日本臨床歯周病学会

中部支部
教育研修会

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中部支部
支部研修会
現地開催

※現地開催のみで、オンライン(ライブ配信、オンデマンド配信)開催はございません。

未来の健口づくりのためのチームアプローチ ー歯周病・インプラント周囲病変のプロフェッショナルケアー

研修名:
日本臨床歯周病学会 中部支部 学術研究会 ※本研修は現地開催のみです。 オンラインでの配信は行いません。
場所:
〒464-0037 愛知県名古屋市千種区楠元町1丁目100番地 愛知学院大学 楠元キャンパス
図書館棟 4F 大講義室
現地開催人数制限有り(150名)
日時:
2024年9月8日(日) 10:00〜16:00
大会は終了しました
講演①
10:20 ~ 12:20 Dr,DHで学ぶ歯周病ならびにインプラント周囲疾患 in Nagoya ~歯周病編~ 【森野 ゆかり/DUOデンタルクリニック】 【大月基弘/DUOデンタルクリニック】
講演②
13:20 ~ 15:20 Dr,DHで学ぶ歯周病ならびにインプラント周囲疾患 in Nagoya ~インプラント周囲炎編~ 【大月 基弘/DUOデンタルクリニック】 【森野 ゆかり/DUOデンタルクリニック】
講演①
座長橋本 真理江医療法人 マイアベニュー なみき通り歯科
10:20~12:20
演題

Dr,DHで学ぶ歯周病ならびにインプラント周囲疾患 in Nagoya ~歯周病編~

森野 ゆかり
DUOデンタルクリニック
略歴

2015年 大阪府歯科医師会附属
歯科衛生士専門学校卒業
2015年〜2023年3月 大阪府内の歯科医院にて勤務
2022年 日本歯周病学会認定歯科衛生士取得
2023年 DHスタディグループDental LIT発足
    歯科衛生士育成訪問研修事業開始
2023年4月~ DUOデンタルクリニック勤務

大月基弘
DUOデンタルクリニック
略歴

1999年 広島大学卒業
2012年 スウェーデン・イエテボリ大学歯周病学科専門医過程卒業
    ヨーロッパ歯周病学会歯周病/インプラント専門医
2013年 DUOデンタルクリニック開業
2018年 大阪大学歯学部歯学研究科口腔科学分野 歯学博士
2023年 広島大学歯学部歯周診療科 客員講師
所属学会;日本歯周病学会専門医、日本臨床歯周病学会指導医/インプラント認定医
     口腔インプラント学会

抄録

日常臨床において歯周病はあまりにもありふれた病気であり,その治療や疾病予防はほぼすべての患者において考えなくてはならない.歯周病とは歯周病原細菌が歯の周りに堆積することによって引き起こされる炎症性疾患で,歯肉,セメント質,歯根膜ならびに歯槽骨よりなる歯周組織に悪影響を及ぼす.
 その治療の本質は原因因子であるプラークの除去であり,歯肉縁上,縁下のインフェクションコントロールが重要である.本日は,まず歯周病の基本知識の整理を簡単に行った後,歯周基本治療が奏功しなかった場合に行う歯周外科治療ならびに歯周組織再建的療法について説明したい.
 また,比較的まれで特殊な歯周疾患(壊死性潰瘍性歯周炎,著明な歯肉増殖を伴う歯周疾患,侵襲性歯周炎など)に遭遇したときに,どのように対峙していくべきかについても論じる予定である.
 インプラント周囲疾患はまだまだわかっていないことも多い疾患であるが,2000年代に入りまれな病気ではなく,インプラントに起こる併発症のなかでも最も多い疾患として認識されるようになった.加えてインプラント周囲炎にまで至ってしまうと,非外科的なアプローチでは完治させることが困難である.そのため外科的郭清処置が必要となるが,その治療が奏功する確率は低い.このように手強い疾患に対して当院がどのように対処しているのかを論じ,皆様と議論してみたいと思う.

 本日はDr,DH合同セッションということで,午前中に歯周病,午後にインプラント周囲疾患についてお話させていただく予定である.

講演②
座長安藤 壮吾医療法人 マイアベニュー なみき通り歯科
13:20~15:20
演題

Dr,DHで学ぶ歯周病ならびにインプラント周囲疾患 in Nagoya ~インプラント周囲炎編~

大月 基弘
DUOデンタルクリニック
略歴

1999年 広島大学卒業
2012年 スウェーデン・イエテボリ大学歯周病学科
専門医過程卒業
    ヨーロッパ歯周病学会歯周病/インプラント専門医
2013年 DUOデンタルクリニック開業
2018年 大阪大学歯学部歯学研究科
口腔科学分野 歯学博士
2023年 広島大学歯学部歯周診療科 客員講師

所属学会;日本歯周病学会専門医、日本臨床歯周病学会指導医/インプラント認定医
     口腔インプラント学会

森野 ゆかり
DUOデンタルクリニック
略歴

2015年 大阪府歯科医師会附属歯科衛生士専門学校卒業
2015年〜2023年3月 大阪府内の歯科医院にて勤務
2022年 日本歯周病学会認定歯科衛生士取得
2023年 DHスタディグループDental LIT発足
     歯科衛生士育成訪問研修事業開始
2023年4月~DUOデンタルクリニック勤務〜現在

抄録

日常臨床において歯周病はあまりにもありふれた病気であり,その治療や疾病予防はほぼすべての患者において考えなくてはならない.歯周病とは歯周病原細菌が歯の周りに堆積することによって引き起こされる炎症性疾患で,歯肉,セメント質,歯根膜ならびに歯槽骨よりなる歯周組織に悪影響を及ぼす.
 その治療の本質は原因因子であるプラークの除去であり,歯肉縁上,縁下のインフェクションコントロールが重要である.本日は,まず歯周病の基本知識の整理を簡単に行った後,歯周基本治療が奏功しなかった場合に行う歯周外科治療ならびに歯周組織再建的療法について説明したい.
 また,比較的まれで特殊な歯周疾患(壊死性潰瘍性歯周炎,著明な歯肉増殖を伴う歯周疾患,侵襲性歯周炎など)に遭遇したときに,どのように対峙していくべきかについても論じる予定である.
 インプラント周囲疾患はまだまだわかっていないことも多い疾患であるが,2000年代に入りまれな病気ではなく,インプラントに起こる併発症のなかでも最も多い疾患として認識されるようになった.加えてインプラント周囲炎にまで至ってしまうと,非外科的なアプローチでは完治させることが困難である.そのため外科的郭清処置が必要となるが,その治療が奏功する確率は低い.このように手強い疾患に対して当院がどのように対処しているのかを論じ,皆様と議論してみたいと思う.

 本日はDr,DH合同セッションということで,午前中に歯周病,午後にインプラント周囲疾患についてお話させていただく予定である.

中部支部

今改めて歯の保存を再考する

研修名:
【現地開催】令和5年度日本臨床歯周病学会 中部支部教育研修会 (※オンデマンドのみ  オンラインライブ配信はしません)
場所:
〒464-8650 名古屋市千種区楠元町1-100 4号館棟 2階(4201)
※現地開催とオンデマンド配信によるハイブリッド開催となります。(当日のライブ配信はございません)
※オンデマンド配信期間:令和6年3月15日~3月31日を予定しております。
※会員外参加登録費 歯科医師8000円 その他3000円 学生無料  
現地開催人数制限有り(100名)
現地開催人数制限有り(100名)
日時:
2024年2月25日(日) 09:30〜16:00
大会開催中のため申込みできません
会員発表
09:40 ~ 09:55 広汎型慢性歯周炎に対してインプラント治療,矯正治療による咬合再構成を行った一症例 【上田 直矢/医療法人社団青雲之志 徳重ガーデン歯科 矯正歯科(中部支部)】
09:55 ~ 10:10 審美領域における歯肉退縮に対して結合組織移植による根面被覆を行った一症例 【安藤 智基/医療法人SNAつしまファミリー歯科(中部支部)】
10:10 ~ 10:25 糖尿病患者にデンタルIQの向上を目指し、歯周基本治療を行った一症例 【梅田麻衣(中部支部)/朝日大学PDI岐阜歯科診療所 歯科衛生部】
10:25 ~ 10:40 喫煙を有する重度慢性歯周炎患者が歯周治療と生活習慣の改善により良好な経過をたどった一症 【桑原あゆな(中部支部)/なみき通り歯科・矯正歯科】
シンポジウム1
10:50 ~ 12:20 歯周病と国民皆歯科検診の関わり 【吉成伸夫/松本歯科大学歯科保存学講座(歯周)】
シンポジウム2
13:30 ~ 15:30 Soft tissue stability から考える歯周組織再生療法 【片山明彦/医療法人社団明佳会 有楽町デンタルオフィス】
会員発表
座長足立 信晃中部支部
座長有島 香奈中部支部
09:40~09:55
演題

広汎型慢性歯周炎に対してインプラント治療,矯正治療による咬合再構成を行った一症例

上田 直矢
医療法人社団青雲之志 徳重ガーデン歯科 矯正歯科(中部支部)
略歴

2007年 愛知学院大学歯学部卒業
2010年 徳重ガーデン歯科 矯正歯科開業
2018年 日本歯周病学会 認定医取得
2022年 日本成人矯正歯科学会 認定医取得
2023年 世界舌側矯正歯科学会 認定医取得

抄録

Ⅰ.はじめに 臨床において,広汎型慢性歯周炎による,病的歯牙移動や歯の欠損を伴った患者は少なくない.こういった症例においては, 歯周基本治療にて,口腔内環境が改善した後に,歯周外科治療, 歯列不正に対する矯正治療を行うなど包括的な対応が必要となる.今回,広汎型重度慢性歯周炎に対しインプラント治療,矯正治療による咬合再構成を行った一症例について報告する.
Ⅱ. 症例の概要 患者:67歳,女性,非喫煙者/初診:2019年2月 主訴:前歯が虫歯で痛い
全身的既往歴:特記事項なし 歯科的既往歴:40代の頃より近医での定期健診で歯周病の指摘をされてきたが,積極的な治療は受けてこなかった.最近,前歯の虫歯が悪化し痛み始めた為,当院を受診した.
検査所見:PCR:100%  PPD4mm以上:61.9% BOP(+):88.1% 動揺度2度 16 17 41
Ⅲ. 診断名 広汎型重度慢性歯周炎(ステージⅢ グレードB)
Ⅳ.治療計画 歯周基本治療(プラークコントロール,スケーリング,ルートプレーニング,習癖の修正,抜歯,歯内治療,う蝕治療)②再評価検査 ③歯周外科治療 ④再評価検査 ⑤口腔機能回復治療(咬合治療を目的にした矯正治療、インプラント治療, 修復・補綴治療.) ⑥ナイトガード装着 ⑦再評価検査 ⑧SPT

Ⅴ.治療経過 初診時より6か月間,歯周基本治療として,プラークコントロール,スケーリング•ルートプレーニング,11,21,16根管治療,38,48,36抜歯,習癖の修正,咬合調整をした.再評価後,良好なプラークコントロールの確立と習癖の改善が見られたため,歯周外科治療として,17にフラップキュレッタージを行った.再評価後、口腔機能回復治療として、矯正治療により,病的歯牙移動で近心傾斜してしまった37,47をアップライトし36,46部に補綴スペースを獲得した上で,インプラント治療を行った.その後,プロビジョナルレストレーションにて,咬合,歯周組織,インプラント周囲組織の安定を確認し,最終補綴処置を行った.ブラキシズムへの対策としてナイトガードを装着し,SPTへ移行した.
Ⅵ考察および結論 広汎型重度慢性歯周炎に対して,歯周基本治療後に歯周外科治療を行い,徹底した炎症のコントロールを行うとともに,病的歯牙移動により,近心傾斜移動してしまった37,47,を矯正治療によりアップライトし36,46に補綴スペースを獲得しインプラント補綴を行い,臼歯部の咬合再構成を行うことができた.また,下顎前歯部に歯石が沈着しやすかった為,プロビジョナルレストレーションにて舌感や歯間ブラシでの清掃性を確認し最終補綴することができた.今後も患者のモチベーションを維持しながら,SPTを継続する予定である.

09:55~10:10
演題

審美領域における歯肉退縮に対して結合組織移植による根面被覆を行った一症例

安藤 智基
医療法人SNAつしまファミリー歯科(中部支部)
略歴

• 2011年  朝日大学歯学部卒業
• 2011〜2012年 愛知学院大学歯学部臨床研修 修了
• 2012〜2016年 医療法人愛健会アベ歯科クリニック
• 2017年   医療法人SNA つしまファミリー歯科 院長

抄録

I,はじめに
日頃よく目にする病態のひとつに歯肉退縮がある.
これに対する治療法として知覚過敏処置やCR充填などの対処療法もあるが,長期経過を辿るとさらに進行する可能性は高い.
根面被覆の成功は歯周組織の安定を得ることだけでなく,視覚的に大きな変化が見られ患者の満足度は高い.
今回,知覚過敏を伴う歯肉退縮に対して,外科処置により歯周組織の安定と症状を改善することができた症例を報告する.

Ⅱ,症例の概要
患者:43歳,女性,非喫煙者
初診:2023年6月14日
主訴:左上の歯がしみる,歯が長い,歯肉が下がっている,歯磨き時に痛む
全身既往歴:なし 
歯科既往歴:先日まで他院にて定期検診で通院していた
主訴に対する処置は特別行われず,経過観察するも改善されず不信感から転院.当院を受診
診査所見:PCR10.2%, PPD4mm以上1.2%, BOP 2%, 42先天性欠損,AngleⅢ級,
切端咬合,適正なアンテリアルガイダンスの欠如
Ⅲ,診断名
限局型軽度慢性歯周炎(Stage I GradeA)咬合性外傷,歯肉退縮
Ⅳ,治療計画
① 歯周基本治療(プラークコントロール,スケーリング,ルートプレーニング,咬合調整)/②再評価検査/③歯周形成外科(#21,22,23,24歯肉退縮),#47歯周組織再生治療/④再評価検査/⑤口腔機能回復治療,咬合治療,矯正治療/⑥再評価検査/⑦SPT
Ⅴ,治療経過
主訴である23の歯肉退縮,知覚過敏は歯列不正による咬合の要素,歯槽骨に対する歯牙の位置,及び強いブラッシング圧が疑われる歯肉退縮であるため,まず歯周基本治療として口腔衛生管理を徹底し(特に強いブラッシング圧),細菌性プラークを除去.
再評価後,良好なプラークコントロールの確立が認められた.
#47遠心部歯周ポケットが3mmに改善されたため,歯周外科治療は今後,再発にて対応する.
診査診断を行い#21,22,23,24部位には予定通り,結合組織移植片を用いた根面被覆術を施術した.
再評価後,フェノタイプの改善が図れ,根面も被覆され,知覚過敏も消失した.
口腔機能回復治療として咬合治療を目的とした矯正治療を提示したが受け入れられなかった為,ナイトガードでの対処とした.
現在,プラークコントロール良好で歯周組織は安定している為,SPTに移行している.
Ⅵ,まとめおよび考察
根面被覆は術式も多岐にわたるが、原因をしっかり見極め、治療の根拠を明確にして目標とする治療結果が実現可能か、適応症を十分に吟味しプロトコールどおり行えば、予知性の高い外科処置である。
根面被覆の成功は視覚的に大きな変化が見られ、患者の満足度は非常に高い。
また、咬合の問題が完全に改善されない場合は,SPT時の咬合チェックは必須である.

10:10~10:25
演題

糖尿病患者にデンタルIQの向上を目指し、歯周基本治療を行った一症例

梅田麻衣(中部支部)
朝日大学PDI岐阜歯科診療所 歯科衛生部
略歴

• 2006年 朝日大学歯科衛生士専門学校 卒業
• 2020年 朝日大学PDI岐阜歯科診療所 勤務
• 2022年 岐阜県糖尿病療養指導士 取得
• 2023年 日本歯周病学会認定歯科衛生士 取得

抄録

Ⅰ.はじめに
2型糖尿病を有するデンタルIQの低い広汎型慢性歯周病患者に対して,医科歯科医療連携を実施し血糖コントロール状態に留意してセルフケアとプロフェッショナルケアを含めた歯周治療を行い,現在まで良好な結果を得た症例を報告する.
Ⅱ.症例の概要
初診時患者:50歳代前半,男性,非喫煙者(40歳まで喫煙).主訴:右下奥歯の歯茎が腫れた.全身既往歴:2型糖尿病.歯科既往歴:小学校以来約40年ぶりの歯科受診.診査所見:PCR75.9%,BOP59.8%,初診時の空腹時血糖値は129㎎/dl,HbA1c は6.6%であった.全顎的に口腔衛生状態は不良で,歯肉の発赤,腫脹は顕著であり,多量の歯石の沈着も認めた.#38,#48は水平埋伏智歯,#48と#47の間には多量のプラークや食渣を認めた.#47歯肉には著明な腫脹と排膿がありX線所見から遠心にカリエス,根尖病変を認めた.
Ⅲ.診断名
広汎型慢性歯周炎(ステージⅡグレードB)
Ⅳ.治療計画
① 医科への紹介状(医科との医療連携)/②主訴の改善(#48抜歯)/③歯周基本治療(患者教育,口腔衛生指導,スケーリング,ルートプレーニング,糖尿病患者への配慮,う蝕治療)/④再評価/口腔機能回復治療(補綴治療)/⑥再評価/⑦SPT
Ⅴ.治療経過
主訴に対して消炎後,#48の抜歯処置を行い,歯周基本治療を開始した.糖尿病は投薬治療中であり,HbA1cは6.6%,空腹時血糖値は129mg/dlであった.糖尿病と歯周病は相互に重症化へ影響し合うため,歯周治療を行うことは,血糖コントロールにおいても重要であることを説明した.患者は口腔内の状況を把握することで,セルフケアの必要性について理解し,モチベーションの向上に繋がった.ブラッシング法の指導と全顎的なSRPを徹底した.#47は治療を試みたが,保存不可能で抜歯を勧めたが,希望されなかった.再評価後,#37は深いポケットが残ったが,今後注意深く経過観察し,現在SPTに移行している.口腔内環境が改善され、その結果血糖コントロールも改善傾向にある.
Ⅵ.まとめおよび考察
歯周治療の重要性に見識がなかった糖尿病患者に,糖尿病と歯周病の関係性を理解してもらい,医科との連携を図ることで安心して治療に参加して頂けた.歯ブラシや補助的清掃用具を適切に使用することにより,プラーク除去率を向上させ,歯石も沈着しにくくなることを実感して頂けた.今後も患者の状況に合わせて,医科と歯科の双方向から患者を支えていけるよう専門的口腔衛生管理を行い,患者のサポートをしていきたいと思う.

10:25~10:40
演題

喫煙を有する重度慢性歯周炎患者が歯周治療と生活習慣の改善により良好な経過をたどった一症

桑原あゆな(中部支部)
なみき通り歯科・矯正歯科
略歴

• 2009年 名古屋歯科衛生士専門学校(現:名古屋歯科医師会附属歯科衛生士専門学校)
• 2012年 なみき通り歯科・矯正歯科 入社

抄録

[はじめに]患者:47歳,女性.初診日:2017年3月21日.主訴:上の前歯が痛い.歯がグラグラする.審美障害.
[症例の概要]4mm以上のPPDの割合:72.4%,BOP陽性率:80.7%,PCR:63.4%
X線画像検査所見:全顎的に水平性の骨吸収像を認めた.また,#11には破折線を認め,その他#16,36,46,47う蝕も認められた。
[診断名]広汎型重度慢性歯周炎 ステージⅣ グレードC
[治療計画]1)歯周基本治療(TBI,SRP,抜歯,#22歯内治療),2)歯周外科,3)口腔機能回復治療,4)SPT
[治療経過]口腔衛生指導,スケーリング・ルートプレーニング,う蝕治療を実施し,再評価後,口腔機能回復治療(インプラント治療及び矯正治療)を行った.再評価,SPTへ移行と共に,再度口腔衛生指導を行った.また,高血圧,精神疾患に関しては,かかりつけ医にて治療の継続をした.
[まとめおよび考察]本患者は高血圧,精神疾患(メランコリー型うつ病)があり,当院を受診した時点での口腔内所見としては,感染のコントロールができておらず,歯周病も進行している状態だった.歯周病の修飾因子でもある喫煙の既往もあり,外科治療を行う上でのリスク因子になることを十分に説明,禁煙支援も動機付けの中で行った.前歯の動揺も強い状態で,食事も満足に摂れておらず,軟食中心の食事になっていた.歯周病治療と口腔機能回復治療を行い,患者自身が食事を摂ることの楽しさを伝えてくれるようになり,歯周基本治療やSPTを担う歯科衛生士として,患者の声を聴き,管理栄養士と食事をしっかり摂れることの重要性を共有すると共に,歯科医師と適正な治療計画を立て,治療を進めることが重要であると学んだ.数十年ぶりの歯科受診ということもあり,モチベーションの維持が困難な症例であったが,来院間隔を相談し,無理のない間隔での通院を提案したり,歯科衛生士が担当制で初診からSPTまで継続して関わることで信頼関係も構築でき,良好な経過をたどることができた

シンポジウム1
座長鈴木 謙二(中部支部)
10:50~12:20
演題

歯周病と国民皆歯科検診の関わり

吉成伸夫
松本歯科大学歯科保存学講座(歯周)
略歴

【略歴】
1986年  愛知学院大学歯学部卒業
1990年  愛知学院大学歯学部助手(歯科保存学第三講座,歯周病科)
1995年  愛知学院大学歯学部講師(歯科保存学第三講座,歯周病科)
2001-02年 ノースカロライナ大学チャペルヒル校 口腔と全身疾患センター客員研究員
2006年 松本歯科大学教授(歯科保存学第1講座,歯周病科)
2010-12年 松本歯科大学副学長
2012-15年 松本歯科大学病院副病院長
2014年 松本歯科大学歯科保存学講座(歯周)教授(講座統合に伴い名称変更)
2015-16年 松本歯科大学病院歯科副病院長
2021-23年 日本レーザー歯学会理事長

【所属】
日本歯周病学会・常任理事・専門医・指導医
日本歯科保存学会・理事・専門医・指導医
日本レーザー歯学会・理事・専門医・指導医
日本老年歯科医学会・評議員・専門医・指導医

抄録

現在、我が国の歯科医療は、従来の治療から予防と管理、さらに口腔健康から全身健康へ変化し、基礎疾患をもたない患者の歯・歯周組織を対象とした健常者型治療から、治療のリスク・難易度の増加した高齢者型治療へと変化することが求められています。
このような状況の中で、歯周病は口腔という局所の感染症と捉えるだけでなく、全身に対する歯周ポケットからの持続的な慢性炎症性疾患としても捉えられています。1986年にOffenbacherが歯周病と全身との因果関係,関連を解明する新たな学際領域を「Periodontal medicine」と名付けて,歯周病学にパラダイムシフトを生じさせ,それ以来歯周病と全身との関係に関する多くの研究が行われるようになりました。歯周病と糖尿病,心臓血管疾患,早産・低出生体重児をはじめ,関節リウマチ,非アルコール性肝臓疾患,アルツハイマー型認知症,慢性腎臓病,炎症性腸疾患,ある種の悪性腫瘍や自己免疫疾患についても関連が示唆され,今や歯周病は50以上の全身疾患と関連していると報告されています。
今後,これらの関連を「国民の健康」という実益へと社会実装できるようにするために,国民へのアピールや医科歯科連携が必要となります。しかし,まだ国民に歯周病と全身との関連性は周知されていないのが現状で,アピールと同時に,歯周病の予防効果を併せ持つ歯科健診が非常に重要と思います。現在,法律で義務化されている歯科健診は,高校卒業時の 18歳から健康増進法による歯周病健診の始まる40歳まではありません。さらに日本における歯科健診の受診率は非常に低く、わが国で成人期以降の方は歯周病健診にほとんど受診されていないのが実状と思われます。
そこで,政府の「骨太の方針2022」に盛り込まれた「国民皆歯科健診の具体的検討」に期待が持てます.国民皆歯科健診とは,「すべての世代の国民が生涯にわたり歯科検診を受けられる制度」であり,この新制度を導入されると、口腔の健康増進を通じた全身疾患の予防ができ、健康寿命延伸と医療費削減が予想されます。また、同方針には「全身と口腔の健康に関する科学的根拠の集積と国民への適切な情報提供」という文言も明記されており,歯科口腔保健に関する政策的関心も高まっていることがわかります。
本講演では,歯周病予防・治療から全身への健康を目指すにあたり,国民皆歯科健診への期待についてお話ししたいと思います。

シンポジウム2
座長藍 浩之(中部支部)
13:30~15:30
演題

Soft tissue stability から考える歯周組織再生療法

片山明彦
医療法人社団明佳会 有楽町デンタルオフィス
略歴

1999年      東京歯科大学歯学部卒業
1999年 慶應義塾大学医学部歯科口腔外科学教室入局
2001年    東京歯科大学大学歯周病学講座大学院
2005年   東京歯科大学歯周病学講座助手
2007年      慶應義塾大学医学部歯科口腔外科学教室講師(非常勤)
2007年      神田デンタルクリニック開設
2007年      稲毛デンタルクリニック開設
2008年      医療法人社団明佳会理事長
2012年     東京歯科大学歯周病学講座講師(非常勤)
2012年      有楽町デンタルオフィス開設(神田デンタルクリニック移転)
2015年      東京歯科大学水道橋病院臨床講師
2021年      東京歯科大学水道橋病院臨床准教授

抄録

歯周組織再生療法とは組織学的なセメント質,歯根膜,歯槽骨を含む歯の支持組織の再生と定義される.この歯周組織再生療法は1982年にNymanらがGTR法の臨床報告を行い,1997年にHeijiがエナメルマトリックスデリバティブ(EMD)の臨床報告を行い,多くの研究と臨床報告がなされてきた.そして2016年に国内から歯周組織再生医薬品として塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)を主体とするリグロスが発売され,国内からも多くの研究・臨床報告が発表され注目されている.
 組織再生において,細胞(cell),成長因子(growth factor),足場(scaffold)が必要とされるが,それらを取り巻く最外層にある軟組織が治癒しないと再生療法の失敗となり得る.
そのため,軟組織の治癒が再生療法の成功に重要な役割を担うのではないかと推測される.このことについては,「軟組織のPheno-type」,そして「軟組織治癒に対する外科的手技」の2つが重要であると推考する.軟組織のPheno-typeについては,歯肉の角化歯肉幅(KTW)と歯肉の厚み(GT)に着目し「再生療法における軟組織の難易度分類」について船登とともに発表し,再生療法時における結合組織移植の必要性を提唱した.
再生療法時に角化歯肉幅が少なく,歯肉が薄いPheno-typeの場合に術後,歯肉の裂開を認め失敗に陥るケースを多く経験し,可能であればそのようなケースも成功に導けないかと考えた.そのような場合にPheno-typeの改善のため結合組織移植を併用すると成功率が上がることが明らかになり,この事象を明らかにするためにin vivoにおけるビーグル犬を用いたⅢ度の根分岐部病変において,結合組織移植を用いた再生療法が有効であることが確認できた.さらに,臨床において骨欠損がある上に歯肉退縮も併発している場合,その部位に再生療法を行うときに歯肉(軟組織)と骨(硬組織)を同時に再生する,Supracrestal regeneration(支持組織の再生に加えて失われた軟組織:歯肉退縮・歯間乳頭などの再生)が可能となってきた.
 さらに付け加えさせて頂き,日々の臨床現場では歯周治療,再生療法の成功には歯科医師―歯科衛生士―患者間のRelationshipが重要であろうことを実感する.
この度の講演ではこれらのことを踏まえて発表させて頂き,皆様とともにディスカッションできればと思う.

中部支部

歯周疾患を予防する ~エビデンスに基づいた次世代型予防歯科医療の今~

研修名:
中部支部学術研究会 *現地会場参加のみWebでの視聴はありません.
場所:
〒464-8650 名古屋市千種区楠元町1-100
愛知学院大学歯学部 楠元キャンパス 図書館棟4階 大講義室(会場を変更しました)

本研究会は現地開催のみとなります。オンデマンドもありません。また、当日はランチョンセミナーがあります。その為参加いただいた方にはお弁当が配布されます。
※ウェブでの申し込みをされても、ウェブ開催もオンデマンドもありません。
※11月13日(月)以降にお申し込みをされた場合は、お弁当の配布はありません。
現地開催人数制限有り(200名)
日時:
2023年11月19日(日) 10:00〜16:00
大会は終了しました
基調講演
10:20 ~ 12:20 「Think Twice! ~患者さんの健康を守るプロとして~」 【徳本 美佐子/歯科衛生士セミナー講師】
基調講演
13:20 ~ 15:20 「イノベイティブ・ペリオヘルス ~リスクアセスメントと科学が想像する。歯周治療の融合~」 【築山 鉄平/医療法人雄之会 つきやま歯科医院専門医療クリニック天神】
基調講演
座長橋本 真理江なみき通り歯科・矯正歯科(中部支部)
10:20~12:20
演題

「Think Twice! ~患者さんの健康を守るプロとして~」

徳本 美佐子
歯科衛生士セミナー講師
略歴

経歴
1977年03月 埼玉県立厚生専門学校卒業(現埼玉県立大学健康開発学科口腔保健科学専攻)
1977年04月 笹塚共同歯科入局(東京都)
         以降、複数の医院にて歯科衛生士として勤務
       他に歯科医師会障害者診療や地区保健センターでの検診・在宅寝たきり医療等
       を経験
2007年12月 日吉歯科診療所入局(山形県酒田市)
2010年04月 歯科衛生士セミナー講師活動開始(MTM構築・導入セミナー)(偶数月)
        日吉歯科診療所勤務(奇数月)
2015年07月 日吉歯科診療所退局
2015年08月 歯科衛生士セミナー講師(MTM構築・導入セミナー)(通年)
2020年05月 Webセミナー開始
主な専門分野
 歯科衛生士としての実務経験と知識、施術に対する技能
 特に歯科予防診療分野に関する実務経験と専門的知識及び技能 

抄録

「Think Twice!」患者さんの健康を守るプロとして        徳本美佐子

MTM(Medical Treatment Model)を目指す歯科医院への訪問セミナーを行い、歯科衛生士教育に携わって、今年で13年になります。歯科医療従事者である私たちは、カリエスも歯周病も、本来は、予防が簡単にできる稀な病気であることを理解し、そのことを来院した患者さんに説明し、予防を広める活動をしながら、臨床にあたってきました。
しかし、その間に、歯周病と全身疾患のかかわりが、メディアでも取り上げられるようになり、歯周病を予防することを希望して来院される患者さんも、増えてきていると感じています。そんな患者さんの、希望をかなえられるかは、予防の担い手である歯科衛生士の力量にかかっています。また、若い患者さんの中には、歯周病のリスクが高いにもかかわらず、そのことに気づいていてもらえない患者さんもいらっしゃいます。歯周病は、気づくのが早ければ早いほど、リスクが高くても、進行を止めることは簡単です。少しの骨吸収に気づけるかどうかが重要です。どのような歯科衛生士と出会うかが、患者さんにとって、とても重要なことになります。患者さんの口腔の健康を守るプロとして、どんな目を持ち、どのように考えたらいいか、今までの経験からお話しさせていただきます。皆さんの臨床の一助となれれば幸いです。

基調講演
座長安藤壮吾なみき通り歯科・矯正歯科(中部支部)
13:20~15:20
演題

「イノベイティブ・ペリオヘルス ~リスクアセスメントと科学が想像する。歯周治療の融合~」

築山 鉄平
医療法人雄之会 つきやま歯科医院専門医療クリニック天神
略歴

略歴: 
2001年 九州大学歯学部 卒業
2001〜2004年 佐賀医科大学(現佐賀大学医学部)歯科口腔外科 勤務
2004〜2006年 東京都中央区日本橋 矢澤歯科医院 勤務
2006〜2009年 タフツ大学歯学部歯周科post-graduate program 修了
2009年 アメリカ歯周病学会認定 歯周病インプラント学専門医 取得
   (Diplomate, American Board of Periodontology)
2010年 アメリカ歯科修士取得(Master of Science)
2009〜2010年 タフツ大学歯学部審美補綴 フェロー
2013〜 福岡歯科大学予防歯科学講座 非常勤講師
2014年〜2017年 タフツ大学歯周病学講座 非常勤臨床助教授
2017年〜 ヨーロッパインプラント学会認定医
2011年〜 医療法人雄之会 つきやま歯科医院 

抄録

初診からメインテナンスまでの一連の治療の内容と流れを整理するためにアメリカ専門医教育ではPhase分類を用いることが一般的である。一方、う蝕や歯周病の発症を未然に防ぐメディカルトリートメントと呼ばれるBo Krasse教授が提唱されたリスクアセスメントに基づく管理型予防歯科の流れがあるが、この2つのPhase分類とメディカルトリートメントモデルは一つの形として臨床応用することが可能である。
本セッションではメディカルトリートメントモデルを土台にし、科学的根拠に基づく歯周病治療をどのように専門医レベル、クリニックレベルで実践しているかを症例を通じて供覧したいと思う。

中部支部

包括的歯科治療における歯周病治療の重要性 ~チームアプローチのゴールデンスタンダード~

研修名:
令和4年度日本臨床歯周病学会 中部支部教育研修会
場所:
〒453-0015 愛知県名古屋市中村区椿町1-16 井門名古屋ビル2~9階 (事務所:7階)
TKPガーデンシティーPREMIUM名古屋新幹線口 2A
現地開催人数制限有り(60名)
日時:
2023年2月19日(日) 09:15〜16:00
大会は終了しました
会員発表
09:40 ~ 09:55 広汎型中等度慢性歯周炎患者に対して包括治療により審美性と機能性の改善を行った一症例 【足立 信晃/足立歯科医院(中部支部)】
09:55 ~ 10:10 Ⅱ型糖尿病を有する広汎型重度慢性歯周炎患者に包括的治療を行った一症例 【橋本 真理江/なみき通り歯科・矯正歯科(中部支部)】
シンポジウム
10:20 ~ 12:20 1部 歯周治療を成功させるための歯科医師,歯科衛生士による 包括的な取り組みについて 【岩田 光弘/医療法人社団さくらデンタルクリニック】 【山崎 瑞穂/株式会社DH Pro.School】
13:20 ~ 15:20 チームで取り組む歯周外科と術後管理、メインテナンス ―リアルな現場をどう乗り切るか― 【水上 哲也/医療法人水上歯科クリニック】 【下田 裕子/医療法人水上歯科クリニック】
会員発表
座長前岡遼馬前岡歯科医院
座長有島 香奈かずま歯科クリニック
09:40~09:55
演題

広汎型中等度慢性歯周炎患者に対して包括治療により審美性と機能性の改善を行った一症例

足立 信晃
足立歯科医院(中部支部)
略歴

• 2006年 松本歯科大学卒業
• 2007年 松本歯科大学病院臨床研修終了
• 2009年 医療法人 足立歯科医院勤務

抄録

日常臨床では歯周炎のみならず,欠損や歯の位置異常,う蝕,歯肉歯槽粘膜の問題等も同時に抱える複雑な症例によく遭遇する.そのような患者においては歯周治療だけでなく様々な問題を解決し,審美性と機能性を改善するために包括的で有効な治療計画を立案する必要が求められる.今回,中等度慢性歯周炎患者に対し,歯周基本治療後にインプラント治療や限局矯正,また上顎前歯部欠損部顎堤吸収に対し,歯槽堤増大術として軟組織移植術を行い固定性ブリッジによる最終補綴処置を行なって良好な結果が得られた一症例を報告する.

09:55~10:10
演題

Ⅱ型糖尿病を有する広汎型重度慢性歯周炎患者に包括的治療を行った一症例

橋本 真理江
なみき通り歯科・矯正歯科(中部支部)
略歴

2010年 名古屋ユマニテク歯科医療専門学校 歯科衛生学科 卒業
    一般開業医 勤務
2014年 なみき通り歯科 入社

抄録

Ⅱ型糖尿病を有する多数歯欠損を伴う広汎型重度慢性歯周炎患者に対して,血糖コントロール状態に留意して歯周治療を行い,現在まで良好な結果を得た症例を報告する.
本症例を通し,患者に糖尿病と歯周病の関係をしっかり理解させ治療に参加させることや,長期間の治療期間中も患者を支え,励まし続けることは歯周治療における歯科衛生士の重要な役割であることを再認識した。今後も患者の状況に合わせ来院間隔や全身状態を考慮しながら,維持・管理を行なっていく.

シンポジウム
10:20~12:20
演題

1部 歯周治療を成功させるための歯科医師,歯科衛生士による 包括的な取り組みについて

岩田 光弘
医療法人社団さくらデンタルクリニック
略歴

岩田光弘
略歴:
1990年 岡山大学歯学部卒業
1990年 岡山大学歯学部口腔外科学第二講座入局
1995年 綾上歯科診療所開設
2000年 博士(歯学)授与(岡山大学)
2000年 医療法人社団綾上歯科診療所理事長
2006年 さくらデンタルクリニック開設
2010年 JIADSペリオコース講師
2014年 医療法人社団さくらデンタルクリニック理事長
2016年 東京歯科大学客員講師
2021年 東京医科歯科大学非常勤講師
日本臨床歯周病学会認定医・指導医,
日本臨床歯周病学会歯周インプラント認定医・指導医
日本歯周病学会歯周病専門医・指導医
日本口腔インプラント学会専門医

山崎 瑞穂
株式会社DH Pro.School
略歴

1996年 (現)朝日医療大学校卒業
2007年 スウェーデン イエテボリ大学研修
2007年 NPO日本歯周病学会認定歯科衛生士取得
2014年 歯科衛生士研修会スタディーグループ“苺の会”発足
2016年 一般社団法人日本医療機器学会第2種滅菌技士取得
2018年 株式会社DH Pro.School設立
2018年 日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士取得

抄録

歯周治療の中心となるのは,感染のコントロールで,まずプラークコントロールを徹底し,スケーリング・ルートプレーニングを行うことで炎症をコントロールし,歯周炎を増悪させるリスク因子を可能な限り排除していく,歯周基本治療が歯周治療で最も重要であるということは疑いの余地はない.しかしながら,歯周基本治療を徹底することで,歯周炎の進行を抑制することはできても,一度失った歯周組織を回復させることは基本的に困難で,残存した深い歯周ポケットはその後の患者のセルフケアを難しくし,SPTを煩雑化させる要因となり得る.
 現在,塩基性線維芽細胞増殖因子製剤を用いたリグロス®の登場によって,歯周組織再生療法を一般臨床に取り入れやすくなり,歯周基本治療後の残存した問題点について外科的に対応し,より望ましい歯周環境を獲得できる機会が多くなった.そして,再生療法に用いる材料や薬剤ばかりでなく,低侵襲でかつ歯間乳頭温存ための新しいフラップ・デザインの開発によって,その成功率も向上しているように感じる.しかしながら,歯周組織再生療法は,インプラントを含むその他の歯科治療のいずれの術式と比較しても,確実に治療結果が予測できる治療法とはいえず, 術前の包括的な診査診断や適応症の選択,歯周基本治療の質など,手術前にその成否を決定する要素が多く存在することも事実である.また,動的治療終了後のSPTに移行しても,患者を取り巻く生活習慣や背景の変化によって,口腔内は変化しつづける可能性があり,その変化を察知できるかどうかも治療結果の長期安定に影響を与えると考える.
 そのため,術前の医療面接からはじまる患者情報の収集から,診査診断,質の高い歯周基本治療,SPTにおける患者を取り巻く様々な環境の変化に対応するため,他のどの歯科疾患に対する治療より歯周治療は歯科医師と歯科衛生士の綿密な連携が必要となる.
 本講演では,歯周再生療法の成功率を上げるためのどのような点に着目しているかを述べるとともに,歯周治療はその他の歯科治療と比較しても歯科衛生士の役割が特に重要視されるため,チーム医療としての歯周治療の取り組み方を中心に,臨床例を提示し,知見を述べたいと思う.

13:20~15:20
演題

チームで取り組む歯周外科と術後管理、メインテナンス ―リアルな現場をどう乗り切るか―

水上 哲也
医療法人水上歯科クリニック
略歴

1985年 九州大学歯学部卒業
1987年 九州大学第1補綴学教室文部教官助手
1989年 西原デンタルクリニック勤務
1992年 福岡県福津市(旧宗像郡)にて開業
2007年 九州大学歯学部臨床教授
2011年 鹿児島大学歯学部非常勤講師

下田 裕子
医療法人水上歯科クリニック
略歴

1996年 福岡医科歯科技術専門学校(現 博多メディカル専門学校)歯科衛生士科卒業
同年    医療法人水上歯科クリニック勤務
現在に至る

抄録

適切な歯周基本治療が行われた後に必要に応じて外科的介入が検討されます。
外科的介入に際しては、再評価における出血部位、歯周ポケット値、骨欠損の程度や根分岐部病変の交通度などの病態に加えて患者の有するリスク因子や生活背景、協力度、経済事情などを総合的に検討しなければなりません。従って担当歯科医師と衛生士との情報交換が重要になります。
 外科治療選択においては、切除療法、組織付着法、再生療法のいずれかを用いるのか、そして術式や使用する材料について吟味がなされます。これらの決定には担当歯科医師の意見、そして歯科衛生士の意見が反映され、複数の選択肢の中からの選択決定が行われます。私たちの理想とする治療方針と患者の希望はしばしば平行線を辿ることもあり、実際のコンサルテーションは複数回に及ぶことも少なくありません。このコンサルテーションは当院では担当歯科衛生士が中心となって行いますが、歯周基本治療の過程での信頼関係が大きな影響を与えます。
 外科処置においては、担当歯科医師、担当歯科衛生士とアシスタント、その他サプライ担当者などのチームによる連携が必須となります。この連携が円滑に行われることで手術時間の短縮や手術の侵襲度合いにより小さくすることができます。具体的には術者と介助者の絶妙なタイミング、ぶつかることのないスムースな動き、阿吽の呼吸などが理想的な外科手術の進行につながります。
 術後管理も見逃してはならない重要なプロセスです。術後しばらくは患者によるセルフのプラークコントロールはできません。この期間はプロフェッショナルケアーが主体となります。また、創傷治癒において創傷部の安定、安静が不可欠なため術前の適切な指導と同様に術後の管理における注意深い観察が必要となります。
 治療後のメインテナンスは治療の予後において重要です。治療結果は短期的なものではなくできるだけ長期的であることが必要です。そのためにはモチベーションの維持やコンプライアンスにおいて様々の工夫が必要となります。
 以上のように外科的介入からメインテナンスに至るまでのプロセスではチームとしての協力作業が必須となります。今回はこの共同作業の実際についてお話しさせていいただきたいと思います。様々な文献を紐解いてみたとしても実際の現場はリアルで生々しいことが多々あることが現実です。この事実を踏まえ皆様にできるだけ有益な情報を提供できれば幸いです。

中部支部

『歯周病治療を進めるうえで知っておきたい全身疾患との関連~認知症・糖尿病・喫煙の影響を各専門医から学ぶ~』

研修名:
中部支部学術研究会
場所:
TKPガーデンシティPREMIUM名古屋ルーセントタワー
〒451-6016 愛知県名古屋市西区牛島町6-1 名古屋ルーセントタワー 16階(事務所:16F)
現地開催人数制限有り(35名)
日時:
2022年11月13日(日) 10:00〜14:50
大会は終了しました
基調講演
10:10 ~ 11:40 認知症専門医が教える! 脳の老化を止めたければ歯を守りなさい! 【長谷川嘉哉/医療法人ブレイン土岐クリニック】
12:30 ~ 13:30 糖尿病とは ―その歴史と最新の治療も含めてー 【楠 正隆/名古屋大学総合保健体育科学センター 糖尿病運動機能代謝学  特任教授】
13:40 ~ 14:40 歯周治療における禁煙支援の位置づけとその役割!?  ―歯科衛生士として,必要なこと!― 【稲垣幸司/愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授】
基調講演
10:10~11:40
演題

認知症専門医が教える! 脳の老化を止めたければ歯を守りなさい!

長谷川嘉哉
医療法人ブレイン土岐クリニック
略歴

【略歴】
1990年3月名古屋市立大学医学部卒業
1990年5月名古屋市立大学第2内科(現:脳神経内科)
1992年4月岐阜県立多治見病院神経内科
1996年4月名古屋市厚生院付属病院神経内科
2000年4月医療法人ブレイン理事長
現在に至る
【所属学会、役職、資格など】
① 日本神経学会専門医
② 日本内科学会認定内科専門医
③ 日本老年病学会専門医
④ 介護支援専門員
⑤ ファイナンシャルプランナー

医療法人『ブレイン』理事長
NPO法人『グッドシニアライフ』代表理事
NPO法人『PAL研究会』代表理事
社団法人『東海相続支援コンサルティング』代表理事
社団法人『ケアリングデザイン』監事

抄録

医療法人ブレイングループは、認知症専門外来を中心に、脳神経内科、消化器内科、訪問診療を行っている。グループ内では、デイケア、デイサービス、訪問看護、訪問リハビリ、居宅介護支援事業、グループホームも運営している。
2000年4月開業時より、在宅医療では歯科医・歯科衛生士と連携をとっている。昨今、歯周病菌と認知症の原因物質アミロイドβの関連が証明されている。そのため、2018年2月より土岐内科クリニック外来の一室に、歯科用のチェアを設置、歯科衛生士の雇用に至っている。今回の講演では、医科歯科連携の最先端をいくブレイングループの知見につきご紹介する。
1) 歯科の医療機関で見ている患者さんは、氷山の一角でしかない。認知症患者の多くは歯科受診もせず、入れ歯も外さず、歯すら磨いていない。一人の患者さんは、2年間入れ歯を外していなかった。歯科衛生士曰く、「認知症患者さんの口腔内はごみ屋敷」。
2) 人間は、一嚙みで脳に血流が3.5ml送られる。噛むために歯が残っていることは極めて重要である。しかし、当院認知症外来の25%は総入れ歯であり、従来の報告に比べその比率が高くなっている。
3) 歯周病菌が認知症発症に関連していることを考えると、口腔ケアは極めて重要である。しかし、外来で認知症患者さんの口腔内を観察すると、認知症の発症により、さらに口腔環境が悪化する負のスパイラルに陥っていると考えられる。
4) 人体の表面積で言えば、10分の1にも満たない口腔内を、脳の中では約3分の1という広範囲が支配している。つまり、口腔内を刺激すると脳がたちまち若返るのである。
5) 認知症に良いとされることは、多数報告されている。認知症になると感情を支配する扁桃核が、記憶を司る海馬より先に委縮する。そのため、効果の基準は「心地良さ」である。口腔ケアを終えた患者さんは、一様に心地よい表情をされている。

今後、医科歯科連携の普及は多くの患者さんに恩恵を与えます。そのためにも双方の、情報伝達、情報共有が重要と思われる。

12:30~13:30
演題

糖尿病とは ―その歴史と最新の治療も含めてー

楠 正隆
名古屋大学総合保健体育科学センター 糖尿病運動機能代謝学  特任教授
略歴

1981年 愛知医科大学卒業
愛知医大附属病院第一内科・愛知県がんセンター 勤務
1989年 愛知医大大学院内科系 修了
同時に医学博士号取得 平成1年3月18日
愛知医科大学第一内科 助手
1989~1992年
オーストラリア、ニューサウスウェールズ大学附属セントヴィンセント病院
国際糖尿病学会副会長 ドナルド・チズム教授教室 留学
Oversea’s Clinical Fellow
1990年 オーストラリア・ニューサウスウェールズ州 医師免許 取得
1992年 愛知医科大学 第一内科 助手
1993年 メイトウホスピタル内科部長
1994年 愛知医科大学 第一内科 講師
1998年 アメリカ糖尿病学会プレジデントポスターに選出
12月5日 糖尿病専門医 取得(認定番号 1800号)
2000年 愛知医科大学 内分泌・代謝・糖尿病内科 講師
2003年 人命救助にて愛知医科大学理事長 表彰
2004年 愛知医科大学メディカルクリニック 講師
11月28日 糖尿病指導医 取得(認定番号1154号)
2009年 愛知医科大学メディカルクリニック 内科准教授
2015年 名古屋大学総合保健体育科学センター 糖尿病運動機能代謝学 寄附研究部門教授
2020年 名古屋大学総合保健体育科学センター糖尿病運動機能代謝学 寄附研究部門 特任教授
現在に至る
【資格】   日本糖尿病学会専門医・指導医
      日本糖尿病協会療養指導医
      日本人間ドッグ学会認定医・専門医・指導医
      日本抗加齢学会専門医
      日本医師会認定 / 健康スポーツ医・産業医
      日本内科学会認定内科医 他
【論文(Top Name)】
   Diabetes, Diabetologia, Metabolism, Experimental Gerontology,
European Journal of Pharmacology, etc.
【所属学会】 国際糖尿病学会
      アメリカ糖尿病学会
      ヨーロッパ糖尿病学会
      日本糖尿病学会
      日本肥満学会
      日本抗加齢学会 etc. 多数
Reviewer:Diabetologia, Metabolism, Life Science誌 etc.

賞:1998年度アメリカ糖尿病学会プレジデントポスター
賞罰:愛知医科大学理事長 表彰

抄録

歯科と糖尿病との関連については近年の分子生物学の飛躍的な進歩に伴い、
歯周病菌の遺伝子解析にまで研究は進み、次々と新しい知見が報告されている。今回の講演内容はその様な最新研究の各論ではなく、糖尿病の歴史と歯周病以外の最近のトピックス、将来の治療ツール、抗加齢につながる糖尿病の運動療法などの内容について述べたい。現在糖尿病と言われている疾患が人類の歴史に初登場するのはエジプトにおいてである。ナイル川沿いの古都テーベでドイツ人考古学者エベルスによって発見され紀元前16世紀のパピルスエベルス中に今で言う糖尿病の記載がある。その原因は長い間過食によるものと考えられて来たが、近年は食事の摂取カロリーは頭打ちにも関わらず運動量の低下により治療を必要とする糖尿病患者さんは増え続け、それに伴い治療法も進化してきた。治療法の中で最大のトピックは1921年に発見されたインスリンとその注射療法である。その発見の歴史には今なお解明されていない謎も多くある。基本的に糖尿病は慢性的な高血糖状態が続き、それによって種々の代謝疾患が引き起こされるが、血糖には罪はなく、インスリンさえまともに作用すれば生きる為のエネルギーとして生体の為に使用される。特に重要な器官である脳や神経において糖はほとんど唯一のエネルギー源として使用される。その過程においては糖の血流から各組織への移行と、各組織中での利用の2つのステップが重要で、両者において今後の糖尿病治療へつながる新しい研究発表がされている。6年前に上梓された尿中に糖を排泄して血糖値を下げるSGLT2という糖尿病薬には終末糖化産物(AGEs)や腸内細菌フローラの改善作用も報告されて来た。一方スマートホーンと24時間持続血糖測定チップも実臨床に応用が開始され始めた。特に食後の運動による食後血糖降下療法が抗加齢にも有効であると報告され、近年の糖尿病患者増加の第1の原因とされている運動不足を改善することが重要となっている。
時間 12:30〜13:30

13:40~14:40
演題

歯周治療における禁煙支援の位置づけとその役割!?  ―歯科衛生士として,必要なこと!―

稲垣幸司
愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授
略歴

1986年3月 愛知学院大学大学院歯学研究科修了(歯科保存学専攻)
1989年4月 愛知学院大学歯学部講師(歯周病学講座)
2000年10月 愛知学院大学在外研究員(ボストン大学歯学部健康政策・健康事業研究講座)(2001年9月まで)
2005年5月 愛知学院大学歯学部准教授(歯周病学講座)
2007年4月 愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授
        同歯学部歯周病学講座兼担教授     
  現在に至る

所属学会・役職・資格
特定非営利活動法人日本歯周病学会常任理事(健康サポート委員会委員長)
愛知学院大学短期大学部歯科衛生士リカレント研修センター所長
歯周病専門医
日本歯周病学会 認定医・指導医
日本禁煙学会      専門医
日本禁煙科学会 禁煙支援歯科医
日本歯科保存学会    認定医
こどもをタバコから守る会・愛知 世話人代表
禁煙心理学研究会 世話人
日本小児禁煙研究会 理事
日本病巣疾患研究会 理事

抄録

日本の成人喫煙率は、どんどん低下してきていますが、残った喫煙者のニコチン依存は解決されていません。そのような中、2015年以降、いままでの紙巻きタバコの代替品として加熱式タバコ(heated tobacco products、HTPs)が急速に普及し始め、日本がいつの間にか世界最大のHTPs市場となりました。HTPsや電子タバコ(electronic cigarette、 e-cigarette、vape)を含めた新型タバコは、紙巻きタバコに比べるとニコチン以外の主要な有害物質の曝露量を減らせると広報されています。しかし、病気のリスクが減るかどうかについては明らかでなく、紙巻きタバコを併用した場合には有害物質の曝露の低減も期待できません。また、HTPsのニコチンの曝露や吸収動態は紙巻きタバコと類似しており、ニコチン依存症が継続して、その使用中止がより困難になリます。2020年4月より、望まない受動喫煙を防止するために、改正健康増進法が施行されました。その法律の抜け道として、喫煙者が煙の出ない無煙タバコ(smokeless tobacco)を併用することも危惧されています。また、若者を中心に水タバコ(water pipe tobacco、Shisha)も普及し始めています。したがって、医療従事者は、このような新タバコ事情を把握した上で、他職種と連携して、喫煙者の禁煙支援を実践していく必要があります。ご存知のように、喫煙は歯周病の危険因子であり、これまでの研究を踏まえたシステマティックレビューでは、歯科医療現場における禁煙支援の必要性が強く支持されています。当日は、このような日本タバコ事情、歯周治療における禁煙支援の位置づけ、役割、喫煙者の判定、対応について、日本歯周病学会の手順書に基づいて、お時間の許す限り、解説させていただきます。