09:40 ~ 09:55 | 広汎型中等度慢性歯周炎患者に対して包括治療により審美性と機能性の改善を行った一症例 【足立 信晃/足立歯科医院(中部支部)】 |
09:55 ~ 10:10 | Ⅱ型糖尿病を有する広汎型重度慢性歯周炎患者に包括的治療を行った一症例 【橋本 真理江/なみき通り歯科・矯正歯科(中部支部)】 |
10:20 ~ 12:20 | 1部 歯周治療を成功させるための歯科医師,歯科衛生士による 包括的な取り組みについて 【岩田 光弘/医療法人社団さくらデンタルクリニック】 【山崎 瑞穂/株式会社DH Pro.School】 |
13:20 ~ 15:20 | チームで取り組む歯周外科と術後管理、メインテナンス ―リアルな現場をどう乗り切るか― 【水上 哲也/医療法人水上歯科クリニック】 【下田 裕子/医療法人水上歯科クリニック】 |
• 2006年 松本歯科大学卒業
• 2007年 松本歯科大学病院臨床研修終了
• 2009年 医療法人 足立歯科医院勤務
日常臨床では歯周炎のみならず,欠損や歯の位置異常,う蝕,歯肉歯槽粘膜の問題等も同時に抱える複雑な症例によく遭遇する.そのような患者においては歯周治療だけでなく様々な問題を解決し,審美性と機能性を改善するために包括的で有効な治療計画を立案する必要が求められる.今回,中等度慢性歯周炎患者に対し,歯周基本治療後にインプラント治療や限局矯正,また上顎前歯部欠損部顎堤吸収に対し,歯槽堤増大術として軟組織移植術を行い固定性ブリッジによる最終補綴処置を行なって良好な結果が得られた一症例を報告する.
2010年 名古屋ユマニテク歯科医療専門学校 歯科衛生学科 卒業
一般開業医 勤務
2014年 なみき通り歯科 入社
Ⅱ型糖尿病を有する多数歯欠損を伴う広汎型重度慢性歯周炎患者に対して,血糖コントロール状態に留意して歯周治療を行い,現在まで良好な結果を得た症例を報告する.
本症例を通し,患者に糖尿病と歯周病の関係をしっかり理解させ治療に参加させることや,長期間の治療期間中も患者を支え,励まし続けることは歯周治療における歯科衛生士の重要な役割であることを再認識した。今後も患者の状況に合わせ来院間隔や全身状態を考慮しながら,維持・管理を行なっていく.
岩田光弘
略歴:
1990年 岡山大学歯学部卒業
1990年 岡山大学歯学部口腔外科学第二講座入局
1995年 綾上歯科診療所開設
2000年 博士(歯学)授与(岡山大学)
2000年 医療法人社団綾上歯科診療所理事長
2006年 さくらデンタルクリニック開設
2010年 JIADSペリオコース講師
2014年 医療法人社団さくらデンタルクリニック理事長
2016年 東京歯科大学客員講師
2021年 東京医科歯科大学非常勤講師
日本臨床歯周病学会認定医・指導医,
日本臨床歯周病学会歯周インプラント認定医・指導医
日本歯周病学会歯周病専門医・指導医
日本口腔インプラント学会専門医
1996年 (現)朝日医療大学校卒業
2007年 スウェーデン イエテボリ大学研修
2007年 NPO日本歯周病学会認定歯科衛生士取得
2014年 歯科衛生士研修会スタディーグループ“苺の会”発足
2016年 一般社団法人日本医療機器学会第2種滅菌技士取得
2018年 株式会社DH Pro.School設立
2018年 日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士取得
歯周治療の中心となるのは,感染のコントロールで,まずプラークコントロールを徹底し,スケーリング・ルートプレーニングを行うことで炎症をコントロールし,歯周炎を増悪させるリスク因子を可能な限り排除していく,歯周基本治療が歯周治療で最も重要であるということは疑いの余地はない.しかしながら,歯周基本治療を徹底することで,歯周炎の進行を抑制することはできても,一度失った歯周組織を回復させることは基本的に困難で,残存した深い歯周ポケットはその後の患者のセルフケアを難しくし,SPTを煩雑化させる要因となり得る.
現在,塩基性線維芽細胞増殖因子製剤を用いたリグロス®の登場によって,歯周組織再生療法を一般臨床に取り入れやすくなり,歯周基本治療後の残存した問題点について外科的に対応し,より望ましい歯周環境を獲得できる機会が多くなった.そして,再生療法に用いる材料や薬剤ばかりでなく,低侵襲でかつ歯間乳頭温存ための新しいフラップ・デザインの開発によって,その成功率も向上しているように感じる.しかしながら,歯周組織再生療法は,インプラントを含むその他の歯科治療のいずれの術式と比較しても,確実に治療結果が予測できる治療法とはいえず, 術前の包括的な診査診断や適応症の選択,歯周基本治療の質など,手術前にその成否を決定する要素が多く存在することも事実である.また,動的治療終了後のSPTに移行しても,患者を取り巻く生活習慣や背景の変化によって,口腔内は変化しつづける可能性があり,その変化を察知できるかどうかも治療結果の長期安定に影響を与えると考える.
そのため,術前の医療面接からはじまる患者情報の収集から,診査診断,質の高い歯周基本治療,SPTにおける患者を取り巻く様々な環境の変化に対応するため,他のどの歯科疾患に対する治療より歯周治療は歯科医師と歯科衛生士の綿密な連携が必要となる.
本講演では,歯周再生療法の成功率を上げるためのどのような点に着目しているかを述べるとともに,歯周治療はその他の歯科治療と比較しても歯科衛生士の役割が特に重要視されるため,チーム医療としての歯周治療の取り組み方を中心に,臨床例を提示し,知見を述べたいと思う.
1985年 九州大学歯学部卒業
1987年 九州大学第1補綴学教室文部教官助手
1989年 西原デンタルクリニック勤務
1992年 福岡県福津市(旧宗像郡)にて開業
2007年 九州大学歯学部臨床教授
2011年 鹿児島大学歯学部非常勤講師
1996年 福岡医科歯科技術専門学校(現 博多メディカル専門学校)歯科衛生士科卒業
同年 医療法人水上歯科クリニック勤務
現在に至る
適切な歯周基本治療が行われた後に必要に応じて外科的介入が検討されます。
外科的介入に際しては、再評価における出血部位、歯周ポケット値、骨欠損の程度や根分岐部病変の交通度などの病態に加えて患者の有するリスク因子や生活背景、協力度、経済事情などを総合的に検討しなければなりません。従って担当歯科医師と衛生士との情報交換が重要になります。
外科治療選択においては、切除療法、組織付着法、再生療法のいずれかを用いるのか、そして術式や使用する材料について吟味がなされます。これらの決定には担当歯科医師の意見、そして歯科衛生士の意見が反映され、複数の選択肢の中からの選択決定が行われます。私たちの理想とする治療方針と患者の希望はしばしば平行線を辿ることもあり、実際のコンサルテーションは複数回に及ぶことも少なくありません。このコンサルテーションは当院では担当歯科衛生士が中心となって行いますが、歯周基本治療の過程での信頼関係が大きな影響を与えます。
外科処置においては、担当歯科医師、担当歯科衛生士とアシスタント、その他サプライ担当者などのチームによる連携が必須となります。この連携が円滑に行われることで手術時間の短縮や手術の侵襲度合いにより小さくすることができます。具体的には術者と介助者の絶妙なタイミング、ぶつかることのないスムースな動き、阿吽の呼吸などが理想的な外科手術の進行につながります。
術後管理も見逃してはならない重要なプロセスです。術後しばらくは患者によるセルフのプラークコントロールはできません。この期間はプロフェッショナルケアーが主体となります。また、創傷治癒において創傷部の安定、安静が不可欠なため術前の適切な指導と同様に術後の管理における注意深い観察が必要となります。
治療後のメインテナンスは治療の予後において重要です。治療結果は短期的なものではなくできるだけ長期的であることが必要です。そのためにはモチベーションの維持やコンプライアンスにおいて様々の工夫が必要となります。
以上のように外科的介入からメインテナンスに至るまでのプロセスではチームとしての協力作業が必須となります。今回はこの共同作業の実際についてお話しさせていいただきたいと思います。様々な文献を紐解いてみたとしても実際の現場はリアルで生々しいことが多々あることが現実です。この事実を踏まえ皆様にできるだけ有益な情報を提供できれば幸いです。
10:10 ~ 11:40 | 認知症専門医が教える! 脳の老化を止めたければ歯を守りなさい! 【長谷川嘉哉/医療法人ブレイン土岐クリニック】 |
12:30 ~ 13:30 | 糖尿病とは ―その歴史と最新の治療も含めてー 【楠 正隆/名古屋大学総合保健体育科学センター 糖尿病運動機能代謝学 特任教授】 |
13:40 ~ 14:40 | 歯周治療における禁煙支援の位置づけとその役割!? ―歯科衛生士として,必要なこと!― 【稲垣幸司/愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授】 |
【略歴】
1990年3月名古屋市立大学医学部卒業
1990年5月名古屋市立大学第2内科(現:脳神経内科)
1992年4月岐阜県立多治見病院神経内科
1996年4月名古屋市厚生院付属病院神経内科
2000年4月医療法人ブレイン理事長
現在に至る
【所属学会、役職、資格など】
① 日本神経学会専門医
② 日本内科学会認定内科専門医
③ 日本老年病学会専門医
④ 介護支援専門員
⑤ ファイナンシャルプランナー
医療法人『ブレイン』理事長
NPO法人『グッドシニアライフ』代表理事
NPO法人『PAL研究会』代表理事
社団法人『東海相続支援コンサルティング』代表理事
社団法人『ケアリングデザイン』監事
医療法人ブレイングループは、認知症専門外来を中心に、脳神経内科、消化器内科、訪問診療を行っている。グループ内では、デイケア、デイサービス、訪問看護、訪問リハビリ、居宅介護支援事業、グループホームも運営している。
2000年4月開業時より、在宅医療では歯科医・歯科衛生士と連携をとっている。昨今、歯周病菌と認知症の原因物質アミロイドβの関連が証明されている。そのため、2018年2月より土岐内科クリニック外来の一室に、歯科用のチェアを設置、歯科衛生士の雇用に至っている。今回の講演では、医科歯科連携の最先端をいくブレイングループの知見につきご紹介する。
1) 歯科の医療機関で見ている患者さんは、氷山の一角でしかない。認知症患者の多くは歯科受診もせず、入れ歯も外さず、歯すら磨いていない。一人の患者さんは、2年間入れ歯を外していなかった。歯科衛生士曰く、「認知症患者さんの口腔内はごみ屋敷」。
2) 人間は、一嚙みで脳に血流が3.5ml送られる。噛むために歯が残っていることは極めて重要である。しかし、当院認知症外来の25%は総入れ歯であり、従来の報告に比べその比率が高くなっている。
3) 歯周病菌が認知症発症に関連していることを考えると、口腔ケアは極めて重要である。しかし、外来で認知症患者さんの口腔内を観察すると、認知症の発症により、さらに口腔環境が悪化する負のスパイラルに陥っていると考えられる。
4) 人体の表面積で言えば、10分の1にも満たない口腔内を、脳の中では約3分の1という広範囲が支配している。つまり、口腔内を刺激すると脳がたちまち若返るのである。
5) 認知症に良いとされることは、多数報告されている。認知症になると感情を支配する扁桃核が、記憶を司る海馬より先に委縮する。そのため、効果の基準は「心地良さ」である。口腔ケアを終えた患者さんは、一様に心地よい表情をされている。
今後、医科歯科連携の普及は多くの患者さんに恩恵を与えます。そのためにも双方の、情報伝達、情報共有が重要と思われる。
1981年 愛知医科大学卒業
愛知医大附属病院第一内科・愛知県がんセンター 勤務
1989年 愛知医大大学院内科系 修了
同時に医学博士号取得 平成1年3月18日
愛知医科大学第一内科 助手
1989~1992年
オーストラリア、ニューサウスウェールズ大学附属セントヴィンセント病院
国際糖尿病学会副会長 ドナルド・チズム教授教室 留学
Oversea’s Clinical Fellow
1990年 オーストラリア・ニューサウスウェールズ州 医師免許 取得
1992年 愛知医科大学 第一内科 助手
1993年 メイトウホスピタル内科部長
1994年 愛知医科大学 第一内科 講師
1998年 アメリカ糖尿病学会プレジデントポスターに選出
12月5日 糖尿病専門医 取得(認定番号 1800号)
2000年 愛知医科大学 内分泌・代謝・糖尿病内科 講師
2003年 人命救助にて愛知医科大学理事長 表彰
2004年 愛知医科大学メディカルクリニック 講師
11月28日 糖尿病指導医 取得(認定番号1154号)
2009年 愛知医科大学メディカルクリニック 内科准教授
2015年 名古屋大学総合保健体育科学センター 糖尿病運動機能代謝学 寄附研究部門教授
2020年 名古屋大学総合保健体育科学センター糖尿病運動機能代謝学 寄附研究部門 特任教授
現在に至る
【資格】 日本糖尿病学会専門医・指導医
日本糖尿病協会療養指導医
日本人間ドッグ学会認定医・専門医・指導医
日本抗加齢学会専門医
日本医師会認定 / 健康スポーツ医・産業医
日本内科学会認定内科医 他
【論文(Top Name)】
Diabetes, Diabetologia, Metabolism, Experimental Gerontology,
European Journal of Pharmacology, etc.
【所属学会】 国際糖尿病学会
アメリカ糖尿病学会
ヨーロッパ糖尿病学会
日本糖尿病学会
日本肥満学会
日本抗加齢学会 etc. 多数
Reviewer:Diabetologia, Metabolism, Life Science誌 etc.
賞:1998年度アメリカ糖尿病学会プレジデントポスター
賞罰:愛知医科大学理事長 表彰
歯科と糖尿病との関連については近年の分子生物学の飛躍的な進歩に伴い、
歯周病菌の遺伝子解析にまで研究は進み、次々と新しい知見が報告されている。今回の講演内容はその様な最新研究の各論ではなく、糖尿病の歴史と歯周病以外の最近のトピックス、将来の治療ツール、抗加齢につながる糖尿病の運動療法などの内容について述べたい。現在糖尿病と言われている疾患が人類の歴史に初登場するのはエジプトにおいてである。ナイル川沿いの古都テーベでドイツ人考古学者エベルスによって発見され紀元前16世紀のパピルスエベルス中に今で言う糖尿病の記載がある。その原因は長い間過食によるものと考えられて来たが、近年は食事の摂取カロリーは頭打ちにも関わらず運動量の低下により治療を必要とする糖尿病患者さんは増え続け、それに伴い治療法も進化してきた。治療法の中で最大のトピックは1921年に発見されたインスリンとその注射療法である。その発見の歴史には今なお解明されていない謎も多くある。基本的に糖尿病は慢性的な高血糖状態が続き、それによって種々の代謝疾患が引き起こされるが、血糖には罪はなく、インスリンさえまともに作用すれば生きる為のエネルギーとして生体の為に使用される。特に重要な器官である脳や神経において糖はほとんど唯一のエネルギー源として使用される。その過程においては糖の血流から各組織への移行と、各組織中での利用の2つのステップが重要で、両者において今後の糖尿病治療へつながる新しい研究発表がされている。6年前に上梓された尿中に糖を排泄して血糖値を下げるSGLT2という糖尿病薬には終末糖化産物(AGEs)や腸内細菌フローラの改善作用も報告されて来た。一方スマートホーンと24時間持続血糖測定チップも実臨床に応用が開始され始めた。特に食後の運動による食後血糖降下療法が抗加齢にも有効であると報告され、近年の糖尿病患者増加の第1の原因とされている運動不足を改善することが重要となっている。
時間 12:30〜13:30
1986年3月 愛知学院大学大学院歯学研究科修了(歯科保存学専攻)
1989年4月 愛知学院大学歯学部講師(歯周病学講座)
2000年10月 愛知学院大学在外研究員(ボストン大学歯学部健康政策・健康事業研究講座)(2001年9月まで)
2005年5月 愛知学院大学歯学部准教授(歯周病学講座)
2007年4月 愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授
同歯学部歯周病学講座兼担教授
現在に至る
所属学会・役職・資格
特定非営利活動法人日本歯周病学会常任理事(健康サポート委員会委員長)
愛知学院大学短期大学部歯科衛生士リカレント研修センター所長
歯周病専門医
日本歯周病学会 認定医・指導医
日本禁煙学会 専門医
日本禁煙科学会 禁煙支援歯科医
日本歯科保存学会 認定医
こどもをタバコから守る会・愛知 世話人代表
禁煙心理学研究会 世話人
日本小児禁煙研究会 理事
日本病巣疾患研究会 理事
日本の成人喫煙率は、どんどん低下してきていますが、残った喫煙者のニコチン依存は解決されていません。そのような中、2015年以降、いままでの紙巻きタバコの代替品として加熱式タバコ(heated tobacco products、HTPs)が急速に普及し始め、日本がいつの間にか世界最大のHTPs市場となりました。HTPsや電子タバコ(electronic cigarette、 e-cigarette、vape)を含めた新型タバコは、紙巻きタバコに比べるとニコチン以外の主要な有害物質の曝露量を減らせると広報されています。しかし、病気のリスクが減るかどうかについては明らかでなく、紙巻きタバコを併用した場合には有害物質の曝露の低減も期待できません。また、HTPsのニコチンの曝露や吸収動態は紙巻きタバコと類似しており、ニコチン依存症が継続して、その使用中止がより困難になリます。2020年4月より、望まない受動喫煙を防止するために、改正健康増進法が施行されました。その法律の抜け道として、喫煙者が煙の出ない無煙タバコ(smokeless tobacco)を併用することも危惧されています。また、若者を中心に水タバコ(water pipe tobacco、Shisha)も普及し始めています。したがって、医療従事者は、このような新タバコ事情を把握した上で、他職種と連携して、喫煙者の禁煙支援を実践していく必要があります。ご存知のように、喫煙は歯周病の危険因子であり、これまでの研究を踏まえたシステマティックレビューでは、歯科医療現場における禁煙支援の必要性が強く支持されています。当日は、このような日本タバコ事情、歯周治療における禁煙支援の位置づけ、役割、喫煙者の判定、対応について、日本歯周病学会の手順書に基づいて、お時間の許す限り、解説させていただきます。