文を引用し, 歯周炎患者の矯正治療後には矯正治療をしなかった場合に比べて, 0.03mmの歯肉退縮, 0.13mmの歯槽骨吸収, 0.23mmのポケットデプスの増加に関連したと結論づけている.
つまり, 議論の余地はあるものの, 2017年までのエビデンスでは歯周炎患者の矯正治療は最小限ではあるが歯周組織にとって有害な影響があるかもしれないと述べられているのである.
あれから5年, 世界中でこの2017年の結論に異論が唱えられている. これまでも歯周炎患者に矯正治療を行った論文データは症例報告も含めて非常に多くあり, Cardaropoliらは2000年から7本の論文で, 歯周炎患者の前歯部垂直性骨欠損に対して, 早期に矯正治療を行い, アタッチメントゲインを報告した. 歯周再生療法を行った部位に矯正治療を行ってその効果を報告したものもある. 現在2022年5月まで, 歯周炎患者に対する矯正治療に関しては, 多くの大学, 矯正専門医, 歯周病専門医の間で議論が起こり, 近年では質の高い論文報告もされている.
これらを踏まえた上で, 本プレゼンテーションでは, 2022年5月時点での歯周炎患者に対する矯正治療の現在のエビデンスを総括した上で, 現在私の考える歯周再生療法と矯正治療の融合治療についてお話しさせていただきたい.

16:20~16:35
演題

ディスカッション(シンポジウム)